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セックスのときに腟が濡れなくなりました。痛くて苦痛なので、つい夫を拒否……。何か手立ては?(44歳)【更年期のフェムゾーンの悩み】

閉経前後からは、セックスの悩みは尽きないもの。そこで前回に続き、セックスについて先生に相談! なかでもこの性交時の痛み、潤い不足などは、GMS(閉経関連泌尿生殖器症候群。詳しくは前回をごらんください)にも原因があるのかもしれません。さて、八田先生はどんなアドバイスをしてくれるでしょうか?

答えてくださった方

八田真理子
八田真理子さん
産婦人科専門医
公式サイトを見る

幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。

 

このお悩み、きっと来ると思いました!

これも、40代以降にはあるあるです。

 

性交痛に関しては前回もお話ししましたが、GSM(ジーエスエム)という立派な疾患。

女性ホルモン「エストロゲン」が減ってくると、腟や外陰部の皮膚や粘膜のハリ、弾力が失われ、乾燥してしまいます。かゆい、ヒリヒリする、イガイガ感があるなど、不快な症状が出てくるのは当たり前のこと。セックスの痛みも当然です。

 

我慢しないで悩みをみんなと共有したり、パートナーとも一緒に考えていくことが、これから人生の後半生を生きていく私たちの理想の姿だと思います。

 

♦性交痛の原因でいちばん多いのは、潤い不足

 

性交痛にもパターンがあります。

最も多いのが、腟や外陰部が乾燥して潤いが不足してくることから挿入時に痛みを感じるケース。

クリニックでも、更年期を過ぎてくると、内診時や、子宮がん検診に使うクスコ(腟鏡)を入れるのに痛みを感じる人もいます。

 

性交痛の原因はそれだけでなく、この方のように「濡れない」という問題もあります。

挿入はできても腟内が潤わなければクッションになるものがないので、ペニスが動くと痛いはずです。それにより粘膜が傷ついて出血することもあります。

 

そもそも、一般的に言われる「濡れる」「愛液が出る」という現象はどんなメカニズムなのでしょう?

 

実は、これには、脳の下垂体から分泌される「オキシトシン」というホルモンが関わっていることがわかってきました。「オキシトシン」は、別名、幸せホルモンや愛情ホルモンとも呼ばれ、日常的にハグやスキンシップなど他人とのふれあいによって分泌されます。

 

キスやボディタッチなどの触れ合いでパートナーに愛おしさを感じると、オキシトシンの放出が高まります。

すると、性的な興奮によって下半身に血流が流れ込み、腟壁周辺に張り巡らされている毛細血管が広がって、腟壁の血管の隙間から潤滑液がしたたり落ちる…。

これが、腟が濡れる仕組みです。そう、潤滑液は血液の成分の一種なんです。

 

こんなメカニズムからして、腟が濡れるためにはまずは血流、血液循環が大切だとわかります。

でも更年期以降は、性器の血流が不十分になってきます。さらに、冷え症も血行不良があるので、濡れにくくなる可能性があります。

また、ヒトの体は約6割が水分であることはわかっていますが、水分摂取をしないなど、慢性的な水分不足でも濡れなくなってしまう可能性が出てきます。

 

それらに加え、元々の個人差もあります。

汗をかきやすい、かきにくいのと同じで、性的興奮が高まっていても濡れにくい人もいます。濡れにくいから悪い、感じにくいというわけではありません。

♦脳とセックスの関係。それは

 

そうはいっても、「性は脳なり」と言われるほど、脳が司っています。「気分が乗らない」ということも大いに関係があります。

そのときの環境、二人の関係性、ストレス、緊張や不安、過去の体験などによっても影響を受けます。さらに一度つらい痛みを感じてしまうと、そのときの記憶がよみがえったりプレッシャーから、ますます濡れにくく、また痛みを感じてしまうという悪循環に…。

 

ご相談者さんはパートナーに対して愛おしさを感じ、幸せホルモン「オキシトシン」が性器を充血させるプロセスがちゃんとありますか?

 

そのあたりをパートナーと話し合ってみてはどうでしょう?

コミュニケーション不足、ざっくばらんに話せる関係にないことがいちばんの問題だったりもします。

夫婦だったらなおさら。

これからも一緒にいる長い人生、セックスしたい相手としたくない自分がうまくやっていけると思いますか?

 

具体的な対策としてできることは、恥ずかしいことはまったくないので、遠慮せずたっぷりと潤いを補うための潤滑ゼリーを使うこと。

ゼリーは香りや機能などバリエーションも増えており、安価でドラッグストアなどでも市販されています。

【潤滑ゼリーの一例。ドラッグストアやネットで手軽に購入でき、個包装になっている使いきりタイプ(写真左)や肌にのせたときひやっとしない温感タイプ(写真右)も】

 

「もっと気持ちよくなりたいし、濡れにくくなっているからコレ使おう」でいいと思います。自分だけでなく、パートナーのペニスにも塗る(できればたっぷりと)のがいいと思います。

 

♦こんな工夫で楽しいSEXを

 

ほかにも対策としては、環境を変えてみるという手もあります。

いつも気分が乗らない、テンションが上がらないという人は、環境が変わるとよくなることもあります。「ちょっとセクシャルな気持ちになりたいな」と、ラブホに行くのでもいいじゃないですか。

 

そのほか、濡れない原因として、キスや愛撫の仕方が自分に適していない、好みではない、実は全然気持ちいいと感じていないまま、それを相手に言えずにいる人もいますね。

どう触れられれば感じるのか、今まで以上にパートナーの愛撫の仕方をフォローしたり、自分から感じるように動くなど、二人のコンビネーションも磨いて。

 

パートナーとの長い人生、セックスは料理と同じで、ずっとマンネリでは飽きてしまいます。少しずつでよいので工夫を凝らしてみてください。

 

最後に。セックスをしない期間が長くなると痛みを感じやすくなることもわかっています。更年期になっても、定期的に続けること。できれば、月に1度よりは1~2週に1度はしてみましょう!そのほうが濡れやすいしイキやすい。それが難しければ、腟まわりや(可能なら)腟の中までオイルマッサージをするなどして、腟を使う回数を増やしましょう。セルフプレジャー(自慰、マスターベーション)はれっきとした腟ケア、GSMの改善法と提唱されています。

 

取材・文/蓮見則子 

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