渡邉賀子先生に教わる
美と健康に効く!
「冷えとり」の真実Q&A
靴下の重ね履き、ショールに腹巻き、湯たんぽにしょうが湯。さまざまな冷え対策を講じている人も多いのでは。でも、なかなか改善しないのはなぜ?
冷えとりのスペシャリスト、渡邉先生がその原因と解決策を指南!
今回は、更年期世代も知っておくべき、冷えのお話です。
更年期のほてり、実は冷えのぼせかも!
現代はストレスが冷えの原因にも
冷えないように気をつけているのに改善しないのには理由がありました。
冷えのメカニズムと原因を知って、この冬こそ、根本から冷えを解決しましょう。
熱を作り、全身に配る。それが冷えない体の基本
冷え対策を講じる人は増えていますが、「なかなか改善しません」という女性の声もまだ多く聞きます。
冷えた体の中は酸素や栄養が行き渡らず、内臓の不調から美容的トラブルまで、あらゆる不調を引き起こす原因に。大きなトラブルになる前に、少しでも冷えを改善することはとても大切なことなのです。
冷えが起こるおもなメカニズムは、
1.熱を作るのがうまくいかない
2.熱を配るのがうまくいかない
のふたつ。食事は熱を作るエネルギーの大もと。食欲が低下したり、胃腸が弱って栄養が吸収されなかったり、食事制限によるダイエットも熱を作る材料不足につながります。
熱の約6割を作っているのは筋肉なので、適度な運動も不可欠。こうして作られた熱が体の隅々まできちんと運ばれると、〝どこも冷えていない状態〞になるのです。動脈硬化など血管の問題、ドロドロ血や貧血など、血液に問題がある場合は、〝配る〞ことがうまくいかなくなるので、これも冷えの原因になります。
また、更年期はホットフラッシュなどで冷えを感じにくくなりますが、下半身は冷えている場合が多いですね。頭部や顔首、前胸部は毛細血管が発達していて、ほてりなどの症状が起こりやすいのです。そのとき血液は上半身に集まり、下半身は血流不足で冷えた状態に。これが〝冷えのぼせ〞といわれるものです。血液を偏りなく、全身に行き渡らせることが重要なのです。
冷えとりのために靴下の重ね履きなどでケアしている人も多いですが、手足などの末端を温めるのは原状回復にはなりますが、根本的な解決にはなっていません。末端を温めるよりも先に、まずは内臓が集まるお腹まわりを冷やさないようにして、〝深部体温〞を保つことがポイントです。
もうひとつ、冷えに大きく関係するのは自律神経です。忙しかったり、夜までPCやスマホを見ていたり、ストレス過多の生活が続くと、交感神経と副交感神経のスイッチの切り替えがうまくできなくなります。交感神経は緊張時に優位になる神経で、末梢血管を収縮させます。副交感神経はリラックス時に優位になる神経で、末梢血管を拡張させます。副交感神経が優位になると、血流がよくなって冷えの改善にもつながっていくのです。
興奮状態(交感神経優位の状態)からスイッチを切り替えてリラックスモードになる簡単な方法は、ぬるめのお風呂に入ること。38〜40℃くらいが、皮膚が「安心、安全、リラックスしていいよ」と感じるおすすめの温度です。
現代人は皆、とても多忙な毎日。仕事も家事も、冷えとり活動さえも! 何事も一生懸命で、いつも頭がフル回転している人が多いですね。少し肩の力を抜いてゆったりした気持ちになれば、末梢血管が開いて血流がよくなり、新陳代謝もよくなって冷えが解消しやすくなるため、まずはゆっくり、リラックスできる時間を確保するよう心がけましょう。
夕方にはリラックスモードへ切り替え、夜になる頃には十分に副交感神経が優位になっている生活ができると、熟睡できて冷えは自然と改善していくはずです。忙しい現代女性にそれを求めるのは酷かもしれませんが、冷えを当たり前と思って放置せず、コツを覚えて早めの改善を心がけましょう。
撮影/鈴木康久(千代田スタジオ) 取材・原文/島田ゆかり