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股関節の痛みとトラブル② 要注意のトラブルとは?

痛む場所や痛みの強さなど、たとえ同じ病気でも人によって症状の違うことが多いのが股関節。

40代以降で発覚することが多い股関節のトラブルを、内田先生に聞きました。

 

 

放っておいてはいけない
【臼蓋形成不全】

臼蓋形成不全

臼蓋とは、骨盤側の受け皿の部分のこと。

大腿骨の先端が、このくぼみに収まっているのが股関節です。

臼蓋形成不全は、臼蓋の形が不完全であるという病態。

「かぶりが浅い」という言い方もします。

かぶりが浅いと、大腿骨頭は臼蓋から外へはみ出している状態に。

両方の接触面が小さいため、狭い面積で体重を支えなくてはなりません。

この負荷が普通の人より大きいので、軟骨や股関節唇が傷つきやすく、

股関節痛が起きやすいのです。

先天性のことがほとんどで、小さい頃に痛みが出てわかる場合もあれば、

中高年になって痛みが出て初めてわかることも。

後者の場合、広義ではすでに変形性股関節症の初期症状であるとも言えます。

治療はまず運動による保存療法。

手術が必要な場合もあります。

 

臼蓋形成不全はレントゲンで診断

臼蓋形成不全 レントゲン診断

臼蓋形成不全はレントゲン画像で診断されます。

診断基準のひとつに「CE角」「シャープ角」と呼ばれる角度があり、

両方の計測を行うケースもありますが、

医療機関によってはどちらかひとつの計測で診断することもあるようです。

 

 

 

女性に多い進行性の病気
【変形性股関節症】

 

変形性股関節症

【正常】軟骨がクッションの役割を担い、負荷を分散

【初期】軟骨がすり減って関節が少し狭くなり、骨棘(とげ)ができはじめる

【進行期】軟骨のすり減りが進み、骨棘が増える。骨嚢胞(骨の空洞)ができる

【末期】軟骨がほとんどなくなり、骨がぶつかる。骨棘や骨嚢胞が大量にできる

 

変形性股関節症とは股関節への負担が原因で、

軟骨がすり減り、骨が変形していく病気です。

そもそも正常な股関節は、筋肉や腱、靱帯が関節への負担を適切に分散し、

直接的に関節に衝撃がかからない仕組みになっていますが、

その分散がうまくいかないと、クッションの役目をする軟骨に過度な負担がかかり、

この病気を発症します。

日本人の場合、先天性臼蓋形成不全が原因で、

変形性股関節症に進行するケースが主。

通常、レントゲン画像で診断しますが、

軟骨はレントゲンに写らないため、MRI検査を行う場合も。

 

おもな症状は、関節の痛みと機能障害。

初期には立ち上がりや歩きはじめに痛みを感じますが、

進行すると、その痛みが強くなったり慢性的に痛むことに。

治療法は、どんな場合でも股関節への負担を減らすことと、運動による保存療法。

進行に応じて「骨切り術」や「人工骨頭」、「人工股関節置換」などの手術方法があります。

 

 
【股関節唇損傷】

股関節唇損傷

「画像では問題がないと診断されたのに、すごく痛い!」

という人に多く見られる病態。

股関節唇とは、臼蓋のまわりにくっついている柔らかい軟骨で、

リング状のゴムパッキンのように大腿骨頭を包み込んでいる部分。

幅は4~7㎜、股関節を安定させ、衝撃を吸収する働きをしています。

これが切れたりするのが股関節唇損傷。

骨頭が安定しなくなり、しだいに軟骨が破壊され、

変形性股関節症へ移行することも。

原因としては、FA(I 股関節インピンジメント:下を参照)や、

新体操などの股関節を多方向に動かすスポーツ、臼蓋形成不全などが挙げられます。

レントゲンに写らず、MRI検査でも診断が難しく、

初期症状は股関節を深く曲げた動きや車の乗り降りなどの動作で痛みが出ること。

運動療法や消炎鎮痛剤で治療をし、それでも改善されない場合は

股関節鏡視下(股関節の内視鏡)での損傷修復手術が必要になります。

 

 

 

 

変形性股関節症へ移行しないよう早期に発見・治療したい

【FAI(股関節インピンジメント)】

股関節インピンジメント

 

2003年にスイスで発表された新しい概念に、

FAI(Femoroacetabular impingement:股関節インピンジメント)があります。

インピンジメントとは「衝突」や「挟み込み」という意味で、

ぶつかりやすい形状の臼蓋と大腿骨が、

運動などの動作により異常に衝突したり挟み合わさってしまうこと。

屈曲や外転の激しい動きで衝突し続けることにより、

しだいに股関節唇に損傷をきたします。

痛み方は多種多様。

まだ医療関係者に広く知られていないため、発見も遅れがち。

放置すると軟骨の損傷が引き起こされ、変形性股関節症へ移行することも…。

つまり、FAI、股関節唇損傷、臼蓋形成不全は相互関係にあり、

どの病態も変形性股関節症を引き起こす可能性が高いのです。

そうなる前に発見し、治療することが重要。

 

 

 

 

 

股関節に痛みが出るその他の病気

【大腿骨頭壊死症】

大腿骨の骨頭部分の血流が悪くなり、

骨の細胞が壊死する病気。

アルコールの多量摂取、ステロイド剤の使用も関係していると言われます。

レントゲンやMRIにて診断。

 

【関節リウマチによる股関節症】

自己免疫疾患のひとつで、関節に慢性的に炎症を引き起こし、

徐々に関節を破壊してしまう病気。

病歴や血液検査、画像検査などから総合的に診断。

薬物療法が基本ですが、症状が進行すると、

破壊された関節を再建する手術が必要に。

 

 

股関節トラブルについては、専門医でなければ診断がつかない病態もあるほど複雑です。

素人判断はしないで、必ず医療機関で診てもらいましょう!

 

 

撮影/小山志麻 矢部ひとみ イラスト/かくたりかこ
構成・原文/蓮見則子

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