「ユーレイルパスを使って、ヨーロッパの美しい村を巡るプレスツアーをやるので参加しませんか?」
「します、します」
と、ろくろく考えもせず返事をした瞬間、想像を遥かに超える、おもろくも濃すぎる鉄道トライアスロンの旅への参加が決まった。
私は「やったことがない」ことに弱い。さらにチャレンジはアンチエイジングに一番効く薬だと思うので、冒険にはNOと言わないのである。
人生初の“鉄道だけでヨーロッパ縦断”。
10日間でイタリア南部のローマからオランダ北方にあるヒンデローペンまで4200キロ余りを駆け抜ける。
なんて素敵なのかしら。私の脳裏には「美しい車窓」とか「食堂車でご馳走とワイン」といった都合の良い妄想だけが膨らんでいった。
「集合場所はローマでいいっすね」
と主催者であるユーレイル・グループのNさんの決定により、パリ経由でローマの税関を抜けたところで待ち合わせ。
集まったメンバーは、
著名な鉄道カメラマン櫻井寛氏、地球の歩きかた編集部にしてヨーロッパの鉄道時刻表の編集を手がける鹿野氏、女子鉄という言葉を世界にひろめたアナウンサーともみん、物静かに、しかし執拗に鉄道を目で舐め回す戸部氏、
その日のことはその日に書いてすぐに媒体にアップする超速ライター日沼氏、
そして、どこへ行っても車窓などおかまいなしに淡々と趣味の刺繍を続けるユーレイル・グループのN氏、という最強の鉄道オタクたちだった。
「あのー、ローマまで来てからでなんなんですけれど、なぜに私を呼んでくださったんですか? 私は美容と健康のオンラインマガジンOurAgeのライターなんですが?」
とN氏に聞いてみたところ
「有名な鉄道マニアのみなさまばっかりだったので、ひとりくらい違う分野の人が入ってもいいかなって思ったの」
(違いすぎないかっ)と思ったものの、もはやローマ。
一行は、第1番めの目的地、チヴィタ・ディ・バニョレッジョという決して覚えられない名前の中世都市を目指したのである。
ローマのフィウミチーノ空港で列車に乗る前に大切なユーレイルパス豆知識:
旅の前に“Rail Planner App” をダウンロードしておく。このアプリで列車や乗り換え情報を見ながら旅をするのだ。
アプリを開いて乗る駅と目的地を入れるだけ。こんな風に乗り換えが簡単にわかる。
ユーレイルパスの注意事項:
ユーレイルパスを使う前に、旅行社か駅の窓口で有効化する(スタンプを押してもらう)
ユーレイルグローバルパスは2ヶ月有効で、その間通算10日間利用できる(1日のうちで何度乗り換えても大丈夫)
600ユーロするので、1日で60ユーロ以上乗らないと元が取れない。
乗車前(車掌さんがくる前)に氏名、住所、メルアドを書き込み、さらに日付と乗車した駅を書いておく。
決して日付を間違えてはならない(不正行為とみなされて罰金を取られることがある)
鉛筆で書いてはならない
日付を間違えた場合、斜線で消して下の段に正しい日付を書き込む。間違った日付は1日使ったものとカウントされ、1日分の60ユーロがムダになる。
日付と乗車駅をあらかじめ書いておけばいいじゃない、と思われるかもしれないけれど、もしもその電車に乗れなかったり、あるいは、「あら、ここ綺麗だからもう一泊したい」と日程を変えたときにアウトとなる。なので当日の朝、その日のことを書くのがベスト。
最初の目的地、天空に浮かぶ村「チヴィタ・ディ・バニョレッジョ」へ。
1)ローマフィウミチーノ空港〜オルビエート 26km
オルビエートからバスで約1時間。一般社団法人日本旅行業協会(JATA)が選んだヨーロッパの美しい村30のひとつ、イタリアはラツィオ州にあるチヴィタ・ディ・バニョレッジョへ。2500年以上前に作られた村は、自然によって風化が進み、まるで削ぎ取られたような形の崖の上にあった。「死にゆく町」「天空の島」とも呼ばれるこの村の周辺は、今なお風化が進んでおり、外界とつながっているのは300mもの長さの一本の橋だけ。いまだにこの街に暮らしている住人は数世帯を残すのみだという。
天空に浮かぶ美しい村”チヴィタ・ディ・バニョレッジョ” 思わずため息がもれる。
村と外界をつなぐ唯一の架け橋。1965年にコンクリート製に作り変えられた。
村の中は、住民が少ないというのに花が咲き乱れ、よく手入れされた家屋が並ぶ。もともとはエトルリア時代から古代ローマ時代にかけて要塞として作られたというが、今は花咲き乱れる道のあちこちに太った猫たちがのんびり昼寝をしていて、ひたすらのどか。
ランチを食べたチヴィタ・ディ・バニョレッジョのレストラン。おしゃれなテーブルセッティングにイタリアにいる幸せを実感。
村の中にはカフェやレストランもあるので、ゆっくりと観光ができる。ただし、宿泊施設はないのでオルビエートにホテルを取り、日帰りでいくのがおすすめ。オルビエートもまた丘の上にある美しい村。一日天空の村を歩き回ったあとは、オルビエートに戻り、有名な白ワインを飲みながらゆったりとイタリア料理を楽しむのが理想。
・・・・理想はそうだが、私たちは、早朝の撮影に備え麓の小さな村のアグリツーリズモに宿泊して自炊。超速ライター日沼氏の作ったパスタとカップーラーメンを食べて早々と寝たのであった。
夜にチヴィタ・ディ・バニョレッジョを見上げると、ポツンポツンと明かりが灯り、秘密基地のようにも見えた。
オルビエート駅前。
とっても優しい鉄道写真の大家、桜井寛先生と。
オルビートの駅。
次回は、ここからフィレンツェ〜ベネチアを経由しトリエステ、そこからスロベニアの美しい村「ピラン」へ向かう。
取材協力 ユーレイルグループ
旅のブログ 『世界1000都市ものがたり。』