こんにちは、水ソムリエ&水鑑定士の竹村和花です。
今年の冬は暖冬かと思いきや、イタリアでも-2℃の真冬日と3月のような陽気が週がわりで交差しています。
<水道水とミネラルウォーター>
水をテーマにお話をするとき、水道の水は暮らしの中で最も身近な水になります。
以前にも少しお話しましたが、実は水道の水を安心して飲むことができる国は決して多くはありません。
そこで、まず初めに水道水とミネラルウォーターの根本的な違いについてお話ししたいと思います。
【日本の水道水と日本のミネラルウォーター】※取材協力:奈良県水道局
日本の水道水は「水道法」をはじめ関連の法律や指針によって厳密に管理されています。
これらの法律は、水道水を飲んだ人に健康被害がないよう水道品質を維持するための検査項目と基準値(有害な物の規制)を定めています。
具体的には、大腸菌などの病原菌、カドミウムなどの重金属に化学物質。また、水をキレイにするプロセスで発生する消毒副生成物、色や味覚を大きく左右するものなど51の検査項目があります。
そしてこの中でカルシウムやマグネシウムの量(硬度)も、300mg/L以下と決められています。
これに対し「ミネラルウォーター(殺菌または除菌あり)」の検査項目(改定後、最大)は39項目。
同じミネラルウォーターでも「殺菌、除菌していない」ものについては16項目に簡略化されています。
また「ミネラルウォーター」として販売されている水の中にも、ミネラル成分が水道水以下のものもあります。
ですからミネラルウォーターを買う時には必ずラベルに書かれている「成分表」を見て頂きたいのです。
硬度が300mg/L以下であれば、ミネラルに関しては水道水と変わらない、ということになります。
「水道水かミネラルウォーターか?」という問いは、私の水講座でもよく質問される問いの1つです。
ですが、この答えは1つ。つまり「あなたは水に何を求めますか?」ということです。
「安全性」ということにこだわるなら、水道水は新鮮で雑菌による汚染もなく安全でお値打ちです。
「健康」にこだわるなら、ミネラル総量の多いボトルウォーターがおすすめです。
でも「地球環境」を考えれば、ペットボトルに入れた水を次々消費するなんて考えもの。
そして今、雨水や空気・土の環境汚染が取り上げられる時代を背景に、地下深水層から汲み上げた水が安心だと思う気持ちもよくわかります。
実際、東日本大震災時に福島の原発事故が発生した際には、厚生労働省や東京都が乳児に水道水を飲ませないよう対応を呼びかけました。
次ページに続きます。
私たちが普段当たり前にしている暮らしの中では、飲み水や調理用の水のほか、お風呂や洗顔などに使う水、洗濯やトイレに使う水など様々な水が使われています。
でもどんな水も、もとをたどれば空から落ちた一粒の雨であり、どんな暮らしもこの自然現象の上にあるのだということを意識して頂きたいと思います。
私はよく「水は手軽なスーパーフード」と説明しますが、そういう水はミネラルが沢山含まれている水で、日本なら温泉(飲泉)と変わらないほどの成分を含んでいる水タイプです。
【イタリアの水道水とミネラルウォーター】
それでは、今日は最後に少しイタリアの水道水とミネラルウォーターについて紹介したいと思います。
イタリアの場合、人が口にできる飲料水の基準は政令(Decreto Legislativo 2 febbraio 2001 n.31)によって決められています。
私のいるフィレンツェ市やトスカーナ州では「水道水を飲もう!」という取り組みが盛んで、州人口の約45%が水道水を飲んでいます。でもイタリア全土で安全な水道水が飲めるのか?というとそうではありません。
残念ながら水道水の品質においては日本ほど恵まれておらず、イタリアでは水道水に含まれるホウ素やフッ素の量が多すぎて幼児や子どもに水道水を飲ませることを禁止している州や市町村もあります。
また日本では0.01mg/L以下に規定されているヒ素も、EUでは20ug以下まで認められています。※欧州委員会/指令98/83/ECによる
こういった水事情を含めて、イタリアは世界1のミネラルウォーター消費国となっています。
裏を返せば、水道水質に恵まれないからこそ、水への意識も、水と健康に対する意識もとても高いのです。
ちなみに、イタリア国内で流通しているミネラルウォーターの数は200~300種類。
写真はフィレンツェ市内にある水道水源の1つで、私の家から徒歩15分くらいの場所にあります。
次回は『おいしい水とカラダに良い水』をテーマにお話ししたいと思います。
<2月のおすすめ銘柄-2>
Evian(エビアン)
8世紀から続くフランスの名門ミネラル水。硬度304mg/Lの天然水です。味にはややエグ味がありますが、硬度やpH値から言えば日本の水道水の規定値に最も近い水です。実際に日本の水道水と飲み比べてみると、硬度だけで水の味を判断できないことがよく分かるミネラルウォーターの1つでもあります。
【水タイプ】
地泉源:フランス/エビアン・カシャ水源
発 泡 性:無発泡のみ
湧水温度:記載なし
知覚ほか:やや個性的なエグ味,無色/ pH7.2
ミネラル:ナトリウム6.5mg,カルシウム80mg,マグネシウム26mg,カリウム1mg,塩化物8.8mg,硝酸塩3.7mg,重炭酸360mg,硫酸塩12.6mg,二酸化ケイ素15mg※フランスにおける分析結果(per.L)
【水ソムリエの飲み方レシピ】
水の味のおいしさは硬度では計れません。そのことが一番よく分かるのがエビアン。微妙なエグ味は、水に溶け込んだ様々なミネラルが作りだす個性です。飲みにくいと感じる方はカプチーノなどを作る水として使ってみて下さい。日本の水を使って入れるコーヒーよりも苦味が取れて、まろやかな味になります。
<ショップ情報>
AEON,コンビニ,インターネットのショップ,アマゾンなどの飲料水コーナー