品格漂う唐紙のレターペーパー「かみ添」
メールが多用される現代。でも、手書きの便りほど、心に残るものはありません。しかも、それが美しい文字で、上質の紙に書かれたものなら、長らく手元に留めておきたくなります。
京都の北、紫野にある1軒の町家。表通りに面した窓辺に、さりげなく置かれているのは、和紙でできたカードです。違い棚や畳の上りなど、古き京都の町家の風情をそのまま活かした店には、静かなゆっくりとした時間が流れます。
ここは、唐紙の型押し技法による手摺りの便箋、封筒やカードの店。まるで霜が降りたような繊細で、透明感あふれた品々…。そして、そこには何より、凛とした品格が漂っているのです。
オーナーの嘉戸浩さんは、長年、唐紙の老舗で経験を積まれ、独立。奥様と共に、6年前にこの店を始めました。
そもそも唐紙というのは、約1000年前に、大陸から遣唐使によって伝わった紙。それで「唐紙」と呼ばれます。桂離宮などにも見られるように、襖や壁面などのインテリアに使われ、高貴な都人がこよなく愛したものなのです。
浮世絵などと同様、版木を使いますが、粉末の顔料を篩(フルイ)で版木の上にのせ、紙の上から掌で、そっと抑えるように、絵の具をうつすという特殊な技法で作られます。使う絵の具も、シックな色と雲母(キラ)の輝きなどをもち、光の具合で微妙に変化し、文様にいっそう高貴な趣を与えます。ここの品は、すべてその技法で、一枚一枚作られているのです。
唐紙と言えば、伝統の文様が思い浮かびますが、この店で目を引くのは、ベルギーアンティークレースや古いガラスなどをモチーフにした洗練されたデザインの品々です。
そのあまりの美しさに、文字を書くのを躊躇してしまうほど…。フレームに入れて、インテリアの飾りにする人もいるというのも頷けます。
特別な思いを伝えたいとき、きっとこのカードや便箋は、受け取る人の心を揺さぶることでしょう。そして、受け取る人は、きっと送り手の美意識の高さに感激するはず。
でも、ずっと手元に置いておきたい…そんな思いを抱かせる品です。
かみ添
京都市北区紫野東藤ノ森町11の1
☎075-432-8555
営業時間:11:00~18:00 月曜休み(不定休有)
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」