昨年、事務所のスタッフの親戚が偽札詐欺に遭いました。
新聞にも載った事件なのですが、被害額は200万円とのこと。さらに200万円を騙し取られそうになったのを未然に防ぎ、下っ端の犯人は捕まりましたが、お金は返って来なかったそうです。
その手口というのはこうです。
70代で一人暮らしの女性の元に、警察と名乗る男から電話があり、「偽札犯を捕まえているので協力して欲しい」と、銀行名をいくつか挙げ、「この中のどれかに口座を持っていませんか?」と聞かれたそうです。
それらの銀行名は、まずどれかには当たるだろうと思われる大手銀行ばかり。冷静に考えれば誰でも良かったということがわかりそうなものですが、その女性は自分が選ばれたような気持ちになり、それは大変だと男の話を親身になって聞きました。
男の頼みは、「◯◯銀行が扱っている紙幣に偽札が混ざっていないか調べたいので、10万円をおろして来てください。明日、お宅に部下を伺わせますから、その警察官に10万円を渡してください」と。
女性はわざわざバスに乗って、銀行まで預金をおろしに行き、警察官を名乗る若い男に10万円を渡しました。
翌日電話があり、「調べたところ、10枚中4枚が偽札でした。ご協力ありがとうございました。明日、10万円は本物のお札にしてお返しに上がります。ところで、そちらの銀行にはいくらお預けですか?」と残高を聞き、「さらに調べたいので、200万円をおろして来てください」と。
すっかり相手を信用した女性は、またバスで銀行まで行き、10万円と引き換えに200万円を渡してしまったのです。
相手は、この女性はまだ引っ張れると踏んだようで、「他にもこれらの銀行に口座はありますか? もしあればそちらでもおろして来ていただけますか? 3日後に取りに伺います」と。
たまたまこの日の夜、離れて暮らす娘から電話があり、女性は意気揚々と、警察に協力したことを話しました。
娘は直ちに詐欺だと気づき、警察に通報するよう言いました。
果たして、お金を受け取りに来た若い男は、待ち構えていた警察官に逮捕されましたが、ただの使い走りで、電話をして来た男にはたどり着けず、200万円は取り返せませんでした。
客観的にみれば、偽札の疑いがあるなら直接銀行に問い合わせれば良く、女性に協力を要請する必要などないことは明白なのですが、高齢者は「警察」という言葉に信用が厚いのと、人の役に立っていると思わせたこと、最初に10万円を返して信用させたことなどが、まんまと騙された原因だと思われます。
ちょうど『広報しんじゅく2/5号』の中に、「悪質商法に付け入らせない」という見出しで、下記の項目が書き出されていましたので、転記しておきます。
・儲け話には乗らない!
・勇気を出してはっきり断る!
・慌てて契約しない!
・不審な電話は相手にしない!
・個人情報を安易に教えない!
・周囲の人々の気付きと見守りを!
たとえば頼まれごとを断るとき、「いやです」「私には関係ありません」と言うと角が立ち、「冷たい人だ」「それでも人間か」と逆恨みされかねませんが、「それはそちらの事情ですよね?」と言うと、頼みごとをしている方が罪悪感を感じるため、「そうですよね。勝手を言ってすみませんでした」と諦めてくれやすくなります。
また、お人好しな方に多いのですが、相手の言葉をいいように解釈して、勝手に結論を出したり、誘導に対して迂闊に同意したり、相手を庇ってしまう人がいます。
何かトラブルがあっても、「そんなつもりなかったんだよね」「あなたも反省してるんでしょうから」「あの人は今、仕事が大変だから」「子供がいるから仕方ない」等々。
相手は反省している顔をして、内心では舌を出しているのかも知れません。
騙されるには、騙されるなりの理由があるのです。
いつか
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