年々劣化し減少していく毛細血管ですが、実は何歳からでも増やせます。
それも日々のちょっとした工夫で、自分で増やすことができるのです。
最新医学に基づいた確かな方法を根来教授が伝授します。
【睡眠編】
アンチエイジングホルモンが最も分泌されるのは睡眠中で、毛細血管によって全身に運ばれます。副交感神経を優位にして質のいい睡眠を適切な時間とることで、毛細血管を増やす時間をしっかり確保して。
歯磨きは寝る30分前までに
毛細血管は、眠っている間に修復・再生されます。ところが、30代後半頃からしだいに眠りが浅くなり、40代に入ると夜中や早朝に目が覚めてしまう人が増えてきます。これは睡眠の老化現象。おもな原因は眠り誘発ホルモンであるメラトニンの減少です。
加齢によるメラトニンの減少に、さらに追い打ちをかける生活習慣があります。
そのひとつが、寝る直前の歯磨き。ブラッシングによる歯茎への刺激や、冷たい水で口をすすぐことが、メラトニンの分泌を抑制することが、イギリスの研究で報告されています。
メラトニンの減少を最小限にするために、歯磨きは就寝の30分前までにすませるようにしましょう。スマホや携帯、パソコンのブルーライトは視神経を刺激するほか、電磁波がメラトニンを破壊するので、できれば21時以降は電源を落としてリラックスを心がけて。
基本は7時間睡眠
睡眠時間が短いと、アンチエイジングホルモンが全身の毛細血管に行き渡り体を修復する時間がありません。
4時間睡眠が3日間続くと、血圧や血糖値が上がって、がんを発症しやすい状態になるというデータも。たった3日でも寝不足が続けば、毛細血管が傷つき、細胞や遺伝子レベルにまで被害が及ぶのです。
アメリカで実施された睡眠時間と寿命に関する大規模調査では、死亡率が低く、長生きだったのは7時間睡眠の人で、睡眠時間が3時間半~4時間半の人と8時間半の人は、7時間の人より死亡率が15%も高いという結果に。最近の研究では、適切な睡眠時間の確保は、アルツハイマー病の予防につながることもわかってきています。
寝不足のときこそ早起き
寝不足の朝は起きるのがつらいもの。できればお昼まで寝ていたいところですが、そこをあえていつもと同じ時間に早く起きて太陽の光を浴びてください。遅くとも8~9時には起きて朝の光を浴びましょう。
生体リズムは24時間11分ですが、朝日を浴びることによって11分がリセットされ、同時に睡眠を促すメラトニンのタイマーがかかり、夜に分泌されます。
起床時間が遅いとメラトニンの分泌開始時間がどんどんずれ込み、昼夜逆転してしまうのです。体内時計は1時間の時差を修正するのに約1日かかるので、早めにずれを解消することが肝心です。夜型の人は多少睡眠不足になっても、とにかく早起きしていれば、自然と早寝になります。
自分の意思で眠るのは難しいけれど、起きることはできるはずですから。
睡眠アプリ
睡眠は毛細血管の健康を保つうえで重要ですが、自分の睡眠状態を把握できている人は少ないものです。そこで僕はハーバード大学で、自分の眠りを客観的に知るための睡眠アルゴリズム「根来式サーカディアンスリープTM」を開発しました。
睡眠学と時間医学を融合させた世界初のメソッドで、これを搭載した睡眠アプリ「SleepdaysApp」(TWO)を無料公開しています。
体動によるベッドの振動から睡眠の状態をデータ化し、入眠までの時間や睡眠効率がわかります。体内時計を整えるための日中の行動もレコメンドするので、ぜひ活用してみてください。
ただし、電磁波はメラトニンを破壊するので、機内モードに設定しておくのが賢明です。睡眠アプリは他にもたくさんありますが、サーバーとリンクしている場合は、足元にスマホを置いて使うと、電磁波の影響を軽減できます。
(次回は「根来式・毛細血管を増やす生活術 運動編」です。お楽しみに!)
撮影/角守裕二 イラスト/内藤しなこ 構成・文/石丸久美子