セックスの悩み、40代、50代の上位は「オーガズムを得られない」
OurAge読者の皆さん、こんにちは。富永ペインクリニック院長、富永喜代でございます。
先日、わたくしのYouTube「女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室」でライブを行ったんですけどね。そこで、「日本人女性の世代別セックスの悩み」というデータをご紹介したんです。
Z世代と呼ばれる、18歳〜26歳の人たちは、「胸が小さい」とか「デリケートゾーンの臭い、黒ずみ」などの悩みがトップ3に挙がっているのに対して、それ以降の30代〜50代女性になると、「オーガズムを得られない」「中でイクことができない」といった悩みが上位になっていたのです。
■セックスをする際の世代別コンプレックス
Z世代(18~26歳)
1位 胸が小さいこと 32.1%
2位 デリケートゾーンの臭い 25.3%
3位 デリケートゾーンの黒ずみ 25.1%
ミレニアル世代(27~35歳)
1位 中でイクことができないこと 32.5%
2位 胸が小さいこと 29.2%
3位 デリケートゾーンの臭い 26.1%
Y世代(36~42歳)
1位 胸が小さいこと 25.7%
2位 中でイクことができないこと 24.6%
3位 デリケートゾーンの臭い 23.6%
ロスジェネ世代(43~51歳)
1位 オーガズムを得られない(イケない)こと 22.8%
2位 中でイクことができないこと
胸が小さいこと 21.1%
コンプレックスはない
5 位 デリケートゾーンの臭い 16.8%
バブル世代(52~57歳)
1位 コンプレックスはない 28.6%
2位 オーガズムを得られない(イケない)こと 22.4%
3位 性欲がないこと 19.1%
…つまり、30代以降にはそういったお悩みがあるということは、イコール「セックス自体、気持ちよくない」と感じている女性がかなり多くいる、とも言えるわけやね。
女性全世代の62.5%が、セックスで「痛みを感じる」
そもそもオーガズムというものには男女差があるもの。どういうことか?というとですね。
男性の場合は、「ぺニスの刺激による射精に伴う快感で、オーガズムを得る」という、非常に直線的なもの。一方で女性のオーガズムは、「学習するもの」と言われとるわけ。つまり、「私の場合、気持ちいいセックスをするには、こういう感じが必要なのか!」という感覚をつかむこと。だから「そこを学んでいかなければ、それはずっとわからない」っちゅうことなんよ。
続いて、年代別「セックスの時に痛みを感じることがあるか」「(痛みがあると回答した女性のうち)性的満足度は得られているか」についてもリサーチをしているデータがあるので、そちらもご覧くださいませ。
このデータからもわかるように、全世代の62.5%が(セックスの時に)「痛みを感じる」と回答していて、もっと言うと20代では、実に74%の人が「痛い」と感じているという事実。
そんなことからも、性交痛が出始める40代、50代だけがセックスの痛みを感じているわけではなくて、「最初からセックスでオーガズムを得ている人は少ない」とも言えるわけ。
初めは「痛い」「気持ちよくない」と思っていた人も、年齢と経験を重ねるごとに自分の体のことがだんだんわかってきて、30代ぐらいから次第に「イケる体」になっていく。
でもその一方で、「パートナーがへた」だとか、「毎日疲れ果てていて、それどころじゃない」だとか、そもそも「性欲も湧かない」ので「セルフプレジャーも興味ないし、しないです」…とかいうことになってくると、いつまでたっても「自分の気持ちよさ」を学ぶ機会は増えないですよね。
だからそのまま「気持ちよくないし、別に楽しくもない」ってことで、セックスレスへの道が開かれていってしまう。
「セックスしたくない」は、あなたの自由。しかし、中には「性嫌悪」という心の病気の場合も
オーガズムを得る(脳内でドーパミンなりオキシトシンなりの、幸せホルモンを出す)には、「何でもええけん、セックスしたら出るよ〜」というわけではなくて、「気持ちがいいセックス」でないとあかんの。
反対に、たとえ挿入せずとも「この人とハグして触れ合えるだけで気持ちがいい、大好き〜」と思えとったら、幸せホルモンは出まくって快楽も湧くし、隣におらんでも好きな人の写真を見たり、想像しよるだけでちょっとほわほわしたり、そんなことまでもできてしまうんよね(この「脳イキ」現象については、第6回で詳しくお話をしているので参照してね♡)。
でも、そういったことの知識を学んだり、自分の体に関心を向けたりしなければ、いくら「中イキ」だとか「PスポットじゃGスポットじゃ」とか聞かされても、「セックスで気持ちよくなる」というのはなかなか難しいと思うのね。
よく(女性の体を)「開発、開発!」とか言う腹立たしい輩もおるけどさ。土地開発じゃあるまいし、「何でもええけん、耕したらビルが建つ!」みたいな簡単なものでもないんよね。
女性それぞれの神経分布はみんな違うし、その人にとっての快楽ポイントも違うんやから、そこを自分が把握しておかなきゃ。
わかってないと、(セックスの)パートナーに「私はここをこうしてもらうのがいい」っていうことも伝えられんでしょう? それを伝えることによって、セックスの充実度というものは、また次のステップに上がっていくんやから。
中には、「セックスは好きではないけれど、子どもが欲しいのでしました」という人も非常に多いですね。
以前、私の性交痛外来に訪れた患者さんにも、そういったケースのご夫婦がおられました。
子どもができて、「まだ子育てが大変だから」とかなんだかんだの理由で、夫はずっとセックスを拒否されよったんやけんどね。
でも子育てが一段落して、「そろそろ二人の時間を大事にできるだろう」と思った旦那さんとは反対に、奥さんはというと「子どもはできたし、もう役目は終わったのに、は? 何してくれよんよ」とばかりに断って断って断りまくる。
このご夫婦の場合は、根本的な価値観がもともと違っていた。にもかかわらず、十年も二十年も向き合ってこなかったという、コミュニケーションの問題も大きいんやけどね。
ただ、性交痛外来を受診する以前にカウンセリングを受けないと、と判断したため、私はそちらの専門医をご紹介をする、という結論になりました。
「セックスしたくない」という思いが強烈にある人の中には、性嫌悪症(性嫌悪障害)という心の病気が原因の場合もあります。
これは、「性行為を含む、性的な行為全般に対して激しい嫌悪感や不快感を抱いてしまう疾患」のこと。
性別や年齢に関係なく発症することがあり、 女性だけではなく男性が発症する場合もあります。また、「性行為への関心が減り、興奮が困難になる」「オーガズムの障害」「性行為に関する痛み・挿入障害」などの症状が出る「女性性機能障害」という病気も。
原因は生活上のストレス要因、精神的苦悩、パートナーとのコミュニケーション不足などが挙げられています。
年齢とともに性欲が減退していくのは別に罪でもないし、「セックスは好かん」という人にとっては、好かんもんは好かんよね。
けれどもし、「セックスレスで悩んでいる」という人であれば、その根本原因はどこにあるのか、一度向き合ってみるのもひとつのきっかけになるでしょうね。
一人で抱え込まず、医師に伴走してもらいながら、自分の心を探っていく。すると、自分ではたどり着けなかった気づきがあるかもしれませんよ。
【教えていただいた方】
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数28万人、総再生数は6600万回超。SNS総フォロワー数44万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。
撮影/天日恵美子 角守裕二(花) グラフ/小柳東子 取材・文/井尾淳子