新年おめでとうございます、水ソムリエ&飲泉師の竹村和花です。
日本には、新しい1年の始まりにふさわしい伝統的な行事や暮らしの文化が沢山あります。
今回は、1月にこそ楽しみたい新春の水文化や食文化について紹介していきます。
<お神酒 ―日本の水が生みだす美酒―>
日本の新年のお祝いに欠かせないものの1つに「お神酒」がありますが、この神様に捧げる日本酒の味を決める重要なファクターの中に水があります。
私の地元・関西には伏見(京都)と灘(兵庫)という2大酒処がありますが、醸造に使われる水(仕込み水)の性質から、お酒の味そのものも大きく異なることが知られています。
伏見の酒に使われる水は、カルシウムやマグネシウムなど硬度成分をほどよく含んだ中硬水で、比較的長い期間をかけて発酵させられます。
このまろやかな仕込み水のおかげで、伏見のお酒は酸味が少なく、きめ細かく滑らかで淡麗な風味を産み出すことから“女酒”と呼ばれてきました。
これに対し、灘の酒に使われる水には、酒酵母の栄養源となるミネラル分が多く含まれた硬水が用いられています。
そのため灘の場合お酒の発酵期間は比較的短く、味の方もやや酸の多い辛口タイプの酒となることから“男酒”と呼ばれてきました。
日本のお酒は、日本の水、日本の大地によって生みだされる奇跡の美酒といえます。
<七草粥 ―胃休めの食文化―>
さて慌ただしくも楽しい、年末からのお休み中に乱れてしまった食事や暮し時間のリズムですが、こうした生活時間や食事の乱れはストレス反応が出やすい臓器に影響を与えます。
この年末から続くお疲れ気味の胃を落ち着かせる胃休めの食文化が、七草粥(ななくさがゆ)です。
七草粥の七草とは、セリ・ナヅナ・ゴギョウ(ハハコグサ)・ハコベラ(ハコベ)・ホトケノザ・スズナ(カブ)・スズシロ(ダイコン)の7種のハーブ。
古くは早春にいち早く芽吹くことから邪気を払うとされ、無病息災を祈って食べられていたようですが、正月疲れが出はじめた胃腸の回復にはちょうどよいタイミングです。
一月七日に七草粥を食べるようになったのは江戸時代からのようですが、あっさりと仕上げたお粥はお正月料理の続いた後で、とても新鮮で食べやすく感じやすいもの。
お正月々ならではの胃休めの習慣として、暮らしの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。
七草には体調を整えてくれるさまざまな働きがあるとされていますので、代表的なものを紹介しておきます。
セ リ:鉄分が多く含まれているので増血作用が期待できます
ナ ヅナ:熱を下げる、尿の出をよくするなどの作用があります
ハコベラ:タンパク質が比較的多く含まれ、ミネラルそのほかの栄養に富んでいます。
スズナ(カブ):ジアスターゼが消化を促進します
スズシロ(大根):ジアスターゼが消化を促進します
<鏡開き ―鏡餅から新しい生命を頂く―>
お正月、神様に供えた鏡餅を下げる日のことを鏡開きと言います。
鏡開きは各地方によって違いがありますが、年神様がいらっしゃる“松の内”が明けた1月11日以降に行われています。
松の内を15日とする地方では、鏡開きは15日または20日に行われますが、京都では1月4日に行われます。
鏡開きの催事には、鏡餅から新しい生命を受けるという意味があります。
古より、お正月に神様は全ての人や物に新しい生命を与えるために現れると伝えられており、その年神様の霊力はお供えした鏡餅に宿っているとされてきました。
そしてこの鏡餅を食べることで、新しい生命をいただくことができると考えられたのです。
またお供えした鏡餅には神様の霊が宿っているので、鏡開きでは刃物を使わず木づちなどで叩いて割って(鏡を開く)、雑煮やお汁粉などにして頂くことが多いようです。
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<今月のおすすめ銘柄>
天然水ピュアの森
水源地は環境省認定 名水百選にも選定された長良川中流域。地下から汲み上げた水を非加熱ろ過で処理し、ボトリングしています。ラベルにはカルシウムやマグネシウムだけでなく微量ミネラル成分も表示されていて好感がもてます。微量成分の中にはマグネシウムが1.5mg(per.L)含まれていますが、飲み口はなめらかで、すっきりとした味わいです。今月は、日本のお正月々に相応しい日本の水をご紹介してみました。
【水タイプ】
産地泉源:日本/岐阜県
湧水温度:未
水タイプ:無発泡
知覚ほか:無臭/pH 非公開
ミネラル:ナトリウム:3.4mg,カリウム:0.4mg,カルシウム:8.5mg,マグネシウム:1.5mg ※日本国内での分析による(per.L)
<ショップ情報>
スーパーマーケット、リカーショップ、Amazonほかインターネットショップなど
【水ソムリエの飲み方レシピ】
日本の水は日本の食文化と深く結びついています。お正月の1月は、せっかくですので日本の美味しいお水を浸かって、おすまし汁や七草粥などを作ってみてはいかがでしょうか。またお鏡を頂く際にも普段とは異なるお雑煮にチャレンジするのも特別感があって良いかと思います。関東の方には関西の味噌仕立てを、関西の方には時には江戸風の雑煮をお試し頂ければと思います。水が生みだす季節感あふれる食文化を楽しんでいきましょう。