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パリと京都。 「素敵だけど手ごわい街」を読んで体感!

山本圭子

山本圭子

出版社勤務を経て、ライターに。『MORE』『COSMOPOLITAN』『MAQUIA』でブックスコラムを担当したのち、現在『eclat』『青春と読書』などで書評や著者インタビューを手がける。

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雑誌やテレビで“旅もの”を見て、「あ~、ここ行きたい!」と思う割にはなかなか行動を起こせない私。勢いで気軽に行ける距離だとそうでもないのですが、海外となると恥ずかしながらこの10年で1回だけ。

 

 

もちろん、それなりの理由がなかったわけではないのですが、基本的に腰が重いんですね。英語がダメなこともあって、海外へのあこがれは薄いほうかも……自分でも残念なのですが。

 

 

だから、外国にまつわるエッセイもそれほど読むほうではありませんが、最近出会った『それでも暮らし続けたいパリ』は異国で暮らす日本人の体験記として、比較文化論として、とっても面白かった!
「あと1章読んだら買い物に出かけよう」と思いながらページをめくり続け、昼食をはさんでそのまま最後までいったほど。
エッセイでこういう読み方をしたのは久しぶりでした。

書評_photo

『それでも暮らし続けたいパリ』
松本百合子 主婦と生活社 \1300(税別)
短期間でも日本で暮らした経験のあるフランス人が口をそろえて言うセリフは「ああ、なんでフランスにはコンビニがないんだ!」。著者もそれを実感するものの、便利な日本では鍛えられなかった段取り力がついたりして!? 手間はかかるけれど味のあるパリ暮らしを、軽妙につづったエッセイ集

 

 

多分その理由のひとつは、著者がパリを賛美しすぎていなかったからだと思います。
「パリの街も、そこで普通に生活している私も素敵!」というテイストではなく、すぐれた観察者の目線で描かれていたから、読みながら納得し、興味が深まっていったんですね。

 

タイトルに「それでも」という言葉があるくらいだから、翻訳者であり、フランス人シェフを夫に持つ著者にとってもパリは手ごわい街。10年以上暮らしていても、たびたび驚きや違和感に見舞われるようです。

 

 

例えば年々減りつつあるとはいえ、街の風物詩と言われるくらい、パリには犬のウンチがいっぱい!
「犬のウンチを踏んで、滑って転んで怪我をして病院に担ぎ込まれる人は、なんと、年に600人以上もいるという!」のだから、驚きを通り越して「なぜ飼い主が処理しないの? なぜそれが大問題に発展しないの?」と、不思議に思えてきます。

 

 

これについて著者が友人に尋ねると

 

「中世のフランスでは、人の糞尿でさえ家の窓から通りに投げ捨てていたんだから。誰が犬の糞なんて拾うもんか」

 

と言う人もいれば、

 

「パリには街の清掃というれっきとした仕事があるの。その人たちから仕事を奪っちゃいけないのよ」

 

と言う人も。

 

 

著者はなるほどと思うものの、リードを離して“ひとり散歩”させる飼い主が多いからでは、と推察。
ではなぜ犬自身にとっても周囲にとっても危険に思える“ひとり散歩”をさせるのかと考えた結果、フランス人の気質というか、ある種のプライドに思い至ります。

 

 

“犬のウンチは困るけど、こういう考え方をする人たちだからなのか”とわかったことで、大目に見てあげたいと思うようになった著者。
“自分とは違う他者を理解できる力”って、海外暮らしには必要なんだろうな、とつくづく感じました。

 

 

 

ここでちょっと思い立って、半年ほど前から南米で暮らす家族のひとりにLINEをしてみることに。

 

 

「そちらに行って驚いたことある?」と訊くと「今、料理中にガスタンクが空になって、業者を待っているところです。なかなか来ない! お腹がぺこぺこ!!」との返事が。
(結局、その日業者は来なかったとのこと。電話するたびに「今、向かっています」と言われたそうです)
これもまた、日本では起きそうもない出来事ですよね。

 

 

話はそれましたが、このエッセイには他にも、

 

卒倒しそうに長いディナー

火のついた煙草のポイ捨て

よその車にぶつけても平気な路駐の実態

 

など、「ええっ!?」と言いたくなるような話があちこちに。
もちろん、パリっ子の気概やおしゃれ心、独立心を感じさせるエピソードも盛りだくさんで、何事も生ぬるい自分にびしっとムチをいれられた気もしました。

 

 

理解できるけど真似はできないこと、理解できるし真似もしたいこと、理解も真似もできないこと。そんな基準でひとつひとつのエピソードを読んでしまうところも、この本の面白さかもしれません。

 

 

 

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