東京—ストックブリッジ 6265.02マイル
今回は、美しい自然の中で、魂のデトックスができるフライフィッシングのお話です。
訪れたのは、英国フライフィッシング発祥の地、テスト川が流れる小さな村ストックブリッジ。とても小さな村ですが、年間を通じて釣りや狩猟をする人で賑わっています。
まずは
「フライフィッシングとはなにか?」
ここから始めましょう。
「魚が餌としている昆虫に似た毛針(フライ)を使って、魚と知恵競べをして、釣り上げようとするスポーツ。釣ったあとは、素早く記念写真を撮り、二分以内に魚を川に返す」
by Dr J. H. Burroughes FRS FREng (ボロー博士)
今回の講師は、英国の著名な科学者ボロー博士。釣りの博士ではありません
ボロー博士のお父様。ユーモアあふれるエレガントな英国紳士。引退前は、政府官僚として世界中を旅していらしたそうです。池が4つもある広大なご自宅のお庭も素晴らしいのですが、その話はまた後日!
ボロー博士は、10歳のときに初めてお父様に釣りを習ってから、毎年一緒に釣りをしていらっしゃるそうです。
「釣った魚を川に返して、本当に魚は無事なの?」
と聞いたところ、
「かえしのない釣り針を使うからダメージは最小限だし、素早く川に返すから大丈夫だよ。放したあとは、元気に泳いで行くよ」
とボロー博士は言います。
5月はMAYFLYと呼ばれる蜻蛉が飛び交う季節ですから、 疑似餌もメイフライに良く似たものを使います。
こんな感じ。
丁寧に毛をふわふわ逆立てて、さらに本物の虫らしく見せます
テスト川の上流は石灰岩質の土壌を流れるチョーク(石灰)ストリームと呼ばれ、世界有数のトラウトフィッシングのポイントとして知られています。驚くべきことに、英国の川は個人の所有となっていることが多く,釣りをしようとするには所有者に釣りの許可を取り、費用を払わなくてはなりません。
今回は、3人で3日間、3カ所で「釣りをする許可を得るだけで」ひとり18万円ほど支払いが生じました。つまり3人で50万円以上かかるわけです。
さすが紳士のスポーツ・・・高い・・・。
ご招待いただかなかったら手を出せない金額です。
「もっと安くフライフィッシングはできないの?」
とボロー博士に聞いたところ
「安い場所もあるよ!」
とのことでした。
良かった・・・・。
ちなみに、狩りはもっと高いそうです。そりゃそうですよね。
宿泊していた釣りと狩猟の宿’The Greyhound On The Test’の女将ルーシーは、最近女性の釣り人が増えてきたと言います。
「腕と胸筋を使うので、二の腕のたるみ防止とバストアップにいいのよ。乳ガンの手術のあと、フライフィッシングでリハビリをする人も多いのよ」
ルーシーの経営する宿‘The Greyhound on the Test’は、レストランに宿泊用の部屋がついた小さなオーベルジュ。ランチとディナータイムは、いつも満杯です。新鮮な地元の食材を季節感たっぷりに提供する料理は、地元の人たちにも大人気。
建物は600年前のもの。低い梁が特長です
レストランの時計。周囲のボトルはなんと未開封のもの!
可愛いデザインの部屋の鍵。
日本からのツアー客(釣りが目的)も多く、たとえ手ぶらできても、ギリーと呼ばれる水先案内人とレンタルの装備で手軽に釣りを楽しむことができるそうです。
「なによりいいのは、魚を釣り上げるのに精神を統一しなければならないので雑念が払われるの。美しい自然の中で精神統一をして自然に向き合ううちに、小さな悩み事なんかどうでも良くなるわよ」とルーシー。
ちなみに
「釣りをしに来る女性は、旦那さんを家においてくる人が多いわね。夫婦で来る人は少ないわねえ。なんでかしら(笑)」
だそうですよ。
わかる気が致しますね。
さあ、いよいよフライフィッシングに挑戦です!
では、どんな風に釣りをするのかご紹介しましょう。
今日借りているのは、Compton Chamberlayneという地区に流れている川のビート3と7(川の区画)という場所。一日一組だけしか借りられないので、別の釣り人は入って来られません。
だれにも邪魔されず一日を美しい自然の中で過ごせる最高の環境です。
澄んだ水が流れる川には、白鳥や赤ちゃんを連れたママ鴨や、カップル鴨がたくさん泳いでいます。虫を食べる魚を騙して 疑似餌で釣り上げるスポーツをするシーズンだけあって、虫もいっぱい。
昆虫好きには、たまりません!
ほかの昆虫を捕獲してお食事中のトンボを激撮
予約している釣り場に着いたら、ひと通り歩き回り、川を観察して、どこに魚がいるか確認します。借りている区画は、端から端まで歩いて15分ほどもあります。
川底でじっとしている鱒を見つけたら、ちょうど目に入る場所に、あたかも虫が舞い降りたかのようにフライを投げます。
無邪気にふわっと着水させるのが理想です。
たまたまお腹が空いている魚の目に入るところに投げることができれば、パクッと食べてくれるはず。魚が釣れたら慌てずに、魚の口の中にフライがちゃんと収まるまで待ってから、網でそっとすくいあげます。陸に上げたら、すぐに口からフライをはずし、写真を素早く取ったら、川の中にそっと返します。
穫れた!
そっと針をはずし
すばやくサイズがわかる写真を撮影し
そっと川に返す。
と、こうして見ている分には簡単そうですが、なかなか魚は引っかかりません。
ドライフライと呼ばれる水に浮くフライを使い、
(魚が待っている川面にうっかり止まってしまった私)
という演出をするために、神経を集中して、フライライン(釣り糸)を何度も投げていると、たしかに二の腕と胸筋をよく使います。
川底でごろごろしている魚を騙して釣ることしか考えられないので雑念も消えます。初日は気がつくと7時間も経っていました。
イギリスのスポーツらしいのは、ランチのときにハンパーバスケットと呼ばれる優雅なランチボックス持参で行くところ。
実は、昨年も英国でフライフィッシングをする機会があったのですが、そのとき近くで釣りをしていた紳士のところには、お昼時に執事が来て、白いクロスとクリスタルがまばゆく光るテーブルセッティングをしていました。直立したままの執事に、あたたかい食事とワインをサーブされながら優雅にお食事をされている光景に、よだれが出そう…うっとりと見とれてしまいました。
初めてのフライフィッシングの成果ですが、3日間トライして「収穫ゼロ」。正しい場所にフライを投げ、魚が餌をパクッと、までは何度か成功したのですが、「ちゃんとひっかかっているかしら」と躊躇したり「あ、網を準備しないと」などと、もたもたしている間に逃げられてしまいました。
ま、どうせ自然に返すんだからいいんですけどねっ。←強がり。
この夏は、日本でも練習するつもりです。
ストックブリッジ村の美しい夕景です
宿泊した宿はこちら。
THE GREYHOUND ON THE TEST
http://thegreyhoundonthetest.co.uk/
井原美紀ブログ 旅の記録 Let’s GO TO SEE THE WORLD!
http://ameblo.jp/surpriseenterprise/