「手の血管浮き」は加齢とともに皮膚が薄くなってくることや、脂肪の減少、血管の老化などが原因
実は、手は年齢が表れやすいパーツで、年齢を重ねるにつれて特に生じやすい変化が、血管が目立ってくること。
手は人から見られることが多い部分でもあるので、気になるものですが、これはどうして起こるのでしょうか?
「手の血管浮きの原因のひとつが、皮膚が薄くなってくることです。加齢に伴って、皮膚の真皮層の、ハリを保つ働きのあるコラーゲンやエラスチンが減ってくるので、肌の弾力が失われ、薄くなっていきます。
それに加えて、加齢とともに、血管との間でクッションの役割をしている脂肪も減少していきます。そのため、血管が透けて見えるようになって目立ってくるのです。
また、血管自体が変化してくることも原因のひとつ。
若い頃は血管自体に弾力があるので、内側から圧力がかかっても膨らまないのですが、年齢を重ねると血管壁が弱くなっていき、少しの圧力でも血管が膨らみやすくなります。
手の血管(静脈)には血液の逆流を防ぐ弁がありますが、この弁の機能も加齢とともに衰えやすくなるため、血液が鬱滞しやすくなって血管の圧力が増し、いっそう血管が膨れやすくなります。
このような複合的な原因で、手の血管が目立ってくるのです」(渡邊千春先生)
つまり、これは加齢現象なので、残念ながら誰にも起こり得ることです。
手の保湿、紫外線対策を心がけ、痩せすぎないように栄養をしっかりとるのが予防・改善のポイント
では、手の血管の目立ちは改善できるのでしょうか? まず、セルフケアでできることについて伺いました。
「肌のハリが失われないようにするために、まずはしっかりと保湿をしましょう。毎日、顔のスキンケアをするのと同じように、手もハンドクリームなどで保湿をすることを習慣に。
コラーゲンの産生を促すレチノイン酸のような成分が配合されたクリームなどを手に塗ると、よりよいと思います。
また、洗浄力が強い食器用洗剤を使って洗い物をしていると、手の油分が奪われて肌あれしたり、手がシワシワになりやすいので要注意。
洗い物をするときは、ゴム手袋をつけるようにしたり、なるべく食洗機を使うなどして手あれや手の乾燥を防ぎましょう。
洗い物のあとは、保湿を忘れずに。
手は紫外線対策を怠りがちな部分ですが、紫外線を浴びるとコラーゲンやエラスチンの劣化が進んでしまうので、日焼け止めを塗ることも習慣づけましょう。
痩せすぎないように気をつけることもポイントです。
痩せすぎると皮膚が薄くなって、脂肪も減るので、より血管が目立つようになってしまいます。脂肪は女性ホルモンの材料にもなるので、年をとるほど脂肪は落としすぎないことが大切。
極端なダイエットは避けて、タンパク質をはじめ、しっかりと栄養をとりましょう。
当たり前のことですが、健康でいることが若々しさと美しさを保つための最大のコツなので、バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動、入浴などを習慣にしましょう」
手の甲へのヒアルロン酸注入や、肌育注射などで目立ちにくくすることが可能
では、美容医療で改善するには、どのような方法があるでしょうか?
「手の甲の骨と骨の間の痩せている部分にヒアルロン酸を注入するのが効果的です。
ヒアルロン酸を注入することで、肌がふっくらするので血管が目立ちにくくなり、手が若々しい印象になります。
手は人によく見られる部分なので、手にヒアルロン酸注入をされる方は結構多いです。
また、肌の再生を促す成分を注入する肌育注射でも改善可能ですし、フォトフェイシャルで肌にハリ感を出すことでも血管を目立ちにくくすることはできます。美容皮膚科で相談してみましょう」
【千春皮フ科クリニックのヒアルロン酸注入(ボリフト)67歳女性の施術例】
BEFORE
AFTER
放っておくと、手の老化はどんどん進んでしまうから、まずはセルフケアを心がけて、若々しい手をキープしましょう。
【教えていただいた方】
千春皮フ科クリニック総院長。 1997年、板橋中央病院皮膚科医長。1999年、東京医科大学皮膚科勤務。2000年、東京医科大学皮膚科助手。2003年、肌クリニック大宮院長。2008年、 肌クリニック大宮 ベルビー赤坂総院長。2012年、千春皮フ科クリニック開院。2019年 、千春皮フ科クリニック広尾院開院。 保険診療と自費診療、両方に力を入れ、肌のことをしっかりと学んだ医師が美容皮膚科もやることで、トラブルがあったときにもきちんと対応ができ、保険も自費もトータルで肌の悩みに対応できることを大切にしている。皮膚科専門医、レーザー専門医、注入指導医。ボトックスやヒアルロン酸注入などのコンビネーション治療も得意。
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂