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人にはバレてしまう「美容医療顔」にならずに、うまく“お直し”するポイントは?

たるみやシワなど、ボトックスやヒアルロン酸注入、糸リフトなどでの“お直し”はもはやかなり一般的。でも、自分では気づかずに「美容医療やってるな」とわかる顔になっている人いますよね? そんな事態を避けて、ナチュラルに仕上げるには? そのコツを皮膚科専門医の慶田朋子先生に教えていただきました。

施術を受ける側もする側も、悩みのあるパーツだけピンポイントで見ていると、全体を引いてみたとき違和感が出やすい

頬だけが不自然にぷっくりと膨らんでいたり、顔の一部がまったく動いていなかったり、額や唇が膨らみすぎていたり…。こんな「美容医療顔」になっている人、あなたの周りにも少なからずいるのではないでしょうか? 有名人にも、結構多いですよね。

 

自分の意思で受けるものなので、自分で満足していれば問題ないとはいえ、「キレイ」とか「若々しい」と思われるより、「美容医療顔だな」と見られてしまうのは残念なもの。こうなってしまうのは何が原因なのでしょうか? 慶田先生に伺いました。

 

「顔のたるみやシワなど、気になる部分があると、鏡でどうしてもそのパーツだけを見てしまいがち。そして多くの人は、そこがピンポイントで気になった状態で、美容クリニックに駆け込みます。

すると、ドクターはそのパーツのお悩みを改善するための施術を提案し、それを受けることになります。その結果、そのパーツだけが変わるので、全体で見たときに不自然な仕上がりになってしまうことがあるのです。

ファッションでも、身につけているひとつひとつのものはおしゃれで素敵なのに、コーディネートとしては“?”という状態になっている人、いますよね?

やはり大切なのはトータルコーディネート。顔もそれと同じで、引いてみたときに美しいかどうかが大切です。

 

本来は、その人が気になっている部分をどうしたらキレイで違和感なく修正できるかを、ドクターが顔全体、さらに体型や雰囲気までを見てディレクションしなくてはいけません。

患者さんがいくらその施術を受けたいと言ってきても、その人に合わない施術だと感じたなら、なぜ合わないのかという理由と、どうすればもっとよい状態になるかをきちんと説明できるのがよいドクターです。

それができるドクターかどうかで、仕上がりはまったく変わってしまいます。

 

残念なことにお金儲けばかりを考えているクリニックも少なくなく、そういうところに行ってしまうと、患者さんの顔のバランスを一切考えず、この施術をすればもっとよくなると、いくつもの施術の提案をどんどんしてきます。

それを言われるがままに受けると、不自然な美容医療顔になってしまうのです。

 

特に注意しなければいけないのは、何の資格も持たないカウンセラーが窓口となっていて、ドクターでなくカウンセラーがその人におすすめの施術を決めるクリニックです。

そういうクリニックは、高額で不必要な施術をどんどんすすめてくることが多いので注意が必要です」

 

 

 

糸リフトや、ボトックスやヒアルロン酸の入れすぎなどに要注意

では、具体的にはどんな施術だと、不自然な美容医療顔になりやすいのでしょうか?

 

「どんな施術も、ドクターのセンスと技術次第ではあります。例えば、“糸リフト”のように物理的に皮膚を引っ張り上げる施術は、上手なドクターのもとで受けないと不自然な整形顔っぽい仕上がりになりがち。引っ張り上げすぎて頬の丸みが失われ、のっぺりした平たい顔になってしまうこともあります。

特に目や鼻の施術は、技術レベルが低いドクターが行って失敗すると、整形顔になりやすくなります。

それで修正したいからと別のクリニックに行って修正手術を繰り返すうちに、いっそう不自然な顔になってしまうことも。

 

それから、ボトックスをあちこちに注入しすぎると、顔の筋肉が動かなくなるので、表情に乏しい、能面のような顔になってしまいます。

また、ヒアルロン酸注入も実は特に高い技術が必要な施術です。一度にたくさん入れすぎて、そこだけが不自然に膨らんでいる人もいますし、注入したヒアルロン製剤が皮膚の緩みによって下がってきて、頬のトップが下がり、まのびした顔になっている人も多く見受けます。

 

痩せていて顔の脂肪の量が少ない人がピンポイントにヒアルロン酸を注入し続けると、そこだけが目立って、いわゆる“ヒアル顔”になりやすいですし、額や唇に必要以上のヒアルロン酸を入れて、過剰にボリュームアップさせてしまうことでも美容医療顔になりやすいですよね。

 

お金儲け主義のクリニックや、長期経過を診た経験のないドクターを選んでしまうと、全体的な仕上がりを考えず、たくさん入れられてしまうことがあります。

患者さん側も、一度受けると“もっと、もっと”とエスカレートしやすく、言われるままに注入してしまうようなドクターだと、不自然な仕上がりになってしまうので要注意です」

 

 

 

 

自然な仕上がりになるかどうかはドクターのセンスと腕次第。だからクリニックを慎重に選んで

では、美容医療を受けるときは、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか。

 

「ヒアルロン酸注入の場合は、一度にたくさん入れすぎないことです。

20代前半では1本(1.0ml)、30歳前後なら2本、30代半ば~40代では3本、50代以降でも4本を上限としておけば安心です。複数本使う場合も、広範囲に少量ずつ注入するべきです。

本来、ヒアルロン酸注入にはコラーゲンの産生を促す効果があり、注入してしばらくたつと肌にハリが出て自然にふっくらしてくるので、それも見越して適度な量を注入するのが正解。

ヒアルロン酸は一度注入すると1~2年はもちます。カニューレ針(鈍針)を用いて、皮下に傷を付けつつ、面状に細かく散らして注入するとコラーゲンの再生が最大化するので、3年たってもヒアルロン酸を入れるスペースがなければ、無理に追加で注入せず、4年後など、本当に皮膚がしぼんできたときに注入します。

自分の皮膚のコラーゲン貯金が増えていくので、ヒアルロン酸は一度にたくさん入れたり早いペースで入れる必要がないのです。

 

また、製材選択も重要で、膨らますタイプのヒアルロン酸製材には移動しにくいもの(二相性)と、流動性が高く移動してしまうもの(単相性)があります。

そもそも、年齢を重ねると、土台である皮膚のハリが失われて緩んでいるので、そんな状態のところに流動性の高いヒアルロン酸をピンポイントでたくさん注入するのは危険です。入れた直後はよいかもしれませんが、膨らんだ場所が次第に下がってたるんできてしまいます。

額がブヨブヨして目が重くなったとか、あごが魔女のように尖ってしまったとか、ひどい場合では、こめかみに注入したヒアルロン酸が口の横まで落ちてくることもあります。

 

こういった事態を避けるため、私が施術をするときは、まずはハイフ(超音波熱エネルギーの照射)で肌を引き上げたり、サーマクール(高周波RF)で肌を引き締めたりと、まず先に土台を補強することが多く、そのうえでまだしぼんでいる部分があれば、流動性の低い(二相性)のヒアルロン酸を注入するという方法をとります。

単相性のヒアルロン酸製材を用いる場合は、特に少量用います。この方法なら違和感なく自然にふっくらと仕上がるのです。

 

ボトックス注入の場合は、シワをまったくなくしてしまうと不自然になるので、たとえば目尻のシワを治療する場合、あえて2、3本の笑いジワは残すようにしています。

 

糸リフトは、いくら物理的に引っ張り上げても、余った皮膚がたるんでしまうので、不自然な顔になりがち。

糸リフトは、施術中の痛みも結構ありますし、ダウンタイムもあって腫れや内出血が起きることもあるので、美容医療初心者の方が第1選択にするのはおすすめしません。

まずは照射系か注入系の治療から始めるのがよいと思います。それだけでも十分に改善効果は期待できます。

 

つまり結局は、ドクターの美的センスと知識・経験・技術の総合力としての腕次第なので、クリニック選びが大切です。

そして美容医療を受けるときは、その施術の効果はもちろん、どんな方法でどれくらいの頻度で行うのかなど、ドクターにしっかり説明を受けましょう。

それに対して自信を持って説明ができるドクターを選ぶことが大切。心配なことは全部聞いて、ドクターから“ちょっと面倒くさい患者だな”と思われるくらいでいいと思います。

 

こういった点に気をつけながら、うまく美容医療と付き合っていってください。

ドクターのセンスと腕さえよければ、キレイに違和感なく自然に仕上がりますよ」

 

 

【教えていただいた方】

慶田朋子
慶田朋子さん
皮膚科医
公式サイトを見る

銀座ケイスキンクリニック院長。医学博士。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本レーザー医学会認定レーザー専門医。2001年、東京女子医科大学皮膚科助手、聖母会聖母病院皮膚科医員、美容クリニック勤務(兼務)。2006年、有楽町西武ケイスキンクリニック開設。2011年、 銀座ケイスキンクリニック開設。最新の照射治療と注入治療を組み合わせ、メスを使わずに肌質を高め、バランスのとれた若々しい顔立ちに変える治療が人気。著書に『女医が教える、やってはいけない美容法33』(小学館)などがある。

 

写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂

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