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病気の回復が遅い人は十分な睡眠がとれていない/根来秀行教授が「うつと睡眠」を解説①

ハーバード大学医学部客員教授・根来秀行さんに聞く、最新睡眠医学から心身にアプローチする方法。連載担当Dr.根来番のぐうたらライター・いしまるこがインタビューします。

 

根来秀行さん 医学博士 いしまるこ ライター

根来秀行さん
Hideyuki Negoro

1967年生まれ。医師、医学博士。ハーバード大学医学部PKD Center Visiting Professor、ソルボンヌ大学医学部客員教授、奈良県立医科大学医学部客員教授、杏林大学医学部客員教授、信州大学特任教授、事業構想大学院大学理事・教授、社会情報大学理事。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。本連載から生まれた『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業「毛細血管」は増やすが勝ち!』『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』(ともに集英社)が好評発売中

 

いしまるこ

いつまででも寝ていたいぐうたらライター。寝つきが悪く、つい夜更かしして、朝からどんよりしがち

 

病気の回復が遅い人は睡眠がとれていない

いし 根来教授は、睡眠医学にもいち早く取り組まれたんですよね。

 

根来 僕の研究人生の第一歩です。1993年に医者になったあと、東大病院研修医、日赤医療センター内科勤務を経て、96年に東大の大学院に入ったんです。研究テーマを考えているとき、睡眠ホルモンのプロスタグランジンD2を研究している教授に「一緒にやらない?」と声をかけられまして。

 

いし ナンパ、じゃなくてスカウト!

 

根来 当時、大学院生でしたが外来も任されていて。患者さんたちの生活習慣をいっぱい聞いていく中で、病気がなかなか改善しない人は、睡眠が十分とれていないことに気づいたんですよ。

 

いし 不調の陰に不眠あり、と。

 

根来 僕自身、10代から野球やテニスをやっていたんですけど、7時間睡眠をとっていないと、なんとなく感覚に微妙なズレがあって試合に負けたり、勉強でも露骨に集中力が欠けてしまう。そんな体験もあって、睡眠は健康やパフォーマンスに深く関係しているんじゃないかなと薄々思ってはいたんです。

 

いし ティーンでそんな分析を…。

 

根来 それで睡眠ホルモンの基礎研究を始めたわけですが、当時、プロスタグランジンD2は血管内では悪者候補にもされていまして。というのも、動物実験で動脈硬化を起こして血管の詰まった箇所を調べると、プロスタグランジンD2を作る合成酵素がたくさん見つかるんです。

 

Dr.根来は実験上手!

 

いし プロスタグランジンD2が悪さをして、血管を詰まらせている?

 

根来 そういう研究もありました。ですが、プロスタグランジンD2は、ノンレム睡眠を誘発し、深い眠りに誘うホルモンです。睡眠がとれている人は動脈硬化などの病気が少ないということも、臨床経験的にわかっていました。なので、僕はひょっとして逆じゃないかと思って、細胞の核内にあるNFカッパーBに着目したんですよ。

 

いし カッパ??

 

根来 NFカッパーBは、体の中で炎症を起こして病気を起こすことにもかかわる細胞内の物質で、活性酸素や、新型コロナで知られるようになったサイトカインストーム(免疫の暴走)の源流ともいえます。プロスタグランジンD2がNFカッパーBを制御して炎症を抑え、動脈硬化を防いでいるのではないかと思ったわけです。それがビギナーズラックでみごとにハマった。

 

いし 読み通りだったわけですね!

 

根来 血管を詰まらせる物質が血管の壁に集まると、それに対抗してプロスタグランジンD2が作られていたわけです。こうした健康維持に不可欠なホルモンの多くが、睡眠中に分泌され、全身の細胞の再生が行われる。睡眠はただの休息ではなく、細胞の再生工場という積極的な役割があるんですよ。

 

 

Dr.根来は実験上手!
睡眠ホルモンの合成酵素がザクザク

当時、困難とされていたプロスタグランジンD2を作り出す合成酵素を増やすことにも成功。大量にできた合成酵素でさまざまな研究を行なっていたそう。動脈硬化を起こした犬の毛細血管の細胞に注入する実験では、動脈硬化が治った!

 

根来秀行さん 医学博士 皆さん今日も素敵な一日を!

 

 

撮影/角守裕二 イラスト/浅生ハルミン 取材・原文/石丸久美子

※ 次回は根来先生に、心が鬱っぽくなっている人は、睡眠が乱れているというお話を伺います。

 

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