長時間続けた姿勢は、どこかでリセットすることが大切
猫背とは、背中が丸くなっている姿勢のこと。ほとんどの場合、頭が前に出ています。
ストレートネック(スマホ首)は、背中を丸めて頭を前に出した結果、本来あるべき頸椎のカーブが少なくなり、首が真っすぐに近い状態になっていることを指します。
つまり、猫背とストレートネックは姿勢的には同じこと。肩こり、首こり、頭痛などを引き起こしやすく、放っておくとさらにトラブルを招く可能性もあるといわれます。
「背中を丸めて頭を前に出した姿勢は、デスクワーク、パソコン作業をする上では無理なく楽な体勢だと思うんです。その姿勢自体は決して悪いものだとは思いません」
と話すのは、この連載を監修している呼吸コンサルタントで、呼吸専門サロンを主宰する大貫崇さんです。
大貫さんの説明は続きます。
「問題は作業が終わった後、そのまま日常生活を送ってしまうこと。
そのまま帰宅して、そのまま食事をして、そのまま寝る。そして次の日もまた繰り返す…。体は適応するのが上手ですから、いつしか猫背が普通になり、ストレートネックや巻き肩が普通になっていきます。
でも、どこかで自分の偏った姿勢に気づいて、リセットする習慣をつければ、猫背やストレートネックの解消につながっていきます」
では、さっそく、リセット法を教えてもらいましょう!
猫背になりにくくするには、腹筋を緩めるみぞおちほぐしを最初に!
【リセット① みぞおちほぐし】
猫背なのにお腹をほぐすの? と思った人もいますよね?
背中が丸まっているということは、体の前側にあるお腹は「く」の字になって縮んでいます。腹筋はつねに緊張して硬くなり、猫背に拍車をかけてしまうのです。
これを緩めるのに、腹直筋(お腹の真ん中を走る筋肉)の付け根を手でほぐしましょう。
お腹の脂肪が厚い人、腹筋が弱い人も同じ。同じように試して。
やり方は意外に簡単。みぞおちに両手の指を入れ、息を吐きながら肋骨に沿ってもみほぐしてみてください。
最初はイタタタ…となることが多いのですが、ほぐす習慣がつくと痛くなくなってきます。つまり猫背になりにくく、首が前に出なくなることが大いに期待できます!
本来の首の形を体に教えてくれる、タオル枕で寝る呼吸
【リセット② タオル枕で呼吸】
ストレートネック解消というと、あごを引いた姿勢を推奨したり、あごを引いたままストレッチなどをしているのを見かけます。が、大貫さんはそれに反対だと言います。
「あごを引くのはNGです! あごが気道に近づけば、気道が押され、潰れて呼吸が苦しくなる。
その結果、また元のストレートネックや猫背の姿勢に戻って口呼吸をするようになります。そのほうが体が楽なんです。それに、あごを引けば胸骨が傾き、肋骨が開いてしまうからです。きちんと呼吸するために、肋骨はどうしても下げておきたいんですよ。
そのためにやりたいリセットは、タオル枕での呼吸。本来あるべき首のカーブと位置を体に教えながら呼吸をすることなんです」
タオル枕とは、バスタオルをくるくる丸め、首の下に入れること。
自然な首の形と位置は、自分が思っているよりもカーブが大きいもの。
あお向けになり、膝は軽く立て、首の下にタオル枕を入れたら、この体勢で「きほんの呼吸」を行います。
「きほんの呼吸」は、息をすっかり吐ききって肋骨を下げたまま、お腹と胸に同時に空気を入れる方法。
マスターしてからのほうが断然効果が上がります。
きほんの呼吸を1〜2分でよいので繰り返しましょう。
きほんの呼吸の仕方は…
タオル枕を取り、あごを引いてしまうと、いかに首のカーブがなくなってしまうかがわかります。
ちょうどよいタオルの厚みは人それぞれに違います。頸椎(首の骨)が自然なカーブを描くように、巻いたタオルの厚みを調整することも大事です。
さあ、これで背中が丸くなり頭が前に出た姿勢はリセットできました。
寝る前にこのリセットをして、そのまま眠ってしまってもOK。
毎日繰り返すことが大切です。
■■まとめ■■■■■■■
猫背の作業姿勢は悪くない、リセットしないことが問題。
腹直筋を緩めることで、猫背になりにくくなる!
頭を突き出した姿勢がよくないからとあごを引くのはNG!
自然な首のカーブを取り戻すのには、タオル枕で呼吸を。
【教えていただいた方】
1980年神奈川県生まれ。呼吸コンサルタント。アスレティックトレーナー。京都にある呼吸専門サロン「ぶりーずぷりーず」主宰。大阪大学大学院医学系研究科 健康スポーツ科学講座スポーツ医学教室 特任研究員。呼吸に関連した企業研究や商品開発など法人向け呼吸コンサルティング事業を展開し、アスリートから高齢者まで呼吸目線でのコンディショニングに従事。著書に『きほんの呼吸 横隔膜がきちんと動けば、ムダなく動ける体に変わる!』(東洋出版)など。
【呼吸についての悩みや質問、大募集】
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撮影/露木聡子 イラスト/きくちりえ 取材・文/蓮見則子