寺町の明治創業の仏教書専門店
「書林 其中堂(きちゅうどう)」
寺町通は、河原町通に並行して南北に走る京都屈指のショッピングストリート。四条通から御池通の間は、車の走らぬアーケードになっており、両脇の店を見ながら買い物が存分に楽しめることから、年間を通じ、多くの国内外の観光客で賑わう通りです。アーケードのため、そこに並ぶ店の全体の姿を見るのはむずかしいのですが、新しい店舗が増える中で思わず足が止まる、ひときわ趣のある店舗があります。仏教書専門店「書林 其中堂」です。昭和漆喰の壁に、木製の欄干や欄間、そして瓦のひさしなど、寺院建築のエッセンスを散りばめたような外観は、周囲の店舗とは明らかに風格を異にしています。
創業は、名古屋で明治13年にて…。京都に出店したのは、明治38年とのこと。そして現在の建物は、昭和5年に建てられたものだそう。店内は、高い天井とイタリア製の木目柄のタイルを貼った床、書棚も歴史を感じさせる木製という設え。天井からさがる電燈の灯りと、店の奥の卍を思わせるデザインの枠をもつ窓からこぼれる光が、店全体を穏やかに照らします。
ご店主は、4代目の三浦了三さん。いつも窓のそばの大きな木製の机にいらっしゃいます。
さて、ここは仏教書専門店。各宗派の総本山や仏教系学校の多い京都らしい書店です。並ぶのは、あらゆる宗派におよぶ新刊本から古本、そして和本など、さらに今話題の本から貴重な資料本まで、一般書店にはない品揃えです。
顧客は、仏教研究者や僧侶などの仏教専門家をはじめ、仏像や仏教建築に関心がある人、また禅などに心惹かれる人、インド、チベット、中国などの文化や宗教を調べる人と、顧客の幅の広さに驚きます。でも顧客の興味が限定された、まさに知る人ぞ知る書店ともいえます。店の歴史を感じさせる外観から、なかなかふらりと立ち寄りにくいと思われる人も多いでしょうが、一度入ると、なんとも店内の静かさが心地よく、棚に並ぶ本を見ていくのがなんとも楽しくなってきます。
年齢を重ね、人生を振り返るとき、ここにある本は、心鎮まる指針になり、この書店で過ごす時間もまた心穏やかなひとときに…。
棚に並ぶ膨大な数の本…それを把握しているご店主にアドバイスいただくのもおすすめ。わかりやすく解説した仏教初心者向けの本をはじめ、心にかかる思いや探究心を満たしてくれる本を提案してくださいます。
店の入り口にかかる額は、顧客だった哲学者、西田幾多郎の書。この店から頻繁に書物を取り寄せたそう。ここで出会った本を片手に、桜の咲く、哲学の道へ。自分を見つめる京都の旅も素敵です。
書林 其中堂
京都市中京区寺町通三条北
☎075‐231‐2971
平日10:00~19:00 日曜・祝日12:00~18:00 木曜休み
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/kiraya/
小原誉子の京都の観光文化を伝えるブログ
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