血管といえばまず動脈・静脈を思い浮かべる人がほとんどで、毛細血管をイメージする人は少ないでしょう。けれども命の根幹を担っているのは実は毛細血管で、免疫の闘いの最前線でもあります。
世界の最先端医療も注目している毛細血管について、根来秀行ドクターの特別レクチャーです!
動脈・静脈の陰に隠れて、なんだか存在感の薄い毛細血管。一般的には、動脈と静脈をつなぐ単なるパイプくらいの認識かもしれません。けれども、根来教授はキッパリと言いきります。
「血液循環の主役は毛細血管です。動脈や静脈は単に血液を運ぶのがおもな仕事ですが、毛細血管は命の根幹にかかわる役目を担っているのです」
毛細血管の直径は、髪の毛の10分の1ほどで、肉眼では見えないくらい。そんな極細血管が本当に重要?
「毛細血管はか細いからこそ、全身に網の目のように張り巡らすことができ、全身の血管の99%を占めています。つまり、毛細血管は人間の体の中でいちばん大きな臓器ともいえます」
全血管の99%が
毛細血管!
【直径】約100 分の1㎜
【長さ】全部つなぐと地球2 周半
【総数】約100 億本
前ページの人体図は毛細血管を表したもの。全身真っ赤で毛細血管が人体を覆い尽くしているのが一目瞭然です。こんなにも全身にわたっているのは、毛細血管がただならぬミッションを請け負っているからにほかなりません。
「全身には60兆を超える細胞がありますが、どの細胞も必ず0・03㎜以内に毛細血管が存在しています。すべての細胞ひとつひとつに酸素や栄養素を届け、二酸化炭素や老廃物を回収している、その最前線の現場こそが毛細血管。いくらバランスのよい食事をとっても、それが全身に運ばれ、毛細血管を介してしかるべき細胞にまで届けられなければ無意味です」
毛細血管にはほかにも、命にかかわる重要な役目をたくさん担っています。
「毛細血管は、病原菌などの外敵から体を守ってくれる免疫の闘いの場でもあり、"病気になる・ならない"の最前線でもあります。また、ホルモンを運び、体に必要な情報を伝達したり、自律神経と連動して体温を一定に保つ働きもあります」
毛細血管には生きるために必要なすべてが詰まっているといっても過言ではない、と根来教授。
「いつまでも若々しく、病気になりにくい体を手に入れるためには、毛細血管を健康に保つことが不可欠です」
(次回は「毛細血管が老化するとどうなるの!?」です。お楽しみに!)
撮影/角守裕二 イラスト/内藤しなこ 構成・文/石丸久美子