知っておくべき睡眠メカニズム
まずは仕組みを理解することから!
私たちはどうして眠らなければならないのでしょうか? その重要な役割を理解して、睡眠の質を高めることに積極的に向き合うことが大切です。
睡眠は体のメンテナンス時間
「睡眠の最も重要な役割は、脳と体を休ませ回復させることです。特に起きている間、目まぐるしく活動している脳の疲れを取るのは睡眠しかありません。きちんと眠ることで、認知症に深く関係するアミロイドβなど、脳の老廃物を除去したり、情報を整理して、記憶を定着させる役割もあります。ほかにも、細胞や臓器を修復してくれる成長ホルモンの分泌を促し、免疫力を高めたり、ストレスを解消します」
重要なのはメジャースリープ!
「眠りはじめると間もなく、徐波睡眠と呼ばれる最も深いノンレム睡眠に入ります。その後は、レム睡眠→ノンレム睡眠と、深さと役割の異なる眠りを4〜5回ほど繰り返し、浅いノンレム睡眠が徐々に増えて目覚めます。このセットをひと晩で確保することを『メジャースリープ』と言い、これこそが病気にならない質のよい睡眠です。正しいサイクルであれば、6〜7時間は必要だと考えられています。ただ長いだけでも、深い睡眠だけでも十分ではないのです」
メジャースリープ
繰り返す睡眠の波の中で注目したいのが、寝はじめて最初の3時間に現れる最も深いノンレム睡眠(徐波睡眠)。徐波睡眠は脳の温度を効率的に下げ、睡眠の質を高めます。音や照明、トイレなどに気を配ってから布団に入りましょう
ノンレム睡眠・レム睡眠の特徴
ふたつの睡眠を夜間に繰り返すことで脳と体のメンテナンスが完了。睡眠時間が短いと修復は途中で強制終了に
快眠のカギはホルモンと深部体温
「体内時計の働きによって、眠りに入る2時間ほど前から、眠気をもたらし睡眠を維持するホルモンであるメラトニンが分泌されます。続いて脳の温度や血圧、心拍数が下がっていくことで眠りに入ります。そして朝が近づくにつれメラトニンは減り、脳の温度が上昇して自然な起床となります。このメラトニンの分泌を正しく促すには、日中に太陽光を浴びて、規則正しいリズムで活動することが大切です」
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授、日本睡眠学会理事。 睡眠薬の臨床試験ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者などを歴任
イラスト/東 千夏 構成・原文/高田あさこ