地元の人たちが愛する洋食、下鴨にある「グリル生研会館」
「下鴨神社」の西側を通る下鴨本通り。神社へ入る道のそばのビル1階にある「グリル生研会館」が今回ご紹介する場所。
ここは、下鴨エリアを中心に地元の人たちが、子供の頃から通う、昭和33年にできた洋食店です。
店内に入ると、どこか懐かしい昭和の香り漂うインテリア。昭和生まれには、心落ち着く雰囲気です。クロスのかかったテーブルには、小さな花と三角に折った紙ナフキン、そして胡椒や塩の小瓶が並びます。ガラスブロックの窓から注ぐ陽光が、やさしく注がれる店内。壁には、油絵や古い写真が飾られています。
現在、オーナーシェフを務める西崎裕紀さんは3代目。
初代のおじい様は、古い写真の中にその姿を見ることができます。写真が撮影されたのは、戦前の満州にあった「大和ホテル」です。ここは、南満州鉄道が、1914年に5年の歳月を費やし建設した高級ホテルで、当時は迎賓館としても使われていたそう。その利用者には、ラストエンペラーの溥儀や男装の麗人の川島芳子などが名を連ね、まさに歴史の舞台になったホテルです。
そこで料理の腕を磨いたおじい様が、日本に戻り開いたお店がここ。共に満州で働いたシェフ仲間は、それぞれ洋食店を開いたそうですが、その当時の流れが今も残る本格的な味は、このお店だけに…。
さて、このグリルの名は、実はビルの名前に由来します。もともと昭和22年に、京都大学の1室に設立された、自然科学的な研究を行い、科学技術の振興と産業の発展に寄与することを目的にする「財団法人 生産開発科学研究所」が、新しい所屋建設に伴い、その中に作ったホテル業務を担ったのが、「グリル生研会館」の前身です。
「創業当時は、このビルは、ホテル機能も備えていて、宴会場や宿泊施設があり、研究者たちが、宿泊し、ここで朝食などをとったんですよ。もう30年ほど前に宿泊部門はなくなって、今は、研究所の事務所です。また以前は、下鴨神社で挙式して、ここで披露宴をする人たちも多かったんです」と、下鴨生まれの西崎さん。子供のころの記憶を思い出して、話してくださいました。
歴史に名を留める人たちをもてなしたおじい様から受け継いだ、丁寧な味の洋食がここにはあるのです。
次のページでは、注文した1番人気のランチを紹介します!
さて、さっそくランチを頂きましょう。開店と同時に店に入いると、次々にお客様が…気づくと満席状態に。
運ばれたメニューにも、レトロ感が漂います。フォークとナイフと共に割り箸も。気軽に味わってほしいという心遣いが…。
メニューには、ビーフシチュー、エビフライ、ポークソテー、ハンバーグなど洋食の定番がいろいろ。セットでも、単品でも注文できます。さんざん悩んだ末…ランチの1番人気という「ハンバーグ&エビフライランチ」1,400円をお願いしました。
運ばれたのは、お皿いっぱいに盛られた品々。見るからにボリュームがあります。特製のデミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグ。肉の旨味がソースと共に、口に広がります。サラダも皿にこんもりと…。野菜不足も解消できそう。プリプリしたエビフライには、特製タルタルソースが、その美味しさをいっそう引き立てます。店自慢のピクルスをつまみながら、次々に…。
この味と内容で、なんともお得感もいっぱい。食後のコーヒーを200円で追加しました。
毎日のように通う地元の常連客も多いのが頷ける、飽きのこない美味しさを感じます。
そういえば、紺色のブドウの模様の食器は、以前、家にもあった気がします。お店の椅子も創業当時のものを、修繕したり、手間を掛けて使い続けているそう。時代に流されず、いいものを大切にしたいというお店の心が伝わってくるようです。
ふと見まわした店内で、子供用の椅子に座ったお孫さんとうれしそうに食事を楽しむ方が目に留まりました。
下鴨出身で、今は別の町に住む友人は、「昔、家族とよく来たの。下鴨エリアに来ると、必ずこの店に寄りたくなる…」と、幼い時分を思いながら話してくれたことがあります。このグリルには、料理の美味しさと共に、訪れた時の素敵な思い出が、今も京都人をとらえ続けているのです。きっとあの子供椅子にいる子も、いつか思い出す時が…。
ぜひ「下鴨神社」参拝の折のランチに訪れていかがでしょう。京都の旅に、新たな思い出が加わるかもしれません。
グリル生研会館
京都市左京区下鴨森本町15
ランチ 12:00~13:30LO ディナー17:00~19:30LO
水曜夜、木曜休み
アラカルトの品々もいろいろ。
http://www.grillseikenkaikan.com/
小原誉子ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」
http://blog.goo.ne.jp/mimoron/