春爛漫の桜の園。
「原谷苑」
京都もいよいよ桜のシーズンの到来です。市内各所の桜の名所は、この時期を待ちかねた人たちで賑わい、1年の間のわずかな時を楽しみます。本当に京都は桜が多く、鴨川、琵琶湖疏水、大沢の池などの周囲は、ピンク色に縁どられ、まさに春。また平安神宮や京都御苑、二条城、天龍寺など歴史的建造物とともに眺める桜は、京都らしい雅な景色。
数ある桜の名所の中で、圧巻ともいえる桜の景色に感動したのが、京都の衣笠山の北に位置する山間の「原谷苑」です。ここは、北山杉、楓、桜などの植木と京野菜を栽培する「村岩農園」のいうなれば植木の植樹園。山の斜面に広がる約4000坪の敷地には、数百本の桜をはじめ、数十種類の樹木が植樹されています。
かつてこの地域は、不毛の地で、戦後、満州から引き揚げた人たちの原谷開拓団により、農園や果樹園などへと開墾が進むものの、なかなか成果があがらず、昭和32年以降、江戸時代から林業を営む村岩農園が、開拓を引き継ぐことに。農作物の栽培のための土地の改良と共に、梅、桃、リンゴ、柚子などの果樹木、桜、楓、ツツジなどの鑑賞木など、さまざまな種類の樹木を植え育て始めますが、その多くがうまく育なかったそう。その中で、順調に育ったのが、桜だったのです。
昭和40年代、「村岩農園」の開墾した丘は、桜の園に。その評判は広がり、以来、「原谷苑」と命名し、桜の時期だけ一般公開をするようになりました。
現在、ここを守るのは4代目となる村瀬浩司さん。桜が育ってからも、土地の改良を進め、馬酔木(アセビ)、ミツマタ、日向ミズキ、ヤマブキ、ツツジ、沈丁花など、いろいろな種類の草木の植え、春ともなると、丘は、さまざまな色が彩り、まさに春爛漫の景色を見せてくれるのです。
空を埋め尽くすようなピンク色の桜の下に、鮮やかな黄色のヤマブキ、その脇には、雪柳の清純な白がカラフルな色合いを見事に調和させ、その美しさに言葉を忘れます。
植えられた桜の数の多さから、丘は、どこもピンク色に染められ、丘を縫うように続く散策路を進むと、まるで別世界を歩いている心地になります。また植樹された桜の種類も多く、表情の異なる桜との出会いにも心躍ります。
桜の時期は、苑内に茶店が設けられ、予約により「原谷苑オリジナル 幕の内弁当」2,100円を、桜を眺めながら床几席(しょうぎせき)でいただけるのも楽しみ。
長い年月をかけ、この丘を愛した人たちにより作られた桜の園。この土地に育つことを選んだ桜…春の美しい景色には、桜と人の深い絆を感じます。
市街地からは、少し距離がありますが、ぜひとも足をのばしたい京都の桜の名所です。
原谷苑
京都市北区大北山原谷乾町36
☎075‐461‐2924
一般公開期間:梅、桜、紅葉シーズン。
平成28年桜開花予想3月26日~4月25日くらい
9:00~17:00
入苑料おとな1500円、小・中学生500円、小学生未満無料(梅、紅葉シーズン無料)
アクセス:地下鉄「北大路駅」またはJR「円町駅」よりタクシーで約10分。『金閣寺』からタクシーで約5分。*桜のシーズンは、タクシー利用をおすすめ。
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