京のお座敷で拝見する、麗しい雛人形と御所人形
京都の春は、梅とお雛様から訪れます。梅の名所「北野天満宮」に、ほど近い場所にある「平野の家 わざ永々棟(ひらののいえ わざえいえいとう)」では、毎年、3月に「高津古文化会館」主催の雛展が開催されます。
会場となる「平野の家 わざ永々棟」は、大正から昭和に活躍した日本画家・山下竹斎の邸宅兼アトリエとして大正15年に建てられ、その後、時代劇や映画など道具、美術を扱う高津商会社長宅となった木造建築。平成19年からは、数寄屋大工棟梁の山本隆章さんが譲り受け、伝統技術と現代技術を盛り込み、見事な日本建築として蘇った建物です。
3月になると、そのお座敷に、「高津古文化会館」が所蔵する雛人形などが、1年の眠りから目覚め、晴れ晴れとした姿で並びます。
ガラス越しの美術館などの展示と異なり、ここでは、雛人形が、雛祭に飾られた様子で拝見でき、華やぎもいっそう。
江戸時代から明治にかけて、京都で作られた華やかな「有職雛」。面長のお顔立ちの「享保雛」、丸い愛らしい面立ちの「次郎左衛門雛」をはじめ、江戸の人々を虜にした「古今雛」など、さまざまなお雛様が、春の宴を楽しむように、お座敷に勢揃い。訪れる人は、その宴に招かれたお客様の心地に…。
今年の見どころは、雛人形と共に展示される「御所人形」。江戸中期から、京都で作られた幼児を模した人形で、大きな頭とあどけない表情、ふくよかな体つきが特徴です。宮中から大名などへの返礼の品として用いたともいわれる人形。また幼い皇女たちが、親元を離れ、門跡寺院などに入る折りに、また、大名家の女子が嫁ぐ折り、遊び相手として贈られ、共に生涯を歩んだ人形でもあるのです。
木彫の上に胡粉を塗り重ねた人形は、手足が動き、着せ替えができるようになっていて、その大きさも、手のひらにのるほどの小さなものから、本物の赤ちゃんサイズなどが一般的に知られるところです。
でも、2階のお座敷には、なんと身長1メートルほどの大きな御所人形が…。打ちでの小槌や小判を満載した黄金色のまばゆい宝船を引く姿は、今にも動き出しそうな躍動感あふれるもの。この巨大な「御所人形」は、明治時代に博覧会のために、京都の名工「丸屋五世大木平蔵」が作ったそう。あどけない表情にも、品格を漂わせる姿には、名工といわれる技を感じます。
雛展開催中、屋敷内のお茶室では、雛祭にいただく代表的な和菓子「引千切」(ひちぎり)を味わいながら、お抹茶を楽しむことも…。
ぜひ京都らしい雛祭を楽しみに、出かけてみてはいかがですか?
「雛展5周年記念 雛さまと御所人形の勢ぞろい~愛らしさの競演~」
3月31日(火)まで、10時~17時(入館は16時30分までに)会期中無休
会場:平野の家 わざ永々棟 京都市北区北野東紅梅町11 ☎075-462-0014
入館料:一般1000円 茶菓付き2000円(入館料を含む)
詳しくホームページで
http://waza-eieitou.com/
小原誉子の京都の観光文化を伝えるブログ
「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」