夏の住まいを涼やかに
「京すだれ専門店 田中すだれ店」
暑い京都の夏。そこに暮らす人たちは、玄関先への打ち水など、昔から涼やかに過ごせる工夫を施してきました。暮らしの設えを、冬のものから夏に模様替えするのは、初夏を迎える時期からです。座敷を仕切る襖や障子も、風が通り、見た目も涼しげなよしずを張った「夏障子」に替えられます。また、強い西日を避けるため、窓の外に掛けられるすだれも新調するのも、本格的な夏を迎える前の京都の風物詩のひとつです。
窓を開け放つ機会が増える夏、陽射しを避けるだけでなく、外からの視線を遮る役割もする外用のすだれ。町家にさがるヨシのすだれは、いっそう涼しげな景色をつくります。
東山安井の東側の道に面した「京すだれ専門店 田中すだれ店」は、夏を迎える前は、1年でも特に忙しい時期となります。
すだれ一筋60年以上…現在、4代目のご店主が守るのは、昔ながらの手づくりの技。店の一角に据えられたすだれを編み上げる、使いこなされた機械には、店の歴史が刻まれているよう。外用のすだれの材料は、葭(ヨシ)が主に使われます。「かつては、琵琶湖産のものを使っていたんですが、環境の劣化で、ヨシの茎が黒ずんでしまい使えなくなりました」とご店主。そのため現在は、中国産の厳選したもの使用しているそう。
機械編みといっても、その手間と技術は、手づくりというにふさわしいもの。まずは、一本一本、素材のヨシの表面の皮を削り、美しく滑らかに整えます。それを機械に、茎の太い部分と先端の細い部分を交互に、これまた一本一本機械の穴にセット。そして足元のペダルを踏んで、それに糸を渡します。
その作業は、まるで布を織るよう。ガチャンガチャンとペダルの音が工房に響きます。編み上がったすだれは、次に両側を切りそろえ、形を整え、上下に吊るすための部分を装着して完成。1日、数枚しか編めない地道な作業が行われます。
外用のヨシのすだれは、幅95.5センチ、長さ115センチで9000円からが目安。
最近は、ホームセンターなどで中国産の安価なすだれが多く出回っていますが、やはり厳選された素材と職人さんの優れた技から生み出されるすだれは、その趣、風格に明らかな違いが感じられます。厳選された素材だけに、その耐久性にも違いがあります。
また、ここでは、すだれを吊るしたい窓などのサイズに合わせ、オーダーも可能。窓にぴったりのすだれの美しさは格別です。
暮らしの中に、本物を使う…そこが京都の人々の心意気。
真夏、蒸しかえるような暑さがこもりやすい盆地の京の町。そこに暮らす人たちが、どんなに暑くても涼やかな風情を醸し出しているのは、昔からの夏の暮らし方が、深く根付いているからと思わずにはいられません。
「京すだれ専門店 田中すだれ店」
京都市東山区東山安井東入ル
☎&Fax 075‐561‐2512
9:00から日暮れ(不在の時もあり) 日曜・祝日休み
市バス「東山安井」下車徒歩1分
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」
http://blog.goo.ne.jp/mimoron/