長年愛用したり、大切な方から頂いた器の中で、欠けてしまったものはありませんか。でも捨てられない…それで仕舞込んでしまった品が、きっとあるはず。でも、欠けやひびが入ったり、割れてしまった器を蘇らせることができるんです。それが伝統の技「金継ぎ」です。
大徳寺の東門の向かい側にある「漆芸舎 平安堂」は、陶器や磁器の割れ、欠け、ひびなどを漆工法で修復し、そこに金粉、銀粉、色漆などを施し、新たな景色を生み出す「金継ぎ」など、修復を手掛ける工房。数珠や仏具などが並ぶ店の一角に、その工房はあります。
40年に渡り漆芸士として、京都をはじめ、文化財や全国の歴史ある寺院などの修復を手掛ける清川廣樹さん。町家を改装した工房には、仏像、仏壇をはじめ、全国から陶器、磁器や漆器などが、清川さんの腕を頼りに送られてきます。
「修復という仕事…私にとっては興味尽きないもの。時代を遡り、先人たちの技や心が見えてくるんです。本当に多くのことを教えてもらっています。器などの『金継ぎ』は、元に戻すことではありません。漆を使い、欠けやひび、割れた部分を接着し、その上から金や銀の粉などで整えることで、そこに新たな景色が生まれます。それを作った職人たちが、喜んでもらえるような景色づくりを、いろいろ考えるのも、楽しみですね」と、目を輝かせ語ります。
全国から依頼される「金継ぎ」。まずは、修復する品を見て、どのように修復するか、その予算や期間を見積もります。依頼者が承諾して始まる作業です。
「どのような品にも、持ち主のさまざまな思いがこもっています。『金継ぎ』をすることで、また使えるようになると共に、その思いを将来につなげることができるんです」
清川さんのもとには、長年愛用した品、思い出の品、家に伝わる品など、傷ついた小さなぐい飲みから大きな壺や皿、古びた重箱など、本当にあらゆる品々が届くそう。
中には、ボンドなどで接着したものの、また壊れてしまった器なども…。
「接着剤は、天然の漆を使います。陶器や磁器も土、水、火、風、木などすべて自然の恵みからできたもの。それをボンドのような化学的な物質で接着すると、時間が経過すると破損した部分がいっそう傷んでしまうことが多いんです」と。一度、ケミカルな接着剤をつけた部分は、削り取った後、漆での接着をしなければならないそうです。
「漆芸舎 平安堂」では、「金継ぎ」や漆器修復の教室が開催されています。清川さんの指導のもと、自分の愛するものを修復し、そこに新たな命を吹き込みことができる楽しさが味わえる教室です。参加者は、国内だけでなく、台湾など海外からも・・・。
もう一度使いたい…思いのこもった品を持って、京都へ。
漆芸舎 平安堂
京都市北区紫野門前町14 大徳寺東門前
☎075‐334‐5012 10:00~18:00
定休日:水曜
金継ぎや漆器修復、また教室に関するお問い合わせは、電話やfacebookのメッセージで
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小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」
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