『やっぱり、それでいい。』著者インタビュー
細川貂々さん Tenten Hosokawa
1969年生まれ。漫画家・イラストレーター。セツ・モードセミナーを卒業し、1996年集英社『ぶ~けDX』でデビュー。子どもの頃から周囲 の人を観察するのが好きだった著者のコミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』『イグアナの嫁』はドラマや映画化も。ネガティブ思考から脱出し、自分自身を肯定できるようになる方法として近年注目されている「当事者研究」の、体験談をまとめた『生きづらいでしたか? 私の苦労と付き合う当事者研究入門』(平凡社)も、2月発売に
著者interview
今の自分を肯定すると、人とのかかわりが癒しに変わる
『ツレがうつになりまして。』や『イグアナの嫁』などのベストセラーを誇る細川貂々さんですが、実は10代の頃からネガティブ思考クイーンだったそう。
「なんとか抜け出したくてSNSでつぶやいたら、それを見たこの本の編集者から紹介されたのが水島先生でした」。水島先生は、「ダメだと思う自分も"今はこれでいい"と認めてあげて。肯定することで初めて人は前に進める」と目からウロコのアドバイス。 日々心がけることで、少しずつ前向きに考えられるようになったのだとか。「いちばん変わったのは、夜の体重測定。それまでは1gでも増えていようものなら、キーッとなるので、家族も『恐怖の時間』とびくびくしていたのですが、だんだんあれも食べたしこれも食べたし、理由があるのだから仕方ない、と思えるように」
ネガティブ思考を手放せるようになった貂々さん、2年前からはPTA役員(!)に。「もともと人を観察するのは得意。そういう点で、PTAは観察対象の宝庫です(笑)」人間関係が大変と聞きますが、つらくはないのでしょうか? 「確かにお母さんたちは自己肯定感が低い人が多いので、コミュニケーションのとり方が素直ではないですね。私は水島先生に教わったおかげで、『この人、すごく傷ついているんだ』と、自分の重荷にならない聞き方で聞けるので、大丈夫です」
自分を肯定できるようになると、人からも受け入れられるという好循環が生まれ、今では会議が紛糾したときの調整役として、なくてはならない存在に。「以前の私からは考えられない進歩ですよね(笑)。水島先生によると、積極的に人とかかわることがリハビリになるそうで、それは自分でも実感しています」
そこまで前向きに変わった貂々さん、これからは何を?「特別な資格がなくてもできる『当事者研究』という活動をやっていこうと。悩みを抱えている人たちの話を聞くことが、自分の癒しになる経験を知ってもらうことができるし、それを体験した私は、悩んでいる人に楽になってもらいたいですから」
最後に、毎日が充実していて楽しいと語る貂々さんから、読者の皆さんへ――。
「年をとるにつれてできないことが増えていくのに、自分を肯定できなかったらつらくなるばかり。大丈夫。私も変われたんですから、遅すぎるなんてありません!」
『やっぱり、それでいい。』 細川貂々、水島広子 著/創元社
1,200円
40年以上もずっと人の話を聞くのが苦手で、人との接触が怖かった著者が、精神科医の水島広子氏のカウンセリングを受け、今の自分を肯定 することからスタート。「人は何歳からでも変われる。変わろうとさえすれば!」を地道に実践した著者の姿に、思わず共感。
そのほかのおすすめの本を、次のページで紹介します。
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