(PHOTO/Matthew Halmshaw on unsplash)
普段眠っている間に何気なくしている、寝返り。
実は、汗をかく、排泄するなどと同じ生理現象のひとつで、睡眠中に「体液を循環させる」「体温を調節する」「姿勢のリセット」という3つの重要な役割を担っています。
そして寝返りにも理想的で適度な寝返りとそうではない寝返りがあることを、前回、整形外科医の山田朱織先生と睡眠専門医の坪田聡先生から教えていただきました。
「適度な寝返りは自分に合った寝具から」(山田先生)として枕とマットレスの大切さを、特に枕については「高すぎると首が曲がってしまうし、低すぎると頭が落ちてしまう。上を向いたときに首に負担を感じない高さ、そしてフラットで寝返りをしやすいことが大切」(坪田先生)とのお話が。
そこで今回は、自分に合った枕の選び方を具体的にご紹介します。
◆枕を選ぶときに大事なのは呼吸のしやすさ、首・肩・顔への圧迫感がないこと
まず実際に枕の上に頭をのせて横になってみましょう。
そのときに「上向き」「横向き」のふたつの姿勢で、下の内容をチェックしてみて。
〈上向きになってココをチェック〉
「上向きになり、喉が苦しいと感じることなく呼吸ができるか、首筋が緊張しないかなどを確認します。枕に上向きで頭をのせたとき、首と床の角度が15度前後になっていれば、首の骨の並びが真っすぐになり、ひいては体によい状態になります。
枕の高さはわずか5㎜の差で、喉が苦しくなったり首筋が緊張したりといった不快な症状が出てしまうので、細やかにチェックしましょう」(山田先生)
〈今度は横向きでココをチェック〉
「横向きになったら、肩や顔に圧迫感がないか、首筋が突っ張っている感じがしないかを確認していきます。体の真ん中の軸がマットレスと平行になっているのがよい状態です。
もし枕が枕が合っていないと感じたら、高さを5㎜単位で足したり抜いたりしてみてください。
高さが足りず頭が下がってしまい、肩への圧迫が強くないか。
逆に枕が高くて頭が上がってしまい、顔が圧迫されていないか。
これらを確認しながら、調整していきましょう」(山田先生)
◆枕を選ぶときは頭をのせるだけではなく、そのまま寝返りも打ってみて
〈最後は寝返りをしてチェック〉
「枕を選ぶときに頭をのせてみたという人はいても、寝返りまでしてみたという人はほとんどいないのではないでしょうか。
この寝返りを打ってみることがとても大事。
枕を試すときは、必ず下の方法で何度か寝返りをしてみてください」(山田先生)
①胸の前で両手をクロスする
②膝を60度くらいの角度で立てる
③マットレスにしっかりかかとをつける
④左右にコロコロ寝返りを打ってみる
「体全体が同時に動いて、軽い力で簡単に寝返りできれば、それは”いい寝返り”。つまり枕が体に合っているということ。
逆に、腰のひねりが出て負担を感じたり、動きが重く力が入ったりしてしまう場合、その枕は合っていません。
先ほどお話ししましたが、枕はわずか5㎜の差でも体に与える影響に違いが出てくるので、丁寧に細かく調整していきましょう」(山田先生)
また「気づくと枕の下に手を入れている、なんて人は枕の高さが合っていない証拠。適正よりも低いと思われるので、高さを足してみて」(坪田先生)というアドバイスが。
こうしてついに自分に合った高さがわかったら、枕探しはゴール!
…と喜びたいところですが、ほかにもまだ大事なことがあるのだそう。
(PHOTO/Ruby Schmank on unsplash)
「年齢とともに体格や骨格が変わることがあります。
そのときに調整しやすい枕であること。
また人間は睡眠中、一晩にたくさん汗をかきます。
その汗が表面の素材に吸収されていくうちに素材が傷んできますから”メンテナンスのしやすさ”も備えていればなおいいです」(山田先生)
「凹凸やカーブがある枕は寝返りが打ちにくい。表面が平らで軽い力でコロコロと動けるものがよいです」(坪田先生)
と、高さ以外にも大事な条件が。
そのおもなものは、まとめると次のとおり。
〈高さ以外にまだあった! これが理想の枕の条件〉
・適度な硬さがある(柔らかすぎると頭が沈んできてしまうため)
・一定の高さを一晩中維持できる(頭をのせているうちに沈んでしまうと、適正な高さではなくなるため)
・表面が平ら(寝返りが打ちやすい)
・メンテナンス可能(枕がへたったときや汗で表面が傷んだときに)
「高さが合っていて、なおかつ上の4つのポイントを押さえた枕なら、快適に眠れるだけでなく、睡眠中にさまざまな不調を自然に改善へと導くことができると思います」(山田先生)
「OurAge世代の悩みのひとつ腰痛も、枕の高さが合っていれば、あお向けに寝たときに腰への負担を減らすことができます」(坪田先生)
〈教えていただいた方〉
1963年生まれ。雨晴クリニック院長。睡眠専門医として30年以上現場に立ち続ける。日本睡眠学会に所属。ヘルスケア・コーチング研究会代表世話人も務める。医師として診療にあたるうちに、睡眠障害がほかの病気の発症や経過に深く関係していることに気づき、睡眠障害の治療を開始。その後治療から予防に重点をシフトし、睡眠の質を向上させる指導や普及に尽力。2005年に生涯学習開発財団認定コーチを取得。『女性ホルモンが整う オトナ女子の睡眠ノート』(総合法令出版)ほか著書多数。
取材・文/倉澤真由美