こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。
寺社を中心に、全国各地の旅情報をお届けしています。
今回は、日本のはじっこであり、かつ、
大陸から最先端の文化が伝わった島、壱岐をご案内します。
福岡からすぐ、意外に行きやすい離島
この島は、九州の北側の玄界灘に浮んでいます。
位置的には福岡県か、佐賀県のようにも思えるのですが、実は長崎県。
もともとは、一支国(いきこく)というひとつの国
(律令時代における地方行政区分で、今で言う都道府県)だったのですが、
江戸時代に平戸藩の一部となり、その平戸藩が明治時代に長崎県に編入されたため、
壱岐もそのまま長崎県に属することになったのです。
しかし、現在は、もっとも近いところにある大都市、福岡市との経済的な関係が深く、アクセスも、博多港から船に乗って行く方法が一般的。
高速のジェットフォイルなら1時間ちょっとで到着。
比較的行きやすい離島のひとつです。
日本一神様密度が高い島
自然が作り上げたダイナミックな景観、海産物を中心とするグルメなど、
お楽しみはたくさんありますが、何より驚くのは神社の多さです。
南北17km・東西15kmの島内には、大小合わせて1000社以上のも神社があり、
それぞれに、ご利益深い神様が祀られています。
なぜこの島はこれほど神様の密度が高いのか。
それは、古事記冒頭の国生み神話にまで溯ります。
イザナギノミコト、イザナミノミコトは、協力して八つの島を生みだしました。
淡路島、四国、隠岐島、九州、壱岐島、対馬、佐渡島、本州。
これが日本の国土の始まりとされます。
古代の日本人は自然のすべてに神が宿ると信じ、
神の存在を感じる特別な場所を聖地と見なしました。
そうした場所には、やがて神社が建てられました。
そのため、古くから人が暮らしてきた土地には、神社がたくさんあります。
壱岐には縄文時代から集落がありました。
弥生時代になると「一支国(いきこく)」という名前で、
かの「魏志倭人伝」に記載されるほど発展しました。
こちらは原の辻遺跡。
紀元前2~3世紀から紀元3~4世紀にかけて形成された大規模な集落の跡で、
魏志倭人伝に記載された一支国の王都と特定されています。
このように歴史が古いため、壱岐には、神社がたくさんあるのです。
お勧め神社その1
人気のツキヨミノミコトが祀られる月読神社
イザナギノミコトは黄泉の国から帰った際に禊を行いました。
その時左目を洗うとアマテラスオオミカミが、右目を洗うとツキヨミノミコトが、
鼻を洗うとスサノオノミコトが生まれました。
古事記では、この三柱の神様がもっとも貴いとされます。
ツキヨミノミコトは、太陽を司る神であるアマテラスオオミカミの弟神で、
その名の通り、月を神格化した神、夜を司る神です。
青白い光を放つ神秘的な男性神というイメージがあるためか、
女性にも人気が高く、最近では、各地からお参りに訪れる人が増えているそうです。
また、現在、京都の松尾大社の境内にある月読神社は、
こちらの月読神社から分霊(神様の魂を分けて他の地に移すこと)されたもので、
これによって中央にも神道が根付いたとも考えられるため、ここが神道発祥の地とも言われています。
そのように重要な場所とはちょっと思えない密やかな神社ですが、
実はこういうところこそが、本物の「パワースポット」ではないかと思います。
この神社で授与していただけるお守り、「水鈴のおと」も素敵。
水琴窟(すいきんくつ)のように美しい、澄んだ音色がします。(500円)
次は日本初の住吉神社。境内にある夫婦クスノキを、どう回ると願いがかなうといわれているのでしょうか?
お勧め神社その2
壱岐一番の伝統と格式を持つ住吉神社
この神社に祀られるのも、イザナギノミコトが黄泉の国から帰って
禊をした際に生まれたとされる三柱の海の神様。
住吉という名前の神社は全国に600社ほどあり、
その中でももっとも有名なのは、大阪の住吉大社です。
しかし、こちらの住吉神社の由緒はそれよりも古く、
ここが日本初の住吉神社とも言われています。
境内には「夫婦クスノキ」と呼ばれるご神木があります。
根はひとつでありながら、途中から二本の木に分かれる形が印象深いです。
男性は左回り、女性は右回りにこの木を一周すると
願いが叶うと言われているので、ぜひお試しあれ。
この神社では、毎年12月20日に、
国指定重要無形民俗文化財の壱岐神楽のフィナーレである
大大神楽が奉納されます。
壱岐神楽は、舞も音楽も神職の方だけで奏される、きわめて神聖な文化財です。
大大神楽は舞人、楽人合わせて12名以上で奏し、7~8時間もかかる大規模なもの。
小規模なものは、他の神社の祭でも、しばしば奏上されますが、
観光客が見学しやすいのは、やはりこの12月20日。
また、8月の第1土曜日には、筒城ふれあい広場の野外ステージでも奏上され、
これも観光客に人気が高いようです。
神事だからと言って、かしこまって見る必要はなく、
拍手も掛け声も大歓迎とのこと。壱岐の神々と一緒にお神楽を楽しみましょう。
いよいよ有名な猿像と猿岩に続きます。
お勧め神社その3
サルの像がいっぱいの男嶽(おだけ)神社
壱岐神楽にも登場するサルタヒコノミコトを祀る神社。
境内には、おびただしい石の猿像が並んでいます。
新しいものも古いものも取り混ぜて、その数200体以上。
猿像を奉納する習慣が生まれる以前は、
牛の像を奉納していたため、お猿さんの間に牛さんの顔も見えます。
壱岐は全体に平坦な島で、一番高い山でも212.8m。
この神社がある男岳は、壱岐で3番目の高さなので、
展望所に登れば、前方に広がる海が見渡せます。
番外編 猿岩
自然こそが神様だと実感させてくれるのが、この猿岩。
島の西側の黒崎半島の突端にあります。
確かにどう見ても、横を向いた猿としか思えません。
日本猿よりも、むしろゴリラに似ていますね。
この岩の近くには、地元の物産品を扱うアンテナショップ
「お猿のかご屋」もあります。
ここでのお勧めは、純正椿油の里椿。地元の女性による手絞りです。
椿油は髪や肌によい天然の化粧品というイメージがあるけれど、
こちらの椿油は食用にも適しています。
お店の方によれば、
「卵焼きに使うと、ナッツのような香りを楽しめます」とのこと。
(120ml 1500円)
壱岐の観光に関する情報は、こちらをごらんください。
●「神が宿る島、壱岐を旅する」は後編に続きます。
次は、壱岐のモンサンミッシェルと呼ばれる神秘の神社に行きますよ。
吉田さらさ
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