子宮筋腫のできる原因や検査方法など、意外にわかっていない16の疑問に医師が回答します。
Tips1
子宮筋腫ができる原因は?
はっきりと原因は解明されていませんが、女性ホルモン「エストロゲン」によって大きく成長するため、できる原因にも深く関与していることは確か。
遺伝も関係していることがわかってきました。
Tips2
子宮筋腫ができやすい人とは?
初経年齢が早い人、妊娠・出産回数の少ない人。人種では黒人が最もできやすく、次いで黄色人種、白人の順。
さらに、栄養、生活習慣などの環境要因がかかわることも解明されてきています。
Tips3
子宮筋腫って遺伝するの?
子宮筋腫には複数の遺伝子異常がかかわっていて、遺伝的要素があることが最近、明らかに。
一親等以内に子宮筋腫がある人がいる場合、その発生頻度は約2.5倍になるとされています。
Tips4
子宮筋腫は悪性化しない?
子宮筋腫である限りは、良性のコブなので、ほぼ悪性化することはないといわれます。
ですが、八田真理子先生は、筋腫が変性を起こし、悪性腫瘍になったケースを診ているそう。検診は大切です。
Tips5
子宮筋腫の検査方法は?
内診(触診)、経腟エコー(超音波)検査、貧血検査(血液検査)。大きな筋腫や手術を考える場合には、MRI検査による画像診断も。
また、ほかの病気が疑われる場合は腫瘍マーカー検査も。
Tips6
子宮筋腫の見つかり方は?
見つかるタイミングは、多い順に
- ❶子宮がん検診をはじめとする検診時に
- ❷貧血を指摘されて
- ❸過多月経でも特に経血にレバー状の塊が出て
- ❹過多月経で
- ❺膀胱が圧迫されたため頻尿になって。
Tips7
子宮筋腫の進行スピードは?
子宮筋腫の成長する速度は、人によっても時期によってもまちまち。
短期間で大きくなったり増えたりすることもあれば、20年たってもさほど大きくならないという人もいます。
Tips8
子宮筋腫は再発する?
筋腫のみ摘出した場合、再発の確率は高いようです。
小さすぎて取りきれない場合や、小さな芽のようなものまでは摘出できないので、多発性(下Tips10)の場合の再発率は100%に近いといわれます。
Tips9
不妊との関係は?
子宮内腔に向かって成長する粘膜下筋腫や、内腔の形を変えるほど大きな筋腫があると、受精卵が着床しにくいといわれます。
また、できる位置によっては卵管口〜卵管を圧迫してしまうことも。
Tips10
多発性の子宮筋腫とは?
単独のこともありますが、数個から数十個が同時にできるのも普通。多数の筋腫ができることを多発性子宮筋腫といい、6〜7割の人が多発性。
対馬ルリ子先生の患者の中には、50個以上できていた人も!
Tips11
大きさ何㎝で手術?
大きさで手術が決まっているわけではありません。ほとんど症状がなければ、経過観察でよいこともあります。
現に対馬ルリ子先生の患者の中には20㎝の筋腫を持ったままの人もいるそうです。
Tips12
経過観察でいい?
過多月経や痛み、そのほかに症状がない場合は経過観察に。多くの子宮筋腫はこのケースです。
ただし、放っておくのではなく、筋腫の大きさや状態、変化について必ず定期的に観察してもらうこと。
Tips13
子宮筋腫のゴールは閉経?
女性ホルモンがなくなれば、筋腫の成長は止まります。そのため閉経後は、徐々に小さくなるのが普通。
40代後半の子宮筋腫に対して「閉経まで逃げきる」などと表現するのはそのためです。
Tips14
「逃げ込み療法」とは?
閉経が近い年齢の場合に、偽閉経療法で筋腫を縮小させながら閉経に持ち込むこと。
数カ月以上月経を止めると、骨密度の低下や更年期に似た不調が起こることもありますが、対処が可能です。
Tips15
偽閉経療法って?
薬物療法のうち、GnRHアナログ製剤(詳しくは次回ご紹介します)を使って擬似的に閉経状態にし、筋腫を縮小させる方法です。
ジャッジが難しく薬の投与期間も限られるため、医師の経験値が重要。
Tips16
閉経したら安心?
過多月経や月経困難症の症状はなくなります。
筋腫の成長も止まりますが、すぐ小さくなるわけではないため、排尿障害や便秘などの症状が強い場合、閉経後でも手術をすすめられることも。
回答していただいたのは
対馬ルリ子さん
Ruriko Tsushima
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
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八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』 (アスコム) など。
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イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子