「何故か手がしびれる」「指の関節が痛い」「だんだん変形してきた気も」……。そんな手の不調が気になって病院を訪れると
「年のせいです」「使いすぎですね」「治らないです」
などと診断されてしまうケースがあります。
「高齢なほど罹患している人が多いと研究発表されていたため、関節症は年齢と関係があると考えられていたのです。しかし、この研究は罹患者が占めている割合を示したもので、発症時の年齢ではないことに落とし穴があります」とは、四谷メディカルキューブ 手の外科・マイクロサージャリーセンターの平瀬雄一先生。
「歳を取ったからといって、全員の手に不調が起こるわけではありません。また、右利きなのに左手だけに痛みが出るなど、『使いすぎ』も納得のいく理由にはならないわけです。では、症状が出る人と出ない人の違いは?というと、ほとんどの人が女性ホルモン(エストロゲン)が大きく変動する時期に発症していることにありました。変性疾患の患者さんは9割が女性、さらにその90%が更年期以降の女性というデータがあります」
つまり、手の不調は数多くある更年期症状のうちのひとつ。エストロゲンは受容体と結合して初めて作用するものですが、この受容体が関節や腱などを覆っている滑膜にも存在しています。
「そのため、エストロゲンの急激な変化が滑膜にも影響を及ぼし、関節や腱が腫れて腱鞘炎に。あるいは腱が腫れれば神経を圧迫するので、手にしびれが出る手根管(しゅこんかん)症候群に。さらに関節を慢性的に引っ張るため、関節軟骨が削れて変形が起こるなど、手指の代表的な疾患につながっていたのです」
OurAgeでは、私たち世代が知っておくべきテーマとして「手の不調」について今まで何度か取り上げてきました。2019年の人気記事ベスト2にランクインした「更年期「5つの不調」の最新処方箋」の連載では、手のトラブルを5回に分けてご紹介。指を曲げる腱にトラブルが起きる〈ばね指〉、指を伸ばす腱のほうにトラブルが起きるのは〈ドケルバン病〉、その他〈手根管症候群〉など、6つの主な変性疾患について解説した回もあるので、ぜひ今一度チェックしてみてくださいね。
今、私たち自身が出来る予防策とは⁉
さて、更年期の不調対策として、ここ数年注目が集まっている成分『エクオール』は、手の不調にも効果があるのではないか、と期待されています。
「エクオールは大豆イソフラボンが腸内細菌によって変化した代謝物で、エストロゲン受容体とくっついてエストロゲンのように働く作用が認められています。そこでエクオールを治療に役立てるという代替療法が注目されていますが、日本人の半分はエクオールを体内で作ることが出来ないとされています」
では、手指の疾患になりやすい人はエクオールを作れない人たちなのか、エクオール以外に共通点はあるのか、400人を対象に検査したのだそう。
「その結果、エクオール産生値が低いと、そうでない人に比べ1.7倍ほど手外科疾患に罹患しやすく、さらに更年期の年代にはその傾向が顕著になること」
「また、お母さん、おばあちゃんなど家族に罹患者がいる人もそうでない人に比べ、48.1倍も関節症になりやすいことがわかったのです」
これには、受容体の活性や数などによる〈エストロゲンの影響の受けやすさ〉も関係している可能性が考えられるとのこと。
「保険診療は、病名がつかないと治療が出来ません。しかし、病気はいきなり発症するわけではありませんから、予防がとても大事です。手が変、こわばる、と感じている人は、早めに自身で出来る予防を始めるといいですね。痛みやこわばりなどの自覚症状が出てから手指が変形してしまうまでには7〜10年のタイムラグがあります。この期間に、適切な治療を始めることが肝心です」
50代になったら手指の不調への予防としてできる、3つのこと
1.まずは自分がエクオールを作れるのか検査を。
調剤薬局や一部の病院などで取り扱っていますが、郵送検査キット「カラダチェック」を利用するのも簡単でお手軽。
2.お母様やお祖母さまなど家族の手を見て家族歴がないか確認。
3.そして早速、毎日のエクオール補充を始めましょう。
十分な量を摂取するには、食事から…より、サプリを利用するのが確実です。
「市販されているエクオールのサプリのうち、大切なのはイソフラボンではなくエクオールを1日10mg以上摂取できるものを選ぶこと。また、既に手指が曲がっている、痛みがあるという人は、すぐに手外科専門医に相談してください」
日本手外科学会のホームページには全国の手外科専門医の名簿が掲載されています。女性の手疾患に理解のある、近所の専門医を探すのに役立ててみてはいかがでしょうか?
取材・文/佐藤素美