『MyAge 2015 Spring号』に、「S-Joy~素敵女医~」シリーズ『健康で太らない体をつくる素敵女医的「食の秘策」』が掲載されています。その中の「糖質制限の真実」という鼎談に参加されている「青山エルクリニック」院長の杉野宏子先生にご登場いただき、糖質制限についてお話をうかがうこの連載。4回目は、糖質制限の準備とメカニズムについて解説していただきます。
こんにちは、杉野宏子です。
今回は「糖質制限を始める前に自分を知ろう」というテーマでお話ししたいと思います。
糖質制限を始める際は、何のためにするのかを明確にすることが大切です。「体重を減らしたい」「血糖値の変動を抑えたい」「病気を予防したい」「体調を少しでも良くしたい」「今抱えている病気を少しでも良くしたい」など、まずは目的や目標をしっかり立ててください。
次に体型の変化を確認できるよう、体のラインが分かる格好で全身の写真を撮ります。体重計や体組成計・体脂肪計(体重から体脂肪率や筋肉量、内臓脂肪といった体の組成を分析するもの)で、体重その他を記録するのも有効です。スマホと連動させて、自己のデータを記録するアプリを利用するのもいいでしょう。並行して運動の記録もできればベターです。
もうひとつ、毎日の習慣にしていただきたいのが尿中ケトン体の測定です。糖質制限がうまくいっていると、体脂肪が分解され血中のケトン体濃度が高くなり、尿中にもケトン体が排泄されます。そこで自分の身体がケトン体モードになっているかどうか、チェックするのに有効なのが“ウロペーパー”です。ウロペーパーは、尿中ケトン体のレベルを測るリトマス試験紙のようなもので、尿に浸すと色が変わり、尿中ケトン体レベルが一目でわかります。薬局に注文するか、ネット通販でも手に入ります。
糖質制限を始めたばかりの方は、これを使うと自分の身体でケトン体が作られているかどうかチェックできるので便利です(長く糖質制限をしていると尿中ケトン体があまり出なくなります)。
下の写真は、ある日のランチ。自然食品店のバイキング式テイクアウトランチです。今日は魚がメインですが、チキンや豚肉もあります。飲み物は、アビオス社の「Vege Power Plus」(麦若葉の乾燥粉末)を水に溶かしたものです。
コンビニランチの一例です。サラダ、とん汁、ゆで卵。この日はちょっとタンパク質が少なかったですね。
糖質制限で体重を減らしたい方からよく聞かれるのが、「どれくらいで効果が出ますか?」ということ。これは人によって違いますが、太っている人のほうが変化が現れやすいようで、メタボの男性などはすぐにお腹が引っ込みます。
私の知人でサービス業に就いている男性は、あっという間に15kgほど痩せました。仕事上、若々しい外見をキープしなくてはという動機で始めたそうですが、確固たるモチベーションのある方は結果が出るのも早いのですね。彼は毎朝野菜をたっぷり入れた手作りのスムージーを飲み、本で糖質制限の勉強をしながら臨んだそうです。
またこんな方もいました。ひどい肩こりに悩んで私のクリニックに来院されたのですが、糖質制限に興味を持って始めたところ、ご本人は6kg、ご主人は10kg痩せて、肩こりもなくなったとか。やんちゃだったお子さんたちも、落ち着いた性格になったそうです。
お菓子はもちろん、ジュースやコーラ、ソーダなど、果糖ブドウ糖液糖が入った甘いものを摂取する習慣のあるお子さんで、キレやすかったり、ちょっとしたことでイライラしたりする場合、多量の糖質による血糖値の乱降下が影響していることもあります。食生活を変えることで性質まで変わるのですから、食事って大切ですね。
では、なぜ糖質制限をすると痩せるのか、そのメカニズムを簡単にご説明しましょう。
食事から糖を抜くと、糖をエネルギー源とする回路が働かなくなります。すると代わりのエネルギーとして、体内の脂肪を分解した「ケトン体」が使用されます。このように「血糖値が上がらない→血液中にケトン体が増加→ケトン体がエネルギーとして使われる」という状態を「ケトーシス」と呼びます。
つまり、ケトーシス状態を作り出し体内脂肪を燃焼しやすい体にして、脂肪のみを効率良く燃やした結果、痩せるというわけです。
また、アレルギー、喘息、皮膚炎、炎症性疾患、糖尿病、アルツハイマー、動脈硬化などの病気を抱えていて、少しでも症状を改善したいという理由で糖質制限を始める人もいます。これらの病気は、体の中の炎症が原因になって起こります。最近になって、ケトン体の一種である「β-ヒドロキシ酪酸」が、炎症を引き起こすタンパクを抑え、これらの病気を改善する効果があると考えられているのです。
私自身は腸疾患と喘息の症状改善のため、最初はかなり厳しい糖質制限を行いました。体重が減って落ち着いてからは、一日の糖質量を約100g以下に抑える「ゆる糖質制限」を続けています。徐々に体調が良くなり、腸の薬は今はもう飲んでいません。喘息の治療は継続して受けて薬も飲んでいますが、以前より症状が安定し、コントロールしやすくなっています。風邪をひきにくくなったという実感もあります。
こちらは休日の朝などに作る、スパニッシュオムレツ風の一品。卵、シュレデッドチーズ、ベーコン、玉ねぎにトマトを並べて、ハッピーコールグルメパン(2面を閉じて焼けるフライパン)で蒸し焼きにします。最後にセルバチコをトッピングしました。
油は、大豆油やサラダ油ではなく、亜麻仁油やえごま油などのオメガ3系、オリーブオイルやキャノーラ油のオメガ9系、そしてココナッツオイルなどがおすすめです。ただし亜麻仁油(フラックスシードオイル)やえごま油は酸化しやすいので、遮光ビンに入ったものを小瓶で購入し、冷蔵庫で保存して早めに使い切ってくださいね。
※この連載でご紹介したのは、あくまでも健康に問題を抱えていない方が糖質制限を行う場合のノウハウです。糖尿病で服薬中の方がいきなり自己流で糖質制限をすると、低血糖に陥ることがあり危険です。通院している人は、必ず担当の医師と相談してから実践してください。
毎回ご紹介しているアンチエイジングジュースは次ページに。
◆うっとおしい梅雨を乗り切るための「グレープフルーツとトマトのジュース」
材料2人前:
グレープフルーツ 半個
ミニトマト 15-20個
水 150ml
エゴマ油または亜麻仁油 大さじ1~2
ターメリック、シナモン、クローブ 各少々
栄養ポイント:
グレープフルーツには、ビタミンCや疲労回復成分であるクエン酸が豊富に含まれています。また、そのさわやかな香りが気分を高めてくれるほか、脂肪燃焼促進作用もあるそうです。
ミニトマトは普通のトマトよりも栄養価が高く、活性酸素を除去してくれるフィトケミカルのリコピンも多く含まれています。がんや動脈硬化を予防したい方にもお勧めです。
エゴマ油や亜麻仁油は、オメガ3脂肪酸が摂れるだけでなくリコピンの吸収もよくしてくれます。
◆酸っぱいグリーンジュース
材料2人前:
キウィ 1個
サニーレタス 5-6枚
ミント 1本
ルバーブ 1本
水 150ml
栄養ポイント:
キウィは、お肌のアンチエイジングに欠かせないビタミンCをたっぷり含んでいます。食物繊維も豊富なので、腸内環境を整える効果も。
ルバーブの和名は「ショクヨウダイオウ」。つまり「食用の大黄」ということになり、緩下作用があることで知られています。便秘で悩んでいる方は、一度試してみては?
キウイとルバーブの酸味にミントの香りで、シャキッと一日を始めましょう!
取材・文/上田恵子