「こむら返りはおもに、ふくらはぎの筋肉が異常な収縮を起こし、痙攣(けいれん)を起こした状態のことです。医学用語では『有痛性筋痙攣』と言います。多くは激しい運動や長時間の立ち仕事など、脚を酷使したときに起こりますが、40歳を過ぎた頃から、寝ているときに突然起こることがあります」(武田淳也先生)
夜中のこむら返り4つの原因
「就寝中に起こる理由は、運動不足などで年齢とともに筋力が落ちたところに、電解質(イオン)バランスのくずれ、冷えて血流が悪くなるなど、複数の原因が重なることで起こると考えられます」
誘因1
電解質(イオン)バランスのくずれ
私たちの筋肉は、巧みな電解質バランスによって動いています。電解質とは水などの溶媒に溶かした際に、陽イオンと陰イオンに電離する物質のことで、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、クロールなどがあります。
「中でも、筋肉の収縮や弛緩など、正常な働きを保つことに関わるのが、マグネシウム(筋肉を弛緩させる)、カルシウム(筋肉を収縮させる)。また、神経伝達や細胞の浸透圧の調整に関係しているのがカリウムやナトリウムです。これらの連係プレーにより、筋肉は動いているのです。
通常はちょうどいいバランスに調整されていますが、睡眠時は汗を多くかくため、体は脱水傾向になります。すると、特にマグネシウムとカリウムは汗とともに排泄されてしまうので、電解質のバランスがくずれます。これが原因のひとつと考えられます。
誘因2
慢性的な運動不足
年齢とともに体を動かすことが少なくなっていませんか? 筋力の低下も大きな誘因のひとつです。
また、こむら返りの多発地帯であるふくらはぎは、第二の心臓とも言われ、動かしていないと、体全体の血流やリンパの流れが滞ります。すると乳酸などの疲労物質が排出されにくくなることも、こむら返りの誘因になります。
誘因3
冷え・血行不良
運動不足による血行不良に加え、足元の冷えにも注意が必要です。夏場に冷房をつけたままや布団をかけずに寝る、もしくは冬場の寒さなどで、足元が冷えると血管が収縮します。するとさらに血流が悪くなります。そこに寝返りなどで、筋肉に刺激が加わることで、過剰な筋収縮が起こるのです。
誘因4
ほかの病気
起こる回数が多いようなら、ほかの病気を疑ってみましょう。例えば、多いのが腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどの腰の病気。ほかに甲状腺の病気、糖尿病、腎不全、動脈硬化症などが考えられます。
腰痛、手足のしびれ、むくみがあったり、言葉がもつれるなどの症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
痙攣中の応急処置
つったときは悶絶するほどの痛みに襲われます。まずは痛くても下記の方法で対処しましょう!
ふくらはぎがつったときの対処法
足のつま先をつかんで手前にひっぱります。かかとを突き出すようにして足裏を反り返し、ふくらはぎをゆっくり伸ばします。
すねがつったときの対処法
つったほうの膝を曲げ、後ろ手に足の甲をつかみ、ぐっと体に引き寄せて、すねの部分を伸ばします。
土踏まずがつったときの対処法
両手の親指の腹で、土踏まずの部分をまんべんなく押していきます。指に力が入らない人は、左右の親指を重ねて行います。
予防と再発防止にはこれが必須!
しばらくすると痛みはなくなりますが、癖になる場合もあります。こむら返りを起こさないための予防と再発防止のために、日頃から気をつけたいことは以下のとおりです。
●スポーツドリンクなどでミネラル補給をする
●こまめに水分補給をする(特に飲酒時は水も飲んで脱水症状を防止)
●寝る前にふくらはぎのマッサージやストレッチをする
●入浴や服装、寝具などで、体が冷えないようにする
●バランスのよい食事を心がける(ミネラル不足に注意!)
●締めつける靴を長時間はかない(ハイヒールなど)
●十分な睡眠をとり、疲労をためない
特にマグネシウムとカリウムが大事!
汗をたくさんかいたときに不足しがちなミネラル、マグネシウムとカリウムを意識して摂取しましょう。
マグネシウム
筋肉を緩める作用があります。
多く含む食材/大豆、納豆、木綿豆腐など。
カリウム
神経伝導に関わり、筋肉を正常に保つ作用があります。
多く含む食材/バナナ、メロン、トマト、ミカンなど。
漢方薬を味方につける!
漢方薬では、鎮痛作用のある「芍薬(しゃくやく)」と、抗炎症作用のある「甘草(かんぞう)」を含む「芍薬甘草湯」が効果的です。10分くらいで効いてくる速効性があります。ただし、甘草はカリウムを下げ、血圧を上げるので、高血圧の人は要注意。継続的に服用しないほうがいいでしょう。甘草が入った漢方薬を服用するときは、上記のような生野菜や果物などカリウムを多く含む食べ物を意識してとるようにしましょう。
ほかに、甘草を含まない「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」を処方されることがあります。
日頃からアキレス腱ストレッチを!
ストレッチでおすすめなのが、アキレス腱伸ばしです。一日の終わりにしっかり伸ばして就寝しましょう。
片手を椅子の背などに置き、片脚を大きく後ろに引き、もう片方の脚の膝は軽く曲げます。引いたかかとを床につけ、上体の重みをかけるようにして、ふくらはぎを気持ちよく伸ばします。このとき、かかとから頭までが一直線になるようにするのがポイントです。
反対の脚も同様に。これを左右各5~6回ほど繰り返します。
いかがでしたか? 就寝中のこむら返りを繰り返す人は、日頃の生活習慣を見直すことが大切のようです。
【教えていただいた方】
「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力
イラスト/かくたりかこ 構成・文/山村浩子