手術ができない【前編】

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 1968年生まれ。日本語教師を経て、ノンフィクション作家に。2012年『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(集英社)で第10回集英社・開高健ノンフィクション賞を受賞。他に『駆け込み寺の男 ―玄秀盛―』(ハヤカワ文庫)、『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(早川書房)など

PHOTO©Hayakawa Publishing Corporation

本腰を入れて病気を治そうとすると、以前行った産婦人科は電車を乗り継いでいかねばならず、通うのが大変だ。処方された薬がからだに合わなかったのも、なんとなく遠ざかる理由となった。そこで、今度は地元の産婦人科に行くことにした。これで薬が合わないときも、気軽に相談に行ける。

 

 

「貧血がひどくて、とにかくそれを何とかしてほしいんですよ」
そう医師に訴えると、さっそく精密検査をしてくれた。

 

 

二週間後に結果を聞きに行くと、「卵巣嚢腫がありますねえ」と告げられた。これは前の産婦人科では見つからなかった病気だ。悪性のものではないらしく、医師の声も心なしか明るい。

 

 

直径7センチほどに成長しているという。もう少し小さければ、おなかのなかに入れておいてもかまわないのだが、これぐらいの大きさになってしまうと手術の必要があるそうだ。先天性のものらしく、長男を生んだときには、すでに卵巣にあったのではないかということだ。

 

佐々さん_photo

 

 

右の卵巣が腫れているのは、画像にはっきり写っている。まったく自覚症状はないし、若いころからおなかのなかにあったというのに今までこれが原因で腹痛を起こしたこともない。このままにしておいてもかまわないような気がしたが、医師は「放っておくと、茎捻転(けいねんてん)を起こして緊急手術などということもあります。この機会に取ってしまいましょう」と力説する。長期の出張も多いので、やはり、手術しなければならないか。

 

 

この医師の治療方針は、①卵巣、子宮とも残したまま、②患部のみの切除をしましょう、というマイルドなものだった。

 

 

彼は卵巣と子宮の絵を書くと、右の卵巣をぐるっと線で囲んで説明する。わたしはそれを神妙な気持ちで見つめていた。自分のからだの中に入っている臓器にもかかわらず、卵巣というものの存在をまったく意識したことがなかった。卵巣って、こんな形をしているのか。

 

 

このなかに、人体のかけらである髪の毛や歯が入っていることもあるのかと思うと、つくづく不思議だった。

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