こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。
窓辺やテーブルの上で涼やかに揺れるモビールは、おしゃれなインテリアグッズとしておなじみですね。さまざまな種類があり、自分で作るキットなども売っていますが、そのモビールの元祖がアレクサンダー・カルダーというアメリカの現代芸術家であることをご存じでしたか。
むろん、それ以前にも、たとえば日本のつるし雛や風鈴など、似たタイプの装飾品は世界各地にあったでしょう。しかし、吊るして動くオブジェをはじめて芸術品として創作したのはこのカルダーでした。
現在、麻布台ヒルズ ギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザMB階)で、そのカルダーの個展「カルダー:そよぐ、感じる、日本」が開催されています(~2024年9月6日〈金〉)。
暑さを忘れて涼やかな風に吹かれ、ひとときの癒しを感じられる素敵な展覧会です。
アレクサンダー・カルダー(1898年~1976年)
吊るされた物体が空間の中でバランスを保ちながら動く「モビール」の発明で知られています。初期の作品はモーターで動くものもありましたが、次第に、気流、光、湿度、人間の相互作用など、自然な要素で動くモビールを制作するようになりました。カルダーのモビールは、この動きに魂が宿っているかのように見えて実に魅力的。
展覧会に行く時は、ぜひゆっくりと時間を取って、モビールの動きを鑑賞しましょう。
何かの動物のような形のモビール。右側に3枚、左側に2枚の金属板があり、不思議なバランスを保っています。これがゆっくりと回るように動くので、まるでこの物体に命が宿り、歩き出すかのように思えてきます。
さまざまな動物がラフスケッチのように描かれています。
どれも一瞬の動きが巧みに捉えられていますね。
何かを思い出すなと思ったら、葛飾北斎の「北斎漫画」でした。
カルダーの作品には日本的要素があると言われており、今回の展覧会のタイトルに「日本」という言葉がついているのも、そのためだとか。カルダー自身は日本に来たことはなかったのですが、両親が日本文化に詳しく、日本の品物も持っていたため、何らかの影響があったと考えられています。
1956年、日本橋高島屋で開催された展覧会「世界・今日の美術」に出展された作品のうちの1枚。カルダーの作品が日本で紹介されたのはこれが最初でした。
今回は35年ぶりの日本での個展ということで、日本に関わりの深いこの作品が展示されることになったのです。カルダーの仕事場を描いたもので、それまでの作品がいくつか描き込まれています。そしてそれらの作品は、今回の展覧会でも展示されています。
解説してくださっているのはカルダーのお孫さんに当たるアレクサンダー・S.C.ロウワーさん。カルダー財団の創設者で理事長、そして本展の企画者でもあります。
これはカルダーの日本的な要素がもっとも強く感じられる作品だとおっしゃっていますが、わたしたちからすると「どこが日本?」という感じでもあります。しかしアメリカ人の目には、これが歌舞伎の隈取に見えるようです。なるほど、言われてみれば、確かにそうですね。
会場の天井に吊るされたモビール。こんな複雑な形なのにバランスがちゃんと取れているのがとても不思議です。事前に重さなどを緻密に計算して作るのかと思いましたが、そうではなく、その場のインスピレーションで制作されたようです。
空飛ぶ謎めいた魚。今回の展覧会で一番好きだった作品ですが、展示室の上の方は空気の流れが大きいためかすぐに動いてしまうので、なかなか全体像がつかみにくかったです。少し離れたり、角度を変えたりすると、いろいろと違った表情が見えてきます。
カルダー:そよぐ、感じる、日本
2024年5月30日(木)~9月6日(金)
麻布台ヒルズ ギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザMB階)
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