京都では、お茶会、観劇、祭事など和服を着る機会が多く、そこでいつも素敵な和服姿の女性に出会います。お召になっている着物は、その季節の風物やお好きな文様を染めたもの。帯や半襟にもさりげなく同じ趣の柄が配置されたりと、なかなか凝った趣向が見られることも。伺うとそれらは、知り合いの職人さんにお願いして作っていただいたのだとか。
でも、京都に知り合いのないものにとって、そんな職人さんを見つけるのは至難の業。
そんなある日。東本願寺の北側の通り、花屋町通に友禅の雅な模様を描く職人さんの工房「京町家 染工房 遊」を見つけました。町家の中の工房では、友禅の長年手描き職人として活躍する山田清さん、哲生さんご兄弟を中心に熟練の職人さんたちが、作業をなさっていらっしゃいます。お邪魔と知りつつも、近くでお仕事を拝見させていただきました。
お子さんの七五三のお祝いに仕立てる子供用の着物と同じ文様でお母様のお着物をお作りになる注文の品の作業が進んでいました。なんて素敵な着物でしょう。きっとそのお子さんが親になった時も、おばあ様が作られた、このお着物をお召になることでしょう。
この工房では、飛び柄小紋や附下小紋をセミオーダーで作ることができます。好みの色や顔映りのいい色を地色として選びます。そこに数多い見本から選んだ図柄の配置や全体の色具合を調整します。最後に厚さや風合いなどの異なる白生地を選び、着物に仕立ててもらいます。
次ページに続きます。
正絹丹後縮緬を使用し、八掛け、胴裏なども含み、お仕立て上がりで10万8000円。自分好みの着物ができてこの価格は、手が出る範囲。既成の反物から仕立てても、この価格以上になることが多いはず。それがすべて自分好みの、他にない自分だけの着物ができるのは、なんともうれしく、贅沢感もいっぱいです。
東京育ちの私は、着物というと紬がほとんど。しかし京都では、やはり染めの着物が活躍する機会が多く、いざ新たな染めの品を探し始めると、なかなか自分らしさが表現できるものに出会えません。ここでは、新たな図柄の製作も可能だとか。いつかネコ足形の図柄の小紋を作りたいと密かに思っております。そう、あらゆるTPOを活用できる図柄の着物も必要ですが、むしろここではクリスマスパーティーなど限定された期間だけに着る遊び心あふれる小紋を作るのもいいのでは…。
さてオーダーから仕上がりまでの期間は、約2か月。インターネットでのセミオーダーも可能ですが、やはり工房を訪れて相談しながら注文していくことをおすすめ。オーダーの楽しさは、作る方とのやり取りにあるのですから…。
京都を訪れる目的に観光以外に、着物をつくる…なんとも大人の楽しみがそこに…。
着物の他に、ネコをイメージした手描きの小物なども人気です。
さらに、着物の仕立て直しやシミ落とし、丸洗いなども依頼できます。着物の本場、京都にお持ちの品に関して、相談できる場所があるのは心強いことです。
京町家 染工房 遊
京都市下京区花屋町通新町東入ル艮町855の6
☎075‐344‐5067
営業時間:9:30~18:00 定休日:月・火曜 第2日曜
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」