こんにちは。かりぃです。
マレーシアに来てからというもの、我が家のスイーツはもっぱら大好きな「ニョニャクエ」と呼ばれる伝統菓子。「ニョニャ」というのは、マレー半島に移住してきた中国系移民の子孫が生み出した、中華とマレーが融合した文化。「クエ」はお菓子や軽食のこと。
ニョニャクエ屋さんは、市場、屋台、ショッピングモールなど、さまざまな場所にあって、色鮮やかな甘いお菓子のほか、点心やバナナの葉に包んだお弁当など、しょっぱい系も一緒に並ぶ“軽食スタンド”のような感じ。

バラ売りか、小分けで売っていて、しかも1個50円くらいなので、つい気軽にあれこれ試したくなるのですが、ほとんどの生菓子が賞味期限「当日中」なので買い過ぎ注意。
ニョニャクエは日々のおやつとして愛されているのはもちろん、誕生祝い、結婚式、長寿祝いなど、お祝い菓子として昔からマレーシアの人々の人生を彩ってきました。
ニョニャクエの中からお気に入りをご紹介
●調和をもたらすお菓子 … クエ・タラム(Kuih Talam)

一番リピ率が高いのがこちら。もち粉とタピオカ粉を練って蒸しているので、名古屋の「ういろう」のもっちり感にプルンとした弾力を加えた感じ。白は塩気のあるココナッツミルク味。緑色はパンダンリーフ(東洋のバニラとも呼ばれる香り高い葉)味。この「ココナッツ×パンダン」「白と緑」の組み合わせは、伝統菓子の定番。白は天(陽)、緑は地(陰)を表していて、ふたつが重なると天地(陰陽)がバランスし「調和をもたらす」ということで、夫婦円満を願い結婚式で配られたりするのだそう。
●性格がわかるお菓子…クエ・ラピス(Kuih Lapis)
「ラピス」というのは層のこと。1層ずつ丁寧に蒸しあげてしっかり冷ましてから重ねていくので、完成するまでに早くても2時間以上かかるそう。ピンク色、緑色のしましま模様が一般的ですが、レインボーカラーのものも。ピンクはココナッツミルク味、緑はココナッツ+パンダン味。
中国福建省からの移民が伝えた9層の蒸し菓子が原型。長寿や永遠の繁栄を意味する数字「9」層が基本ですが、現代ではお店によって7層だったり、もっと多かったり。
みんな子どもの頃から慣れ親しんだお菓子で「一層ずつはがして食べる子は忍耐強い子」「大胆にかじる子は豪快な子」など、子どもたちがクエラピスを食べる様子を眺めつつ、大人はその子たちの性格を分析して将来に思いを馳せたりするみたい。このお菓子、タイでは「カノムチャン」と呼ばれて、やはりこれも基本は9層。
●幸せ溢れだすお菓子 ― オンデオンデ(Onde Onde)

ココナッツフレークをまぶした小さな緑のお団子。お餅かな?と思って口に入れた瞬間、中からパームシュガーの蜜がじゅわっと溢れだしてびっくり。そして美味しさのあまり、みんな笑顔になっちゃうお菓子。丸い形は「家族の和」、蜜は「幸運」や「やさしさ」の象徴。食べると幸運や優しさがあふれ出す!! 私的にはクエタラムと優劣つけ難い大好きなお菓子です。
●富士山みたいなお菓子… クエ・コチ(Kuih Koci)
バナナの葉で包まれた、ちまき餅。最初買った時は、もち米でも入っているのかな?と思いつつ葉っぱを開いてみると、プルンとしたツヤツヤの富士山みたいなお餅が出現。そして、中には黒糖で煮たココナッツフレークがぎっしり。噛むたびに黒糖のコクとココナッツの香ばしさが広がって豊かな気分に。こちらもやはり、結婚式やお祝いの席には欠かせないお菓子で、結婚式では中の甘いあんが「夫婦の円満生活」を象徴しているそう。外側のお餅は白、茶色、緑色などいろいろなバリエーションあり。
●赤い亀の縁起菓子 ― アン・クー・クエ(Ang Ku Kuih)
もち粉を練って蒸したやわらかい皮の中に、白あん、小豆あん、ピーナッツあんなどが入っている、まるでミニ大福。Ang は赤(幸福・繁栄・魔除け)、Ku は亀(長寿・安定・忍耐)。つまり「赤い亀の縁起もの」。もっと派手な赤や朱色のものもありますが、いつもなんとなく優しい色を選んでしまう(笑)。
中国系マレー人の家庭では、赤ちゃんの満1ヶ月のお祝いに、このお菓子を親戚や友人に配るそう。「子どもが幸せに長生きできるように」という祈りを込めて。また、「亀のように長生きを」と願うお菓子なので、お年寄りの誕生日祝いにも欠かせない。
魔除けのお菓子 ― クエ・レッドビーン(Kuih Red Bean)
薄皮なしの「きんつば」みたいなお菓子。亀のお菓子とおなじく、赤は「魔を祓って幸運を呼ぶ」ので、赤い豆がぎっしりのこのお菓子もかなりの縁起もの! マレーシアの人々の人生の節目節目のお祝いに大切にされてきました。甘さもとてもあっさりしていて食べやすく、ポリフェノールいっぱいの小豆は美容にも良いのでお気に入り。
こうしてマレーシアのニョニャクエを紹介していると、同じ中国文化の影響を受けた和菓子と通じることがたくさん。和菓子もいろいろ縁起ストーリーがありますね。柏餅は新芽が出るまで古い葉が落ちないから「家系が絶えない・子孫繁栄」とか、おはぎ・ぼたもちは小豆の赤色で「邪気を払う」とか。紅白饅頭の紅は魔除け、白は清浄を意味するし、鶴亀や千鳥を模した菓子は長寿の象徴。美味しいお菓子に祈りを託す心は世界共通だなと、ほっこり。
呼び方は多少違いますが、同じようなお菓子はタイ、インドネシア、シンガポールなど東南アジアの広い範囲で出会うことができるので、もしみなさんが東南アジアを旅する機会があれば、縁起の良いお菓子で運気アップ!! お勧めします。

沖縄県 東京生まれ。インド育ち。メキシコ暮らし・沖縄暮らしを経て、2025年6月よりマレーシア在住。夫と中学生の娘との3人暮らし。おいしいもの・旅・美容・健康に強い関心あり。度々自宅で開く宴会が元気の源。ペンネーム「かりぃ」は沖縄語で「乾杯!」。スーパーフード「モリンガ」商品製造販会社経営、NPO活動、翻訳・ライターなど数足の“わらじ”を履いて奔走中。人生で出会った魅力的な人、場所、味、面白い出来事、お届けします♪


