“自分磨き”のための大人の手習い
Vol.10 【最終回】
女優の羽田美智子さんが、精神科医で禅僧の川野泰周さんに「すきま瞑想」についてお話を伺う本連載。ストイックなイメージのある瞑想ですが、川野さんが推奨するのはどこででもできる気軽な方法。その基本となるふたつの瞑想法を、羽田さんが体験しました。今回は、1つ目の「静座瞑想」についてご紹介します。
「静座瞑想」
別名「呼吸瞑想」ともいい、羽田さんのように坐禅を組んでも、椅子に座っても行えます。いつもは無意識に行っている呼吸に意識を向けて、あるがままを観察します。
"吸っては吐く"の繰り返し
を眺める感覚で
川野 瞑想とは「今、この瞬間」に意識を集中させて脳を休めること。SNSをはじめ、さまざまな情報にさらされている脳のケアをしてあげましょう。
羽田 どんな体勢でもできるというのがうれしいですね。でもいざ始めると、いろいろなことが頭に浮かんでしまって集中できません(苦笑)。
川野 呼吸を整えようとか無心になろうと努力する必要はないですよ。そのさまよった気持ちに気づいて、自分を許してあげるのです。よく気づいたねと。そしてもう一度、呼吸の観察をしようと頭の中で切り替えて、戻ればいいのです。気づいて戻す、この繰り返しが瞑想です。
羽田 つい、こうしなくては!という意識が働いてしまいますが、その言葉を聞いて気持ちが軽くなりました。
川野 その意識を手放すのも、瞑想の利点です。
羽田 呼吸の観察とは、どういうことですか?
川野 3回の深呼吸をしたあとは、深く吸おうとか長く吐こうなどとは考えず、鼻を通って出入りする空気に注意を向けるだけ。息を吸うと交感神経、吐くと副交感神経が働いて、意識的に呼吸するだけで自律神経のバランスがとれるのです。
羽田 疲れたときや気持ちが落ちたときに、ぜひ試してみたいと思います。どのくらい続けるといいのでしょうか?
川野 特に決まりはありません。私自身も診察の合間を利用して実践していますが、短時間でも頭がすっきり整いますよ。
次ページで、具体的な方法についてご紹介します。
林香寺の本堂で、本格的な坐禅を組む羽田さん。足を組み、上から糸でつられるような気持ちで背筋を伸ばし、右手の上に左手をのせて蓮の花のような丸い形を作り、丹田(へその下にあるツボ)の位置に。目は半眼にし、1メートル先に目線を落とします
人が受け取る情報の約75%は目から入るといわれます。半眼にすることで下方の一点に視野が収束します。ただし、外出先や移動中などは、目を閉じて行ってもよいでしょう
お話を伺ったのは…
Taishu Kawano
川野泰周さん
1980年生まれ。精神科・心療内科医。臨済宗建長寺派林香寺住職。RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。医学部卒業後、建長寺専門道場にて禅修行、2014年より上記寺院の住職に。寺務のかたわら、クリニックにて精神科治療に従事。薬物療法と並行して、禅やマインドフルネスの実践を含む心理療法を取り入れた治療に定評がある。『ずぼら瞑想』(幻冬舎)など著書多数
次回は、「歩く瞑想」をご紹介します。
撮影/宮本直孝 ヘア&メイク/木下 優(ロッセット) スタイリスト/坂本久仁子 構成・原文/向井真樹