歴史ある町家で拝見する
「武者人形飾り」
京都「四条堀川」の市バスの停留所から、醒ヶ井通を南に進むと、ほどなく古い町家が見えてきます。ここは、明治3年創業の呉服商「黒田庄商店」。昨年より、新たにショップとギャラリー「京空間 mayuko」をオープン。さまざまな文化イベントや講座が行われるようになりました。
そこで5月30日まで、代々伝わる「武者人形」を無料公開しています。「武者飾り」は、端午の節句にその家の男の子の健やかな成長を願って飾られるもの。東京のように兜飾りや鍾馗さまの人形だけでなく、歴史上の有名な武将をモチーフにし、立派な甲冑などを纏う凛々しい人形が一堂に並びます。
雛飾りの公開は、京都でもいろいろなところで行われますが、武者人形をこれほど多く一度に目にするのは珍しいこと。坪庭に面した座敷に設えられた段に、さまざまな表情の人形が鎮座しています。
最上段には、「神武天皇」、そして「神功皇后」のお姿が…。今回の武者人形飾りで唯一の女性である「神功皇后」は、臨月で戦場に赴いたという勇ましい女性で、安産の神様として、祇園祭の山鉾の御祭神としても崇められています。
武者人形の特徴は、モデルとなった武将の特徴的な持ち物を携え、戦に臨む勇ましい甲冑姿であること。
さまざまな素材を巧みに使った甲冑、職人の技も見どころのひとつです。また人形の表情や動きも豊かで、思わず引き込まれてゆきます。
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応神天皇、加藤清正、太閤秀吉…
この武者人形は、現在、七代目の当主を迎える黒田家に受け継がれたもの。江戸時代は、宇和島伊達家の京都屋敷の長を務めた武士だった黒田家は、明治維新に呉服商を始めます。武士の出身という家柄のせいでしょうか、とりわけ武者人形への強い思いを感じます。当主となる男の子が誕生するごとに増えてゆく武者飾り。京都の商家で、これほど多くの武者飾りを有するのは、本当に稀なこと。
源頼朝など居並ぶ武将の中でも、雛人形で有名な「丸平大木人形店」の作は、上品で品格ある面差し…京都生まれの武者人形らしい、雅さが漂います。
御伽草紙で有名な桃太郎、金太郎も登場…とても楽しく、微笑ましい姿です。
ご紹介したのは、展示したものの一部…。ぜひ、ゆっくりとひとつひとつ見てゆきたい人形たちです。
「京空間 mayuko」
京都市下京区醒ヶ井通仏光寺上ル要法寺町445
☎075‐351‐0326
「武者人形展~神武天皇から金太郎まで~」
5月30日(月曜)まで開催。10:00~18:00 火・水曜休み 入場無料
小原誉子の京都の観光文化を伝えるブログ
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