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ヨルダンで体験したアクロバット飛行/ ロイヤル・ジョルダニアン・ファルコンズ

井原美紀

井原美紀

旅するコピーライター・エディター。

世界107ヶ国1300都市以上を旅してきた。 以前は海とヨットが大好きだったが 今は空を飛ぶことがなによりも好き。 趣味は仕事。

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友人のアンチエイジングドクター青木晃先生から、「若さを保つためにはチャンレジ精神をもって、色々なことにトライしたほうが良いよ」と常々言われているために、色々なことに挑戦するように心がけている。

 

 

そんなある日、人気番組『情熱大陸』にも登場、世界でもっとも有名な航空写真家である”世界の徳永克彦”先生から
「井原さん、ちょっとヨルダンに行って、アカバでアクロバット飛行して、アリア王女とお茶しませんか?」
という唐突なメッセージが送られて来た。(紅海を見下ろしながらのアクロバット飛行ですって!)
「もちろん、行きますよ!」
スケジュールも確認せずに即答した。チャンスは素早く前髪を掴まねばならないし、若さを保つためにチャレンジもしなければならない。

 

「そしたら、自分で航空券取って、ヨルダンまで来てくださいね」
「取ります取ります」
ヨルダン・アクロバット飛行ツアーは秒速で決まり、私はヨルダンへと飛んだ。

 

 

今回、日本のプレス(それは私)のためにスペシャル・パッセンジャーフライトを申し出てくれたのは、ロイヤル・ジョルダニアン・ファルコンズ。王室(Royal Court)に所属するチームで、ASEZA(Aqaba Special Economic Zone Authority)が運営をサポートしている。ミッションは「ヨルダンが平和でフレンドリーな国であることを、エアロバティックス(アクロバット飛行)を通じて世界へ伝えること」だという。

 

創立は、1967年というから、すでに半世紀を超える歴史を誇っている。最初は、3機の飛行機と3人のパイロットでスタートしたが、今や8 人のパイロットと13人のエンジニア、それに4人の事務スタッフを抱えている。機体は、昨年購入したばかりのExtra 330LX。

 

ロイヤルジョルダニアンファルコンズの本拠地

 

アクロバット飛行用のExtra 330LX

 

ハンターやヴァンパイアなどの歴史的戦闘機を管理するHeritage Flight のディレクターであり、パイロットコーチのドレイド氏。とても面倒見がよく、大変お世話になった。あだ名は「部長」。撮影:徳永克彦

 

 

ぴかぴかの赤い機体をよだれを垂らしながら見ていると、隊長のガジーがやって来て言う。
「実は、ちょうどこれから僕たちのチームでイギリスBBCの番組に出るんだよ。それに乗って、一緒にテレビに出る?」

 

時はあたかもアラブ反乱100周年。BBCの肝いりで、オスマントルコとアラブの戦いをアカバ鉄道とロイヤル・ジョルダニアン・ファルコンズで再現するのだという。
「僕たちはアラブ空軍の役なんだ。上空から鉄道に向かって下降して、何度か攻撃するふりをする。アラブ軍が勝利した後は、紅海上空で空中アクロバットを披露する。長時間飛んでも大丈夫だったら乗せてあげるよ」
「大丈夫大丈夫出ます出ます」

 

もはや自分の類まれな幸運さに酔いしれるばかりである。アラビアのロレンスよ、ありがとう。
鉄道には、実際にこの日のためにチケットを購入した乗客が乗っているという。アカバ付近で偽アラブ軍が鉄道を乗っ取り、乗客を拉致するらしい。拉致された乗客は、ご馳走を食べながら、エアショーを見るのだそうだ。

 

 

まずは、ブリーフィング。
濃い顔をしたパイロット、バサムから、飛行機の乗り込み方、パラシュートの使い方、マイクを通したコミュニケーションの取り方を学ぶ。

 

「”ベイルアウト”と3回聞こえたとき、あるいはキャナピーが開いた場合は、非常事態が起こったということ。 離陸のときや近場のときは、飛行機からすみやかに降り、離れてください。空中で非常事態が起こったときは、主翼と尾翼の間45度の場所から飛び降りてください。パラシュートで着陸するときは、地上で倒れこむようにすると、足を折ったりしないですみます」
(足を折る?)かすかな不安が頭をかすめたが、それより「飛べる」期待ですでに気持ちは3000m上空にいる。もはや私を止めるものはないのである。

 

バサムによるブルーフィング

 

「行くぜ、相棒!」撮影:徳永克彦

 

 

いよいよExtra 330LX に乗り込む。パイロットが後ろで、パッセンジャーが前。宙返りしたときに体が浮かないように、整備士の人にキリリとストラップを締めてもらう。最後にシックバッグを「一応持っていてね」と渡され、太ももの下に挟む。気分が悪くなったとき、ポケットに入れてあると間に合わないからである。今回は、撮影のため、途中で降りることはできない。90分近く、急降下急上昇横ぶれ宙返りを繰り返す飛行機に乗り続けなければならないのである。宙返りのときにシックバックを使ったら、自分の吐いたものを浴びることになる。(吐くなら通常飛行のとき限定)と心に刻み込んだ。

 

4機のフォーメーションのうち、私はバサムと最後尾につく4番機で飛ぶことになった。
キャノピーを閉めると、ヘッドセットから1番機のガジーの指示が聞こえて来た。

 

「ファルコンズ。無線機チェック!」
「2!」
「3!」
「4!」
「ファルコンズ。エンジン始動」
「2!」
「3!」
「4!」
「ファルコンズ。タキシーアウト準備」
「2!」
「3!」
「4!」

 

かすかな雑音混じりに聞こえるガジーの元気いっぱいの大声と、それに「2!」「3!」「4!」と間髪入れずに機番で応えるパイロットたちのやり取りを聴くと、体中に快い緊張感が走る。すでに気分はトム・クルーズ。パッセンジャーとはいえ、目の前の機器は実際に操縦に使えるのだ。パイロットになにかあれば、私が操縦するしかない。まかせろ、バサム。私は心の中でつぶやいた。プロペラが回り始め、各機体が滑走路へとゆっくりと動き出す。

 

「アガパ管制塔、ファルコンズ、テイクオフ準備完了」
「ファルコンズ, テイクオフ許可。風向004、4ノット、Runway 19」
「ファルコンズ、離陸!」
隊長の号令と共にExtra330LXは、膨らむだけ膨らんだ私の期待を浮力に軽やかに飛び立った。

 

 

「月の谷」ワディ・ラムの砂漠上空へ!

 

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