享保元年(1716)創業の「笹屋伊織」。長年、京都御所、神社仏閣をはじめ、茶道のお家元などの御用を務めていた和菓子の老舗です。
雅な京菓子で知られるお店ですが、ここには他では味わえない特別な品があるのです。それが銘菓「どら焼」。
そもそもこの「どら焼」のはじまりは、江戸時代末期。店の近くにある東寺のお坊様から、副食になる菓子を作って欲しいとの依頼を受け、五代目となる笹屋伊兵衛が考案。お寺でも作れるようにとの配慮から、鉄板に替り銅鑼の上で焼くことを思いついた、まさに画期的な品なのです。「どら焼」というと、丸い小ぶりのパンケーキのような皮に餡を挟んだ銅鑼の形状のものを思い浮かべますが、ここ「笹屋伊織」の品は、竹皮に包まれた棒状の形をしています。それを輪切りにすると、中心部の餡を薄い皮が渦巻状に包み、まるでバームクーヘンを思わせる形に。こちらは、菓子の形状ではなく、銅鑼で焼いたことによる、まさに「銅鑼焼き」なのです。
もっちりとした皮と程よい甘さのこしあんの調和は抜群で、その美味しさは、僧侶の間だけでなく、たちまち町の人達の話題に…。実は作るのに、手間がかかる「どら焼」。職人の技も必要で、当時、あまりの人気に店はてんてこ舞い。そこで店主は、東寺の弘法市が開かれる毎月21日の1日限定販売をすることに。以来、弘法市の評判のおみやげになったそう。
現在は、毎月20、21、22日の3日間限定で、弘法市および「笹屋伊織」の各店舗や百貨店で手に入ります。また、インターネットでは、予約ができるようになっていて、昔より手に入りやすくなりました。それでも毎月3日間だけ、この日を逃すと翌月まで待たなければならない味。
今も、当時の製法を守り、変わらぬ味わいを守り続ける「どら焼」。ずっと買いそびれていた私ですが、初めて食べた時、その美味しさに感激。棒状なので、3センチほど切って頂いたのですが、ついもう3センチ…と、気づけば半分ほど食べてしまいました。
どこか懐かしい感じのする素朴な味わいで、次の月も食べたくなり、今では弘法さまの日が待ち遠くなっています。京都の友人たちでも、美味しさは噂では知っているものの、食べたことがないという人も多い、限定の味。友人を訪ねるときの手土産にすると、感激される品なのです。
ぜひ、1度味わって欲しい、京都の昔ながらのお菓子、それが「笹屋伊織」の「どら焼」です。賞味期間は7日間。一本1512円(税込)。
「笹屋伊織本店」
京都市下京区七条通大宮西入ル花畑町86
☎075-371-3333
営業時間9:00~17:00
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