人の健康を大きく左右する毛細血管ですが、残念ながら老化します。しかも劣化するだけでなく、年齢とともに数が減っていくというのだから一大事!
全身に張り巡らされた毛細血管にいったいどんなことが起きるのか、まずは知ってください。
40代半ばを過ぎると
毛細血管の衰えが加速!?
毛細血管の衰えが
じわじわと体をむしばむ
年を重ねれば、あちこちガタがくるもの。毛細血管もしかりです。
「毛細血管を構成する内皮細胞同士の隙間が必要以上に開いたり、内皮細胞と周皮細胞との接着面に隙間ができることで、栄養素や水分、老廃物などが過度に漏れ出る箇所が出てきます」と根来教授。
さらに残念なことに、量が減ります。動脈や静脈は年を重ねても数は変わりませんが、毛細血管は加齢とともに減っていくのです。上のグラフは、周皮細胞が付着した健康な毛細血管の加齢による減少を表していますが、45歳を境に右肩下がりに減っています。
「毛細血管の内皮細胞は、健康であれば1000日くらいで新しい細胞に入れ替わります。ところが40代くらいからは、新陳代謝されることなく死んでいく細胞が徐々に増えていきます。60代では毛細血管の数が4割も減るといわれています」
老化現象に生活習慣病が加わると、ますます毛細血管にダメージが…。
「高血圧や高血糖、脂質異常が続くと、血管の細胞が壊されたり、毛細血管の内壁に汚れがたまったりして、血管の弾力性が失われます。
さらに悪化すると、血管内が狭くなって血管が詰まり、下の写真のように、管はあるのに血液が流れていない〝ゴースト血管〟になります。使われなくなった毛細血管はやがて脱落し、消滅します」
写真協力/あっと株式会社血管美人
毛細血管が劣化して数も減れば、当然、動脈や静脈にも悪影響が及びます。
「生命活動の最前線である毛細血管が衰えれば、動脈や静脈の細胞にも酸素や栄養素が行き渡らなくなります。すると、不要な老廃物や水分が排泄されないまま、どんどん体内にたまってしまいます。とはいえ、毛細血管は一部が壊れても、周辺にある別の毛細血管が発達してサポートするため、すぐに致命傷になるようなことはありません」
ほっとひと安心ですが、裏を返せば毛細血管が劣化していても気づきにくいということでは!?
「まさにその通りで、毛細血管の老化はじわじわと進行していくのです。放っておくと、動脈硬化も進み、重要臓器の新陳代謝が滞り、さまざまな不調や病気を招くことになります」
(次回は「毛細血管の老化は全身を劣化させる…」です。お楽しみに!)
撮影/角守裕二 イラスト/内藤しなこ 構成・文/石丸久美子