この数年、日常的に手指のアルコール消毒や手洗いをする日々が続いていますね。もはや無意識にしている衛生習慣が、実はアレルギーリスクを上げてしまう可能性があるのだとか!
そこで、赤坂ファミリークリニック院長の伊藤明子先生に、衛生習慣とアレルギーリスクについて教えていただきました。
◆感染対策をした生活が続いてしまうと、アレルギーリスクが高まる⁉
アレルギーは免疫バランスが崩れることにより起こるとされていますが、免疫バランスの調整に大きく関わっているのは、腸内細菌だと言われています。
現在のように感染対策として行ってきた手指の消毒やソーシャルディスタンスにより、菌やウイルスをできるだけ排除しようとした生活が続くと、腸内微生物の多様性が低下。さらに腸内微生物の多様性が低いほど免疫バランスが悪くなるという報告が複数あるのだそう。これから春の花粉症シーズンがやってくるだけに、気になりますね!
◆免疫バランスを崩さないようにするポイントは「発酵性食物繊維」
だからといって、消毒などはやめるわけにいきません…。そんな今の状況で腸内細菌の多様性を獲得するには、発酵性食物繊維を摂ることが大事です。
「腸内で発酵しやすい食物繊維を“発酵性食物繊維”といいます。これを多く含む食品を摂ることで、腸内細菌の多様性が増します。腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の1つである酪酸は免疫系に作用し、過剰な免疫を抑制する制御性T細胞を増やすことを示唆する研究成果が報告されています」(伊藤先生)。
短鎖脂肪酸を増やす発酵性食物繊維は、精製していない穀物や海藻、大豆製品、小麦ブランなどに多く含まれます。多種多様な善玉菌を活性化するには、様々な発酵性食物繊維を摂るほか、さらに活性化させるには大腸内の発酵場所を意識することが大切なんだそう!
◆大腸内での「食物繊維」の発酵場所にも注目!
約1.5mもの長さの大腸には約40兆ともいわれる腸内細菌が棲んでいますが、大腸の部位により、棲んでいる菌が異なります。大腸前部には乳酸菌などが、後部にはビフィズス菌や酪酸産生菌などが棲み、中間には日和見菌などが棲んでいます。
各部位に棲んでいる腸内細菌をバランスよく活性化するには、大腸内の前部と後部で発酵する発酵性食物繊維を組み合わせて摂ることが大事です。
◆忙しい日も時短でつくれる「発酵性食物繊維」レシピ
複数種類の発酵性食物繊維を摂る、と聞くと手間がかかりそうな気がしますが、そんなことはありません!管理栄養士の岸村康代先生考案の、調理時間が短くて手間いらず、かつ大腸の前部と後部で発酵する食材を組み合わせたレシピをご紹介します!
\調理時間1~2分/
●ブランキウイヨーグルト
【材料】
小麦ブランシリアル…40g
ヨーグルト…150g
キウイフルーツ…1/2個(50g)
はちみつ…適量(小さじ1)
エゴマ油…小さじ1
【作り方】
①オールブランとヨーグルトを混ぜ合わせる。
②キウイフルーツは皮をむいて角切りにする。
③器に①を盛り付け、はちみつをかけて②をのせ、エゴマ油をかける。
\調理時間7分/
●蒸し大豆の玄米ドリア
【材料】
玄米ごはん…100g
蒸し大豆…50g
(A)市販のホワイトソース…70g
(A)牛乳…30ml
カレー粉…小さじ1/4
ピザ用チーズ…適量(25g)
黒こしょう、ハーブソルト…各適量
【作り方】
①Aを混ぜ合わせておく。
②耐熱容器に玄米ごはんと蒸し大豆を入れて混ぜて平らにならし、カレー粉を全体にふりかけ、①とピザ用チーズをのせてトースターで5分ほど焦げ目がつくまで焼く。
③お好みでこしょう、ハーブソルトをかけていただく。
花粉症の人にとって、これからしばらくは辛い季節が続きますね。発酵性食物繊維を摂って腸内環境を整え、アレルギーリスクを抑えていきましょう!
教えてくれたのは
伊藤明子先生
小児科医。赤坂ファミリークリニック院長。NPO 法人Healthy Children, Healthy Lives 代表理事。東京大学医学部附属病院 小児科 医師。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策 客員研究員。
レシピ作成
岸村康代先生
管理栄養士。大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業後、商品開発や病院での指導を経て独立。日本野菜ソムリエ協会ビューティーフードプログラムの監修をつとめる。メタボリックシンドローム指導の現場で健康的なダイエットのサポートをしてきた経験や野菜ソムリエ上級プロなどの資格を活かし、商品開発、メニュー開発、事業開発、講師、執筆、メディア出演など、多方面で活動。
◆資料提供/赤坂ファミリークリニック院長 伊藤明子先生、管理栄養士 岸村康代先生
構成・文/倉澤真由美