こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
これまでいろいろな目的で国内外のさまざまな場所を旅してきましたが、今回の旅は気球に乗って北海道を空から眺めるのが目的です。今年の初めに「人生でしておきたい100のこと」を書き出してみたら、驚いたことに、これからしたいことなんてせいぜい30個くらいだということがわかりました。わたしってずいぶん欲のない人間だなと改めて思ったのですが、いや、あなたの場合は、すでにやりたい放題やりつくしたのでもうそれだけしか残ってないのではと長年の友人に指摘されました。
まあいずれにせよ、年齢を考えると、あと30個のやりたいことはさっさと片付けないと先がないということで、北海道行きを決めました。
まずは、なぜ気球に乗りたいと思ったというところから。
始まりは昨年夏。白馬村でロングスティしていた際に宿の近くに気球に乗れる場所があり、ためしに乗ってみたのですが、それは「係留」という方式の気球でした。地上からロープで固定されており、その場で上昇するのみ。それも20m程度ということで、そのへんの高層マンションよりも低いのです。それでも上空からの眺めはそれなりに楽しかったのですが、ちょっと物足りなく、次は、もっと高いところを移動するフリーフライトの気球に乗ってみたいという野望を抱いたのでした。
2022年8月 長野県白馬村で乗った気球。これは係留という方式です。
下からロープで固定されているので、あまり高く昇らず、15分ほどで降りてきます。
気球と言えばトルコのカッパドキアが有名ですが、わたしは過去に2度トルコに行っています。それに加え、気球のフライトは天候に左右される部分がいたって大きく、わざわざ気球のためにはるばるカッパドキアまで行っても、天候が悪くて乗れなかったということだって考えられます。
ならばどこか国内で乗れるところはないのかと探し、「十勝空旅団(とかちそらたびだん)」というサイトを発見! これだと思い、「何日か滞在してもよいので確実に乗りたい」というメールを送ると、「天候のことなので確約はできないが、鋭意努力します」というご親切なお答え。
十勝空旅団は帯広市内にあるので、とりあえず、帯広3泊の予約を取り、気球に乗れたら札幌に移動するというスケジュールを立てました。
こちらは係留ではなく、フリーフライト中の気球です。低いところを飛んでいますが、下からロープでつながっているわけではなく、完全に風だけで移動しています。
帯広に到着した日は快晴。しかし、その日にすぐフライトをするわけではありません。太陽が昇るにつれて地表が暖まり、上昇気流が発生して高度のコントロールが難しくなるので、気球のフライトは早朝に行われるのです。そのため着いた日は帯広周辺の観光をして、その晩の夜明け前にホテルにお迎えに来てもらって離陸予定地に向かいました。
お迎えは3時40分。
6月だったので日の出が早く、4時くらいにはもう明るくなってきます。
この日の搭乗者は乗客4名+パイロット1名。乗客は、本来昨日のフライトを予定していたが、天候が悪くて乗れなかった人2名と突然思いたって予約したという女性1名。その前日は晴天だったのですが、風が強くて中止になったのです。微妙な状況で飛べないことはよくあるようで、わたしやもうひとりの女性のように、予定していた日にすぐ飛べるのはラッキーらしい。
しかし離陸予定地の駐車場に着くと、何やら不穏な雰囲気に。どうも風の方向がよくなくて、ここで飛び始めると予定とは違う方角に飛んで行ってしまうようです。ともかく急遽、離陸地変更。ちなみに風の方向はシャボン玉や風船を飛ばして調べます。
このような車に機材を積み、搭乗者は別の車で移動します。
車でしばらく移動し、バルーンアカデミーという場所に着きました。ここなら風も大丈夫ということで設営開始です。スタッフはパイロットさんの他に3名いましたが、なかなか大変そうな作業なので、少しお手伝いをしてみました。
果たしてお役に立ったかどうかはわかりませんが、夜明けにこんなところで自分が乗る気球のセッティングをするなんて、人生でも一度しかない貴重な体験でしょう。
まずは籐製のゴンドラを車から降ろします。これはトルコ製だそうです。
次にバルーンをおろして広げ、ゴンドラに取り付けます。バルーンはロシア製とのことです。
巨大扇風機で風を送り、バルーンの中に空気を入れて膨らませます。
そしてガスバーナーで内部の空気を暖めます。すると、以下の原理により気球は浮かびます。
①ガスバーナーでプロパンガスを燃やし、気球の中の空気を暖めて膨張させる。
②膨張した空気は密度が薄くなって軽くなり、空中に浮かぶ。
ほら、もう気球が浮かびました。こうして準備が整い、搭乗開始です。
乗り込むと同時にすぐ上昇を始めました。わたしもここに乗っています。
地上で手を振るスタッフさんが早くも小さく見えます。
見慣れた関東地方の農地と違って、北海道の農地は整然とまっすぐな境界線によって分けられています。道路もまっすぐなのがよくわかります。まだそれほど高くないせいか、牛の鳴き声も聞こえてきます。
十勝平野は酪農が盛んな地域で、牛舎の上を飛んではいけないという規制があるそうです。動物は人間よりも聴覚が優れているので、バーナーの音が聞こえて怖がる場合があるのだとか。
さらに高く昇ると、雲の向こうに高い山々が見えてきました。
この日は快晴だった前日と比べて雲が多かったのですが、その分、雲海が見えてラッキー。
必ずしも晴天だけがよいわけではなく、こんな日もなかなかのフライト日和なのだとか。
どんどん上昇して、ついに雲の上の人になりました。昔「翼をください」と歌を何度となく歌いましたが、本当にわたしは鳥のように大空を飛んでいるのです。感激! もう思い残すことはあと29個しかない。
ここでひとつ気づいたことがあります。普段のわたしは高い建物内の窓際にも近寄れないほどの高所恐怖症なのに、気球の上から下界を眺めていても、少しも恐くないのです。他の皆さんも同じような感想でしたし、パイロットさんも「実はジェットコースターとかが嫌いなタイプです」とおっしゃっていました。なんだか不思議な現象ですね。
さらに上昇して高度1500mに。ここまでくるとかなり寒いです。
いや、この季節は太陽が出ていればむしろ暑くなるそうですが、この日は雲で日光がさえぎられていたので寒かったのです。ゴンドラ内には自分が立つスペースしかないので、事前に厚着をして来て暑くなっても脱ぐのは大変だし、荷物も持って乗れないので、服装計画は難しいです。
このバーナーでバルーンの中の空気を熱して膨張させれば気球は上昇します。バーナーを止めてバルーンの中の空気が冷えれば下降します。
では、横の移動はどのように行うのでしょうか。
実は風まかせなのです。
と言っても、ただ風に流されるだけではとんでもない方に飛んで行ってしまうので、ここがパイロットの腕の見せ所。風はどこでも一定方向に吹いているのではなく、高度によって強さや吹く方向が違うので、高度をコントロールして行きたい方向に吹いている風に乗ることが技術なのです。気球の競技は、スピードではなく、どれだけ適切に風をつかまえて狙い通りの目的地に着くかが競われます。
1時間ほどパイロットさんのお話を聞きながらフライトし、そろそろ着陸の時間となりました。パイロットさん以外のスタッフは車に乗り、目視やGPSで気球を追いかけてきます。また、必要ならば無線で地表の風の様子なども知らせてくれます。その情報とパイロットさんの判断により、着陸場所が決められます。今回は、最初に離陸しようとしてできなかった駐車場に降りることになりました。
着陸の際にゴンドラが倒れることがあると聞き、かなりビビりました。これまでそれでケガをした人はないとのことですが、果たしてわたしのようなどんくさいおばさんは衝撃から身を守ることができるのか?
しかし、パイロットさんの見事な技術により、バスケットは地上を滑るように着地。パイロットさんは褒められて伸びるタイプとのことなので、ここは拍手喝采大絶賛です。
さて、バルーンから空気も抜け、撤収です。
ここでもまた、さっぱり役に立たないながらお手伝いをいたしました。
わたしたちを上空1500mまで連れて行き、無事帰還させてくれたパイロットの篠田博行さん。終了後、ソフトカツゲンをみんなにふるまってくれました。ソフトカツゲンとは北海道でしか売っていない乳酸菌飲料です。1956年以来、北海道民に愛され続けているのだとか。
終了後は、たまたま都合が合ったため、スタッフさんたちの朝食に参加させてもらいました。場所は帯広地方卸売市場にある「食堂ふじ膳」。ウニとホタテとサーモンがどっさり乗った海鮮丼がおいしかったです。
最後まで楽しい経験をさせていただき、心から感謝いたします。また季節を変えて乗りに来ますね。
北海道十勝、帯広の熱気球クラブ
十勝空旅団
※お値段は約1時間で33000円(税込)。
2023年7月現在、おひとり様でも申し込み可能ですが、この先、何らかの変更があるかも知れませんので、事前にチェックしてください。
※天候不順によりフライトが中止になった場合、代金は発生しません。
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