毎年、夏バテや夏疲れに悩む人も多いようですが、「暑さのせいだから仕方がない」とあきらめていませんか? 実はその不調、「ミネラル不足」が原因かも。今年は、食事で上手にミネラルをとって、元気に夏を過ごしましょう!
お話を伺ったのは
蒲池桂子さん
Keiko Kamachi
栄養学博士。管理栄養士。日本病態栄養学会認定 病態栄養専門管理栄養士。女子栄養大学 栄養クリニック 教授として、生活習慣病栄養相談、企業向け栄養コンサルティングなども行なっている
だるさや冷えを感じたら、まず疑うべきは鉄分不足
ミネラルは体の機能が正常に働くよう調節する役割を担っているため、不足するとさまざまな不調の原因に。なかでも、夏バテの症状と密接にかかわっているのが鉄です。
「鉄は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料。全身の細胞に酸素を届ける働きを助け、不足すると貧血に。頭痛や冷え、疲労感の原因にもなります」と蒲池桂子先生。
ほかにも、エネルギーを作り出す際に必要なマグネシウムやカリウム、体内の酵素の働きをサポートする亜鉛、温度差などで乱れがちな自律神経を整えるカルシウムも、この時季は不足しないよう気をつけたいミネラル。熱中症予防にはナトリウム(塩分)とカリウムをバランスよくとることも大切です。
夏は汗をかく量が増え、汗とともに体内のミネラルが失われがち。十分な摂取を心がけて。
夏の元気に欠かせないミネラルの働きをチェック!
鉄分
血液を構成する成分。肉、魚介、海藻、豆、青菜に多く含まれる。ビタミンCやタンパク質と一緒にとると吸収率アップ。動物性食品に含まれるヘム鉄のほうが、植物性食品の非ヘム鉄より吸収率が高い。
亜鉛
タンパク質の代謝を促して粘膜、皮膚、髪の健康を保つのを助ける。免疫細胞の活性化、ホルモンの合成や分泌にも関与し、不足すると味覚障害の原因に。肉、貝、海藻、ナッツなどに多く含まれる。
カリウム
過剰に摂取した塩分(ナトリウム)の排出に関与。腸壁を刺激して便秘解消にもつながる。体内の水分に関して重要な働きをする。不足すると脱力感や食欲不振の原因に。海藻、野菜、果物に多く含まれる。
カルシウム
骨や歯を形成する材料となるほか、筋肉を収縮させるなどの神経伝達の働きも。小魚や乳製品、大豆製品、青菜に多く含まれる。吸収されにくいので、吸収を促すビタミンDと一緒にとると効果的。
マグネシウム
体内で起きる代謝を助ける働きを持ち、カルシウムとともに骨を形成する。脳の情報伝達や筋肉の収縮、血圧の調整にも関与。不足すると骨粗しょう症などのリスクも。海藻、ナッツに多く含まれる。
ナトリウム
体内の水分を保つ働きを持つ。不足すると脱水症状を起こして熱中症の原因に。過剰摂取は高血圧につながるため日常生活では控えたいが、夏など大量に汗をかいた際は水分と一緒に意識して摂取を。
肌あれ、抜け毛、むくみ、不眠…。ミネラル不足は美容にもダメージが
ミネラル不足は美容にも大きく影響します。
「鉄不足は肌のくすみや肌あれ、亜鉛不足は髪のダメージにつながります。また、カルシウムは丈夫な骨や歯・爪の維持や、良質な睡眠の確保に必須。カリウムは体内の水分を調整して、むくみの解消に役立ちます」
これらのミネラルは季節を問わず、日頃からきちんととるように心がけたいもの。ただし、特定のミネラルを過剰摂取するとトラブルになることもあるので、サプリメントでとる場合は適量を守りましょう。
「ミネラルはお互いの働きをサポートし合って働くので、微量ずつ多種類のミネラルが含まれている食品でとるのがベストです。通常の食事であれば過剰摂取の心配はほぼないので、できるだけ食品から摂取しましょう」
撮影/三木麻奈 スタイリスト/朴 玲愛 栄養指導/蒲池桂子 取材・原文/瀬戸由美子 撮影協力/UTUWA