東京ーブリュッセル 9090マイル
ビール、と言えば、夏・枝豆・ジョッキで一気! といった男らしいシンプルなイメージが浮かびますが、今年は女らしくベルギービールを楽しみませんか?
ベルギービールはOurAge世代の女性そのもの。丁寧に長期間育まれ、エレガントで繊細、しかも銘柄によってグラスまで変わる、とてもおしゃれな飲み物。さらに、ビールには美肌に欠かせないビタミンB群、特にビタミンB2やナイアシンが多く含まれる上に、アンチエイジングに欠かせないポリフェノールも含有されていることがわかってきました。冷たいビールをがぶ飲みするのは冷えをもたらしますが、ベルギービールはワインのようにゆったりと楽しめるヘルシーで奥の深い飲み物です。
*ポリフェノールは、植物の渋みや苦み、色素に含まれる成分で、強い抗酸化・抗菌作用効果で知られています。赤ワインに含まれているということで、赤ワインブームを引き起こしましたが、実は赤ワインについでビールにも含まれていることがわかってきました。
イラスト:KOTO
東京にいると、世界中のどんな飲み物も飲めるような気がしていましたが、それは大きな間違いでした。輸入され、一般に流通しているベルギービールはほんの一部。本国ベルギーには、季節限定醸造ビールを含めると約4000種類ものビールがあったのです。20年くらい滞在しないと全部を味わうことができない!
全部は無理ですが、これから、ベルギー各都市の選りすぐり名物ビールを味わえる場所へご案内します。
ベルギーの良いところは、こじんまりしていているところ。面積は日本の約12分の1。関東地方くらいの大きさに、人口約1100万人、そこにぎっしりとミシュランの星付きレストランが密集しているという恐るべき美食大国です。ですから、ちょっと列車に乗って、美しい街や村をめぐっては、美味しいものを食べる旅にはぴったり。
この夏は、荷物を軽めにパッキングして、ベルギービールと美食の旅へと出かけませんか?
第一回目は、中世の面影が色濃く残る美しい古都、ゲントへ。
ゲントは、ブリュッセル、アントワープに次ぐベルギー第3の都市であり、「花の都」という美しい別名をもちます。ブリュッセルからインターシティという列車でたったの35分。
街の見所は、レイエ川の両岸に並ぶ中世の力と富を誇った商人たちの壮麗なギルドハウス、この土地を8世紀の長きにわたって治めたフランドル伯爵の城(ここから街が一望できます)、聖バーフ大聖堂に治められているファン・アイクの傑作「神秘の子羊」、そしてヨーロッパ屈指の夜景などいろいろありますが・・・・名所の詳細は、他のガイドブックに任せて、早速ビールの旅へ行きましょう。
ベルギーには飲んでもある症状にならないビールがあるのだとか!?
●二日酔いしないビールが飲める醸造所
Gruut(グルート)
旧市街の外れにあるゲント唯一の醸造所、Gruut(グルート)。
ビールの醸造には、匂いが生じるため街の中心には作れないそう。とはいえ、街の中心から徒歩15分くらいのところですから、気軽に行けますよ。
グルートは、中世時代のビールを再現したい、どこにもない新しいビールを造りたいというオーナーの思いから、ホップをまったく使わないビールを作っています。
「ここのビールはどんなに飲んでも二日酔いしません。二日酔いの原因はホップにあるんですよ」
とオーナー。
中世時代のビールのレシピは残っていなかったそうですが、さまざまな文献を調べつつ、スパイスやハーブを使って作っています。店名となっているGruutはハーブという意味。
(写真 男性)
Gruutで飲めるビールは、自家醸造の5種類。手前から順に。
Gruut White アルコール度5%
フルーティでありながらハーブの柔らかなスパイスが効いています。ライトでソフトな口当たりですが、決して甘口ではなくドライ。
Gruut Brown アルコール度数8%
アルコール度数が高いだけあって、White と比べると重みのある味わい。甘みとナッツのフレーバーがふんわりと口中に広がります。
Inferno アルコール度数9%
インフェルノは「地獄のような」という意味ですが、味わいは天国。ただし、アルコール度数が高いので、ゆっくりと。このビールはあまり冷やさずに摂氏8〜9度くらいで飲むのがちょうど良いそう。
Gruut Amber Ale アルコール度数 6.6%
深い色合いが美しいアンバーエールは、広く口の開いたグラスで飲むと香りをさらに楽しめます。甘い味わいが口いっぱいに広がり、それからビールの苦みが効いてきます。
Gruut Blondeアルコール度数5.5%
このビールは、門外不出のハーブミックスで作られているそうです。一番飲みやすい!
外の席では、バチェラーパーティ真っ最中。
「ここのビールは二日酔いしないからいっぱい飲めるんだ!」と未来の新郎も言ってました。
ベルギーで宴会ならここ! ちょっと変わっているゲントナンバー1のお店とは?
●グラスを飲み干すまで靴を預けるお店
De Dulle Griet(デ・デュレ・グリート)
http://www.dedullegriet.be/en/
次は、こちらのお店、デ・デュレ・グリート。
なんと350種類を超える種類のビールが飲めるベルギービールのセレクションでは、ゲントナンバー1のお店。
で。
このお店、なぜか靴の入った籠が店内にぶらさがっています。
なぜか、かたっぽだけの履き古した靴がいくつも。
引きでみるとこんな感じ。
下を見るとかたっぽ靴を履いていないお客がたくさんいます。
これは、MAX CHALLENGE (マックスチャレンジ)と呼ばれ、 1.2リットルの特大ビールを注文すると、飲み干すまで靴を片方預けないといけない決まり。
グラスが空になるまで、靴を返してもらえません。その昔、ビール代金の踏み倒し防止に靴を預かっていたという伝統があり、これを復活させたそうです。
籠に次から次へと靴が運ばれるところを見ると、チャレンジする人は相当たくさんいるようです。
MAX の値段は 10ユーロ。リーズナブルな値段も人気の秘訣。
私も’ここに来たからには’精神でチャレンジしましたが・・・周囲の皆様の協力を仰ぎつつ、5人がかりでやっと飲み干したほどの量でした。
ベルギーで宴会、ときたら、ここしかありませんよ!
もっとエレガントにビールを楽しむなら、ベルギー料理のレストランはいかが?
●和食を取り入れたベルギー料理とビールのマリアージュを楽しめるレストラン
Karel De Stoute カレル・デ・スタウト
http://www.restkareldestoute.be/
最後にご紹介するのは、エレガントなレストラン。
レイエ川の両岸に立ち並ぶ中世のギルドハウス(商工会が作った建物)を眺めながら、新進気鋭のシェフ、トマス・デ・ムイック氏のレストラン、カレル・デ・スタウトに向かいます。
Karel De Stoute カレル・デ・スタウト
若干31歳にしてスターシェフとなったThomas De Muynck氏。
彼は、伝統的なベルギー料理に和食素材を取り入れて、ヘルシーで繊細な料理を作ることで一躍知られるようになりました。
「一番力を入れているのは素材選び。日本やアジアの珍しい食材や調味料に心引かれ、たくさん取り入れるようになりました。抗菌作用のあるわさびを生の魚に添えるといった食の知恵からも学ぶことが多く、発酵食品である味噌やキムチにも興味をもっています。バターを減らし、カロリー控えめな食事ばかりです。ヘルシーにフルコースを楽しんでいただきたいと思います」
まるで一幅の絵のような彼の料理をご覧ください。
う、美しすぎる・・・・。ナッツとゴマのプチオードブル。
夏の食前酒として飲むビールは、なんといってもホワイトエール。リンゴとコリアンダーの香りが楽しめるヒューガルテンホワイトなら前菜からお魚まで気軽に合わせることができます。
海老とキノアの前菜。寿司仕立て。
ふわっとバニラの香りが漂う人参のソースが新鮮な海老に良く合います。
お寿司のようなプレゼンテーションが可愛いエビの前菜には、やはりホワイトエールのヴェデット・エクストラ・ホワイトや食前酒として選んだヒューガルデン・ホワイトにフランボワーズの果汁を加えて造られたヒューガルテンロゼがオススメです。ヒューガルテンロゼは日本でも購入できます。かすかな甘みと酸味がカクテルのような味わいで美味しいですよ!
タラのカルパッチョ。きゅうりとひじき、それに味噌アイスクリームを添えて。
一緒に食べていた人たちから思わず「おいしい!」という声が上がった絶品カルパッチョ。まるでビーズのように細かく刻まれたきゅうりと新鮮なタラのお刺身に、お味噌がふんわりと香るアイスクリームをあえて食べるとため息ものの美味しさ。ひじきやきゅうりの食感も合わせてちょっとした口内オーケストラを楽しめます。
さて、ここまでホワイトビールかロゼできましたが、いよいよメインのお肉。そろそろ重めのビールに移りましょう。
メインは豚肉のソテーバルサミコソース。仔牛のリードボーのコロッケ添え。
香ばしくローストされた肉に合わせて選ぶビールは、やはり香ばしいカラメル香が立つアヘル・ブライン、あるいはアベイ・デ・ロック・ブリュン。どちらもゴブレットで出てきます。ビールの複雑な香りを楽しみつつ、お肉を一口、ビールを一口と口の中で一緒に味わうと、それぞれの風味が引き立ちます。
最後のページでは、ベルギービールをよりよく楽しむための作法をチェック!
●ベルギーの食とビール
ベルギーでは「とりあえず生!」という注文は出来ません。ビールの銘柄で注文しなければなりません。丁寧に作られたヴィンテージもののビールを注文すると、お店の人が揺らさないように大事に運んできて、まるで宝物の入った箱を開けるようにそっと抜栓してくれます。その様子を見ていると、ベルギーの人たちがどれほどビールを大事にしているかよくわかります。
また、ブリュッセルを始め各都市には、ミシュランの星が燦然と輝くレストランがこの小さな国にこれでもか、というくらいたくさんあります。フランスより美味しいフランス料理を食べられる、と言われている美食の国ベルギーの魅力を引き続きご紹介していきます。
次回は、ルーヴェンへ。
*東京でもベルギービールを思う存分楽しめるイベント
ベルギービールウィークエンドが仙台で7月中旬、東京では9月に開催されます。
詳しくは→https://belgianbeerweekend.jp/
取材協力 オランダ政府観光局 ベルギー・フランダース政府観光局 KLMオランダ航空
井原美紀ブログ 旅に出よ!
http://ameblo.jp/surprise-enterprise/