年々劣化し減少していく毛細血管ですが、実は何歳からでも増やせます。
それも日々のちょっとした工夫で、自分で増やすことができるのです。
最新医学に基づいた確かな方法を根来教授が伝授します。
毛細血管は必要とあらば
にょきにょきと増える!
毛細血管の生理的減少を完全に止めることはできません。けれども悲観しないでください、と根来教授。
「加齢に伴う毛細血管の質と量の低下を最低限に食い止め、弱っている毛細血管を復活させ、健康な毛細血管を増やすことはできるのです」
えっ、毛細血管は増やせるの!?
「はい。血管新生(けっかんしんせい)といって、毛細血管は必要とあらば、枝分かれしてにょきにょきと増えていくんですよ」
にょきにょきと!そんなミラクルが体内で起きているなんて驚きです。
「例えば、ある毛細血管がダメージを受けて血流が悪くなり、その毛細血管が関係する組織の細胞が酸欠や炎症を起こしたとします。すると、そこに酸素や修復するための細胞を届けるために、その場所に向かって新しい毛細血管が伸びていくのです」
どのように毛細血管が増えていくのかについては不明な点が多かったのですが、最近、そのメカニズムが急速に解明されつつあるよう。
「僕の研究室でも、内皮細胞にくっついている周皮細胞が、毛細血管を新しく生み出すための細胞を供給していることが研究でわかってきました」
一方、病的な血管新生もあります。紫外線の刺激で発生する不完全な毛細血管はシワの原因に、がん細胞は自ら血管を増やし増殖していきます。
「健康に毛細血管が増える生理的血管新生のメカニズムが解明され、それを発展させていけたなら、病的な血管新生を抑制し全身の毛細血管を若返らせ、究極のアンチエイジングを図ることも可能になるかもしれません」
それは夢のある話!とはいえ、医学の発展をただ指をくわえて待っていたのでは、毛細血管は老化していく一方です。弱った毛細血管を復活させ、健康な毛細血管を増やすために、セルフケアとして何かできることはある?
セルフケアについては次のページへ!
自律神経、ホルモン、
体内時計からアプローチ
「たくさんありますよ。最大のポイントは、毛細血管に血流が行くようにすることと、血流自体をアップさせること。そのためには、まず自律神経の働きを整えることです」
実は、毛細血管は自律神経によってコントロールされています。交感神経と副交感神経のパワーバランスの変動によって血管の収縮と拡張を切り替え、しかるべきタイミングでしかるべき場所へ血液を巡らせ、酸素や栄養素、ホルモンを届けているのです。
「細胞を修復・再生する成長ホルモンやメラトニンといったアンチエイジングホルモンも、自律神経の協力なくしては、思うように体内を巡ることができず、宝の持ち腐れです。
また、自律神経は体内時計とも連動しています。ところが現代人は、不規則な生活に陥りがちで体内時計が乱れている人が非常に多く、本来、副交感神経が働く夜の時間帯まで交感神経が侵食し、毛細血管の働きを悪化させています。そのため、アンチエイジングホルモンが出づらくなっていて、細胞が再生されにくくなり、体がサビつきどんどん老化を早めているのです」
根来教授は最新刊で、毛細血管を増やす具体的なメソッドをたくさん紹介しています。体の二大制御機構である自律神経とホルモン、そして体内時計を見据えて、体をトータルで整えていく毛細血管ケアです。
「巷には『○○を食べれば若返る』とか『○○をするだけで元気になる』といった一元的な健康法があふれていますが、人の体は非常に複雑で、有機的に成り立っているもの。立体的な視点で、トータルに整えていかなければ、真の健康には近づけません」
といっても難しいことではなく、最新医学に基づきながらも、毎日のちょっとした心がけでできる生活術です。睡眠、運動、食事、ストレス対策という4つの切り口で、毛細血管に血流が行き、血流自体をアップさせるためのメソッドの一部をご紹介します。
「健康に生きていくために私たちがまず考えるべきことは、いかに全身の細胞を健全に働かせるかです。
できることから日常に取り入れてみてください。少しずつでもよい習慣が身につけば、健康な毛細血管が増えて、免疫力も上がり、病気になりにくい健やかで若々しい体を手に入れることができるはずです」
(次回は「根来式・毛細血管を増やす生活術 睡眠編」です。お楽しみに!)
撮影/角守裕二 イラスト/内藤しなこ 構成・文/石丸久美子