「京都のお店に入ると、とてもいい香りがする…」そう感じたことはありませんか。仄かに漂う甘い香り…京都でお客様をお迎えするのに、お香は大切なおもてなしのひとつです。
三条通を堀川通から東に少し進んだところに、古い趣の店「香老舗 林龍昇堂」があります。木枠のガラス戸をあけて中に入ると、そこは昔ながらの京都の店の雰囲気が…。芳しい薫りが漂う店は、江戸の天保5年(1834)に創業した薫香の老舗です。
京都では、昔からお香は生活の中に不可欠のもの。寺院で焚かれる線香や焼香、また茶室の香炉からも心和む香りが漂ってきます。
いにしえより香りを好む都人。香りを嗜むことは、教養のひとつとも言われます。そんな京都には、昔からお香の店が多く、白檀、沈香、桂皮など、さまざまな香料を組み合わせそのお店独自な薫りを作っているのです。今や京都みやげのショップに並ぶ人気京みやげのひとつになっているお香ですが、ここ「香老舗 林龍昇堂」は、家族で昔ながらの手づくりのお香を作り続けている数少ないお店で、その品が直接買えるのは、京都ではここだけ。(インターネットで購入はできます)
六代目となる店主の林慶治郎さんが守り続ける香りは、天然香料をふんだんに使用したものを中心に展開した品々。
約20種類の香料を、それぞれの銘柄に合わせ、巧みに調合し、湯とつなぎになる杉や椨(たぶ)というクスノキ科の粉を加え練り込み、成形、乾燥させた品々です。
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ここで心惹かれるのは、お座敷香と呼ばれる、室内で芳しい香りを気軽に楽しむお香です。
特におすすめは、「二条城 梅だより」(972円)という紅梅の形をした品。この店の近くにそびえる世界文化遺産「元離宮二条城」の梅園の梅の実をすり潰し、天然白檀を中心とした原料に混ぜ、梅の花の形をかたどったもので、店主が試行錯誤の末、完成した香りです。白檀の豊かな香りに、そっと梅の香りが寄り添うような芳しさ…。
また、京都の古刹より集めた紅葉を、天然の白檀の材料に練り込んだ「京を彩るもみじ香」(1,468円)は、京都の秋を感じさせる香りです。
さらに京女のおもてなしをコンセプトに開発された「舞妓maimai賀茂川さんぽ」や「舞妓maimai祇園のあかり」(各1,944円)、すみれ、藤、桜など京都の四季の花をイメージした「京の花」(1,080円)など、香油を用い香りづけしたものなども…。
いずれも、京都らしいネーミングとレトロなラベルやパッケージが洒落ていて、お土産にしたくなります。店に並ぶ品々の多くのラベルは、戦前に新聞広告でデザインを募集したものだとか。
種類豊富なお香の中から、自分の好みの香りを選ぶために、試し焚きもお望みで…。
自分好みの香りをご自宅で…お客様を迎えるとき、京のおもてなしのように、ひとつ焚いてはいかがでしょう。
*価格表示は、すべて税込
香老舗 林龍昇堂
京都市中京区三条通堀川東入ル 橋東詰町15
☎075‐221‐2874
営業時間:9:00~19:00 日曜休み(祝日・年末年始・お盆不定休)
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」