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がんと向き合う“心”のケアは?

いしまるこ

いしまるこ

やる気はあるけど根気はない、自称ぐうたらライター(虚弱体質)。
お気楽道に邁進するため体と心の在り方を
模索する中で、医療・健康テーマを多数取材。
OurAgeではハーバード大学医学部 根来秀行教授の連載を担当

こんにちは、ぐうたらライターのいしまるこです。

 

いしまるこの緩和ケア最前線レポート第2弾は、がん医療における心のケアについてです。
前回の「緩和ケアセミナー」でも講師として登場した市立札幌病院精神医療センター副医長の上村恵一ドクターにお話をうかがいました。

 

 

がんの心のケアをする医学
「サイコオンコロジー」って?

 

 

いし 上村先生こんにちは。日本緩和医療学会理事、厚生労働省委託事業委員会委員長、日本サイコオンコロジー学会理事などなど兼任されて、お若いのにとっても偉いんですねぇ。

 

 

緩和ケア_photo

飄々としてどことなくユーモラスな雰囲気の上村ドクター。
物腰がやわらかく、患者さんもリラックスしてお話できそうです

 

 

上村 実力がありすぎて(笑)。というのは冗談で、精神科医で緩和ケアに取り組んでいる医者がまだまだ少ない現状ので、なんだか成り行きでいろいろやってます。

 

 

いし 上村先生はどうして緩和ケアにかかわることになったんですか?

 

 

上村 2007年に、がん診療連携拠点病院で緩和ケアを行う体制がわーっと進んだときに、指導者研修会に参加したのがきっかけです。当時、市立札幌病院では精神科医が僕一人だけで、たまたま研修に参加することになったわけですが、知れば知るほど、がん医療という分野には精神科医が必要だなという思いを強くしました。

 

 

いし がん医療における心の問題って、軽視されてきた感が否めませんものね。

 

 

上村 がん医療における〝心〟を専門とする活動を〝サイコオンコロジー〟と言いますが、これは〝心〟の研究をおこなう精神医学・サイコロジー(心理学)
と、〝がん〟の研究をするオンコロジー(腫瘍学)
を組み合わせた造語です。
精神腫瘍学と訳され、1980年代に確立した新しい学問なんです。
日本では1986年に日本サイコオンコロジー学会が結成され、緩和医療と連携して心のケアの必要性の普及や、サイコオンコロジーを実践する専門家〝サイコオンコロジスト〟の育成にあたっています。

 

 

いし サイコオンコロジスト! 具体的にはどんなことをするんですか?

 

 

上村 サイコンオンコロジストは病気や治療に関する適切な情報を提供し、患者さんが孤立しないように情緒面でも支え、不眠や不安、気分の落ち込みといった精神症状に、最善の治療が受けられるよう医学的なサポートにあたります。

 

 

いし ふむふむ。サイコオンコロジストは医師に限らない?

 

 

上村 サイコオンコロジストというと医師を指しますが、サイコオンコロジーに関わる医療者は医師や看護師、カウンセラーなどさまざまです。とくに、精神医療の専門家である精神科医や心療内科医で、サイコオンコロジーを実践している専門医のことを〝精神腫瘍医〟と呼びます。がん患者とその家族の精神的な苦痛の軽減、療養生活の質の向上を目指して、薬物療法だけでなく、がんに関連する苦悩などに耳を傾け、専門的知識、技能、態度を駆使して、誠意をもった診療に積極的にあたるドクターです。

 

 

いし おおっ、頼もしいです!

診断時の心のケアが
がん患者の自殺予防につながる!

 

 

いし がんと告げられて「頭が真っ白になった」という声はとても多いですし、それ以前に、健診でがんと疑われただけでも、不安でたまらなくなる人は多いと思うんです。
そんなときに、心のケアをしてくれる専門家に相談できたら、どんなに心強いでしょうね。

 

 

上村 僕もそういったつらい気持ちになっている患者さんを、しっかり支える心の医療こそ、診断時に提供すべき緩和ケアの重要な要素だと思っています。

 

僕の外来には、現場の治療医からの紹介もあって、がんと告げられたときの精神的ショックで、受診される方が多いんですよ。まだ少数ですが自主的に受診される方もいます。

 

先日も乳がんと診断された女性が受診されて、「まだ治療が始まっていないけれど、今後、不安が強くなってくると思うので、将来にわたって心のケアをしてほしい」と依頼されました。
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いし へぇー、しっかりした方ですね。

 

 

上村 その方は医療職の方でした。

 

 

いし 知識があれば、自分でもなんとか受け皿を探して心のケアにたどりつけるんですね。
ただ、一般的にはまだサイコオンコロジーについて知識がある人は少ないし、がんの検査や治療にあたる担当医が心のケアの専門家を紹介するということも少ないのでは?

 

 

上村 そうですね。がんによるストレスはあって当然だと、思っている患者さんも医療者も少なくないので、精神的ショックが強くても「精神科に相談するほどではない」と思われがちなんです。

 

 

いし 日本人は我慢強いですし。

 

 

上村 だけど、気持ちのつらさがもたらす悪影響はたくさんあって、QOL(生活の質)を低下させたり、治療にも投げやりになったり、「死にたい」という思いが強まり、最悪の場合、自殺につながることもあるんです。実際、がん患者の0.2%は自殺で人生を終えているんですよ。
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いし えっ、そんなに多くの方が!?

 

 

上村 はい。日本の一般病院入院患者の自殺者のうち、35%ががん患者です。
がんで入院している人がいちばん多いわけではないのに、です。

 

 

いし 深刻な事態…。早い段階から心のケアを受けられていたら、と悔やまれますね…。

 

 

上村 その通りで、がん患者の自殺の時期は、診断直後から1年以内がもっとも多いんです。

 

 

いし こじらせる前に、手を打つことが大事ですね。

 

 

上村 ただ、〝精神科受診〟のハードルってまだまだ高いみたいで。
精神科受診を拒否した末に、なんとか僕のところを受診したがん患者さんに、「どうしてそんなにつらくなるまで来なかったの?」と聞いてみると、

 

「精神疾患と診断されるのが嫌だった」

「精神科という名前に抵抗があった」
「入院している病棟の仲間やスタッフに弱い人だと思われたくなかった」

 

といった答えが返ってきました。

 

 

いし 精神科への偏見って、まだまだ根強いんですねぇ。

 

 

上村 さらに問題なのは、そもそもストレスによる不定愁訴とか、病気以前の不安や落ち込みといった心理的問題に対応する、いわゆる〝メンタルヘルスケア〟の医学教育が立ち後れていて、〝病気〟しか実際に診療していない精神科医や心療内科医が多いということです。
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いし つまり、がんになって精神的ショックで精神科や心療内科を受診しても、うつ病でなければきちんと対応してもらえないこともある、と。

 

 

上村 がん診療連携拠点病院など、精神腫瘍医がいる病院では対応できていると思いますが、一般の病院では、うつ病でなければ「主治医と相談してください」と言われることも現段階ではありえると思います。

 

 

いし 精神腫瘍医は全国にどれくらいいらっしゃるんですか?

 

 

上村 うーん、それが2015年3月末時点で844名。精神腫瘍医がほぼゼロという地方もあるので、メンタルヘルスケアにつなげる地域のシステムづくりも検討しているところです。

 

 

いし がん医療においても、メンタルヘルスケアは過渡期なんですね…。
患者から心のケアのニーズが増えれば、加速度的に発展していく可能性もあるのでは?

 

 

上村 その通りです。僕のところには、心の問題だけでなくフツーの相談もありますよ。

 

 

いし フツーの相談って?

 

 

上村 「子どもにはがんのことをいつ伝えたらいいか? 」とか「 今、交際している男性がいるんですけど、つきあい続けていいんでしょうか?」とか。

 

 

いし えっ、それって主治医に聞くことじゃないんですか?

 

 

上村 そうなんですけどね。「主治医に治療以外のことを聞くと怒られる」と思っている患者さんも多いようです。

 

 

いし そういう話、よく耳にします。その点、上村先生になら相談しやすい!

 

 

上村 そういうときは場合によっては、「こういうことが知りたいそうなのでお伝えください」と担当医に手紙を書いてあげたり。
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いし 違う科の医師同士が連携して治療にあたるのも、緩和ケア医療の目指す所ですよね。
ただ、サイコオンコロジストが不足している現状では、主治医が心のケアにあたるしかない現状もあるわけですよね。そのあたりはどうなっているんですか?

 

 

上村 そこはまだものすごく温度差があって、心のケアに非常に理解のあるがん治療医もいれば、患者さんが心の問題を抱えていても、亡くなる2週間前くらい前まで、緩和ケア医にも精神科医にも相談してくれないがん治療医もいます。

 

 

いし う〜ん、現状では、適切な心のケアを受けたくても受けられない可能性も高いのでは?
なんだか不安になってきました…。

 

 

上村 現在、国をあげて、がん治療にあたるさまざまな立場の専門家に、サイコオンコロジーの教育が行き届くように活動をしているところです。ですから、主治医、看護師、カウンセラー、ソーシャルワーカー、薬剤師、がん相談支援センターなど、誰かに相談すれば、心のつらさに対応できるルートはきっとあると思います。

 

 

いし 求めよ、さらば開かれん! ですね。

 

がん患者を支える家族の
心のケアも大事です

 

 

いし サイコオンコロジーは「がん患者だけでなく、その家族にも提供されるもの」なんですよね?

 

 

上村 はい。緩和ケアのドクターがよく口にする「ご家族は第二の患者さん」という言葉があるのですが、まったくその通りだと思います。
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いし 実際に、相談に来られるご家族も増えていますか?

 

 

上村 患者さんのために、自分ができることはないかと相談されることはよくあるんですが、意外に自分のことで相談を求めてくる家族は少ないんですよ。
がん患者さんに連れられてしぶしぶ受診する家族のほうが多いですよ。

 

 

いし 自分のことは二の次になってしまうと。

 

 

上村 がんでもない自分が医療を求めることは許されないと思っているみたいで。
がんになった人の治療がすべてにおいて優先されていて、そこに支障をきたす行為を許さないという雰囲気が、がん治療全体にあるんですよ。

 

 

いし がん患者を支えている家族が無理を重ねて共倒れ、というケースが後を絶たないのも、そういうムードに支配されているからなんですね。

 

 

上村 そうですね。けれども、がんはご本人だけでなく、ご家族にとっても大きな衝撃で、心理的にも、経済的にも、日常生活に大きな影響を与えます。共倒れになってしまっては、元も子もありません。不安や心配事があれば気兼ねしないで、心のケアの専門家に是非、相談してください。

 

 

いし 家族の受診費用も保険が効くんですか?

 

 

上村 もちろん、ご家族の受診費用についても、公的医療保険が適用されます

 

 

いし ほっ、ひと安心。

 

 

上村 緩和ケアを受けたことでQOLのみならず、寿命も延びたというデータが示すように、緩和ケアが浸透して、誰もが心のケアを受けられるようになれば、がんはこわくないし、いい死に方をする日本人は絶対増えるはずです。

 

ですから、どうぞ緩和ケアについて知ってください。
そして、人生の終え方を含め、自分の余生についても考えてみてください。

 

それは、最期まですこやかに生をまっとうすることにつながっていくと思います。
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いし がん医療に携わる医療者のみなさんと、医療を受ける私たちの双方が意識改革をしていかなくてはいけないってことですね。

上村先生、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

取材・文/石丸久美子 撮影/冨樫実和 イラスト/浅生ハルミン

 

1月10日(日)に、「知って身近に。もっと近くに、緩和ケア。」緩和ケア普及啓発キャンペーンの一環として、名古屋・ナディアパークで「街頭イベント」が行われました。取材に行ってきたふみっちーがご報告いたします。

 

レクチャーでは下山 理史ドクターの「緩和ケアってなに?」、細川 豊史ドクターの「痛みの治療ってどんなもの?」、明智龍男ドクターの「がんの不安や心配はどうすればいいの?」といった治療に関するお話から、医療ソーシャルワーカー粕田剛資さんの「お金や仕事の心配はどうればいいの?」、看護師 向井 未年子さんの「いろんな生活の心配はどうすればいいの?」といった、より具体的な悩みについてまで、さまざまな角度からの「緩和ケア」についてのお話がありました。登壇した先生たちの、わかりやすく、ユーモアにあふれた解説に、うなづく人が続出。質疑応答ではいろいろな質問が飛び出していました。

 

レクチャーの合間には、キャンペーン・メッセンジャーでお笑いジャーナリストの、たかまつななさんのミニライブで盛り上がり!満席の観客が大いに湧きました。

最後には、がん治療の中で、また、家族や友人としてがん治療を見守る中で、医療スタッフの一言に「力づけられた」「勇気づけられた」と感じた“あなたが「力づけられた」一言”の発表が。思わずウルっとしてしまったのは、きっとふみっちーだけではないはず。がんと向き合う人々と、サポートする人々の勇気に、グッときた観客は多かったようです。

 

2月11日(木)には東京・イイノホールで「市民公開講座」が行われます。関東在住の方は、ぜひご参加くださいね。

 

<市民公開講座>がんの痛みつらさの解決方法はあります〜もっと身近に緩和ケア〜」

 

●日時 2016年2月11日(木・祝) 13:30〜17:00 受付開始 12:30
●会場 イイノホール 〔最寄り駅〕 霞ケ関駅直結
●参加費 無料(定員400名・先着順)
●申し込み方法 参加ご希望の方は、WEBサイトの申込みフォームからお申込み下さい。
詳細・申込みフォーム http://www.mottomijikani.com/kouza.html
●プログラム
講演:痛みの解決方法/心配・不安の解決方法/生活に関する不安の解決方法/お金・仕事に関する不安の解消方法
パネルディスカッション:テーマ「緩和ケア・医療用麻薬の疑問についてお答えします」
特別出演:たかまつなな(お笑いジャーナリスト)
鈴木美穂(日本テレビ記者・マギーズ東京共同代表理事)


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