仏像好きの聖地
びわ湖長浜の仏様が東京にやってきた
こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。
全国各地のお寺や神社を巡り、選りすぐりの情報をお届けしています。
今回は、現在、上野にある東京藝術大学大学美術館で開催中の「びわ湖・長浜のホトケたちⅡ」という素晴らしい展覧会をご紹介します。
長浜市は、滋賀県の北部の「湖北」という地域にあります。
琵琶湖周辺には、ほかに「湖東」、「湖南」、「湖西」と呼ばれる地域があり、それぞれに素晴らしい神社仏閣や仏像があります。
中でも湖北地方は素晴らしい観音像が点在することで知られ、「観音の里」とも呼ばれています。
仏像好きの人々にとっては、一度はお会いしたい仏さまが数多くある魅力的な地域ですが、事前に連絡しておかなければ拝ませていただけない無住のお寺や小さなお堂も多く、一度の旅行でたくさんの仏様にお会いするのは難しい。
ということで、今回、たくさんの仏様が東京の博物館まで来てくださるのは、たいへんうれしいことです。33年ぶりに開帳された仏さまや、お寺の外で公開されるのは初めての仏さまも展示されるので、東京と近郊在住の方のみならず、全国から仏像好きが集まりそうですね。
開催は、2016年の7月5日から8月7日まで。
会期は短いです。仏像好きの方はお見逃しなく。
わたしは、7月4日に開催された内覧会に出席しました。
かつてノンノでも活躍したモデルのはなさんのご挨拶が印象的でした。
はなさんは、大の仏像好きとしても知られ、今回の展覧会の会場で流される映像のナビゲート役として出演なさっています。
公共の交通機関がほとんどない地域に点在するお寺を、はなさんはレンタサイクルで回られました。電車の時間に遅れそうになり、観音様の世話役の方がトラックに自転車を乗せて駅まで送ってくれたという素敵なエピソードを披露されましたが。実はわたしもはじめて湖北に行ったとき、はなさんと同じように自転車で回り、同じお寺に行った経験があります。そしてそこで、同じようなご親切を受けたのでした。
その後わたしは、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)という本を書くことになり、湖北にあるたくさんのお寺やお堂を何日もかけて訪ね歩くことになりました。そのときも、地元の方々には大変親切にしていただきました。湖北の方は、地元の観音様を何よりも愛し、誇りに思われているためか、はるばる観音様に会いに来る人にも、優しい対応をしてくださるようです。
今回の展覧会で楽しみにしていたのは…次のページに続きます。
今回の展覧会では、全部で41体の仏様とお会いすることができます。その中でも、特にわたしが楽しみにしていたのは、黒田という集落にある観音寺からやってきた「伝千手観音立像」。「伝」というのは、「お寺には千手観音と伝わっている」という意味で、手の本数などの特徴から「准胝観音(じゅんていかんのん)」という別の種類の観音様として造られたのではないかとも言われています。千手観音は、手が42本であることが多いのに対し、准胝観音は手が18本とされます。確かにこの観音寺の観音様は、18本ですね。
「黒田観音」と呼ばれて、長年地元の方々に守られてきたこの観音様。作られたのは平安時代前期。像高2メートルの堂々たるお姿です。これまで何度かお寺まで足を運んでお会いしたことがありましたが、お堂では、お背中や足元は見えませんでした。仏像は基本的に、祀られているお寺で拝むのが一番と言われますが、博物館のライトの下で拝ませていただくと、違った表情にも見えてまたよいです。
正妙寺というお寺からお出ましになった、たいへん珍しい千手千足観音にもお会いできます。この寺は無住のため、事前に地元の世話役さんに連絡して、カギを開けに来ていただきます。はじめてうかがったとき、その世話役さんが、トラクターに乗って田んぼのあぜ道を走ってきてびっくり。忙しい農作業の手を止め、わたしたちのためにわざわざ来てくださったことがわかって感激しました。
今回の展覧会には、仏像だけでなく、菅浦という集落に伝わる絵画や書跡なども展示されています。菅浦は、白洲正子さんの「かくれ里」にも登場する独特な精神文化を伝える集落です。これらの展示物は、菅浦が他の地域との境界線を守り、自治を行ってきたことを示す資料としても貴重です。
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白洲正子さんが菅浦について書かれた文はこちらで読めます。
http://www.biwako-visitors.jp/shirasu/series/spot01_02.html
「びわ湖・長浜のホトケたちⅡ」の情報はこちらです。
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2016/nagahama2/nagahama2_ja.htm
上野駅方面にお帰りの方は、不忍池のほとりにある、「びわ湖長浜KANNON HOUSE」にもお立ち寄りください。これは長浜市の情報発信基地で、長浜産の檜材で厨子に見立てた「観音堂」が作られています。そしてそこには、長浜からお出ましになった美しい観音像が祀られています。この観音様はほぼ2か月おきに変わります。長浜の文化と歴史を紹介した映像や資料も見られます。
びわ湖長浜KANNON HOUSEの情報はこちらです。
http://www.nagahama-kannon-house.jp/
ところで、なぜこの施設は不忍池のほとりにあるのでしょうか。
江戸時代初期に徳川家に重用された天海僧正というお坊さんが、京都をモデルに江戸の街をデザインしました。その際、寛永寺を比叡山延暦寺に見立てたため、不忍池は琵琶湖、不忍池にある弁天島は琵琶湖の竹生島に見立てられているのです。上野公園内には、清水観音堂という清水寺に対応するお寺もあります。そんな歴史を考えながら歩くと、上野散歩が一層楽しくなりますね。
吉田さらさ
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