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就職・転職に悩む人をサポートする「キャリアコンサルタント」。 56歳で国家資格を取得し、定年後はフリーランスで活動予定【定年後・60歳からの働き方】

60歳以降の働き方と資格について考える連載。今回ご紹介する資格は「キャリアコンサルタント」。仕事について相談にのる際、会社員としての経験が生かせるということで40代、50代に特に人気の資格です。56歳でこの資格を取得した秋間清美さんに、資格取得までの道のりと今後の働き方について伺いました。

秋間清美さん

【お話を伺った人】

秋間清美さん
高校卒業後、事務職を2年間務めた後にイギリスに語学留学。帰国後、外資系金融機関に勤務。結婚を機に退職し、家事と子育てに専念。およそ10年間のブランクの後、34歳で再就職。5年間の外資系半導体メーカー勤務を経て、39歳で再び外資系金融機関に転職し、以降20年余り勤務する。業務内容はどの会社でも人事関連。2020年にキャリアコンサルタントの資格を取得。2024年に定年を迎え、現在は再雇用にて会社勤務を続けながら、退職後の開業に向けて準備中。

 

 

「人とかかわるのが好き」を生かしてキャリアコンサルタントに

 

「キャリアコンサルタント」は、2016年に誕生した国家資格。その仕事内容はおもに「就職・転職など仕事探しの支援をすること」。活躍の場は大学やハローワーク、人材派遣業界のほか、一般企業において、社員のキャリア形成についての相談に乗るポジションで働く場合もあります。

 

人にとって仕事選びはとても重要なテーマ。「自分のやりたい仕事とは?」「今の仕事は自分に向いているのだろうか?」など新卒時の就職から、転職、定年のセカンドキャリアまで、迷ったり悩んだりすることも多いでしょう。そこで、こうした相談に乗り、希望の仕事に就くためのサポートをするのがキャリアコンサルタントです。

 

Q. キャリアコンサルタントは「今、注目の国家資格」と紹介されることも多いようですが、秋間さんがキャリアコンサルタントの資格を取ろうと思ったきっかけはなんでしたか?

 

秋間:50代も半ばに差しかかった頃、人材育成関係の会社を経営している知人に「秋間さんはキャリアコンサルタントに向いているのでは?」とすすめられたのがきっかけでした。

 

23歳のときに外資系の金融機関に就職して以来、会社が変わったりブランクがあったりはしましたが、業務としてはずっと人事一筋。その中で自分自身、「人とかかわる仕事が好きだな」と意識するようになりました。それで、定年後のセカンドキャリアとしてキャリアコンサルティングの仕事を考えるようになり、2019年の秋から養成学校に通いました。

相談者が自ら答えにたどり着くためのサポートをする会話術を習得

 

Q.キャリアコンサルタントの試験とはどのようなものですか? また、養成学校ではどのような勉強をするのでしょうか?

 

秋間:試験には学科と実技があります。学科は筆記試験で「四肢択一のマークシート方式」。

 

実技には、①論述(記述式回答。事例記録を読み、設問に解答する)と②面接(受験者がキャリアコンサルタント役となり、キャリアコンサルティングを行うロールプレイ」。学科試験と実技試験の論述に合格しないと、面接には進めません。

 

まず、学科。学ぶ科目にはいろいろありますが、ジャンルは大きく分けて3つ。「カウンセリング技法」のほかに、「キャリア発達理論」「労働に関する法律や人事関連の法令」などを学びます。どれも、キャリアコンサルタントの仕事においてとても重要なものです。キャリア発達理論は心理学をベースに、相談者が心の中に秘めていて本人も気づいていないような「本質的なニーズや目標」を、いかに引き出すかという会話術のベースになるもの。法律や法令は、労働法をはじめ、就職についてアドバイスするにあたって必要不可欠なものです。

 

実技の授業では、生徒3人がひと組になって、相談者役、キャリアコンサルタント役、そして1人オブザーバーがつく形で、それを順番に交代しながら繰り返します。この訓練は何時間もやったと思います。

 

私の場合、人事の仕事を長くしていたので、所得税法や社会保険等の知識はすでにあり、改めて勉強をする必要がなかったというのは少し楽だったかなと思います。逆に、苦労したのは実際の面談を設定したロールプレイングでの試験、「カウンセリングの実技」でした。

 

実は、カウンセリングの実技に関しても、会社の業務で社員の相談に乗る経験はかなり積んでいたので、法令の知識と同様、これまでの実務経験でほぼそのベースはできていると思っていました。ところが、最初の模擬試験ではC判定…。どこがダメだったのか、さっぱりわかりませんでした。

 

でも、思い起こせば養成講座に通い始めた当初、先生に「会社で人の相談に乗ることに最も慣れている秋間さんが、逆にある意味、いちばん苦労するかもね」と言われました。

 

というのも、確かに人事部の仕事では「こうしたらどう?」というような「解決策」を提案するアドバイスをしてきたと思います。でも、最初の授業で先生に言われたのは「キャリアコンサルタントは解決策を提供しない」ということでした。キャリアコンサルタントの仕事は「相談者自身が答えを出せるように支援すること」。この違いはとても大きいです。

 

キャリアコンサルタントは基本的に、「あなたはどうしたいですか?」ということを聞き出す姿勢に徹します。解決策は提供しませんし、「私はこうだったのよ」という自分の経験を話すこともしません。

 

人は悶々と悩んでいるようでいて、実は心の中にきちんと答えを持っているものなんです。ただ、そのことに自分自身が気づいていなかったり、明確に答えとして認識していなかったりするだけ。ですから、それに気づいてもらえるよう、ちょっと視点をずらしたり、立ち位置を変えてみたりするきっかけとなる質問を投げかけるようにしています。

 

養成講座の授業では、こうしたキャリアコンサルタントとしての「クライアントが本当はどうしたいのかを引き出す話し方」のセオリーをひと通り学んだつもりでしたが、人との会話というのはセオリー通りには行かないもの。それまでの会社での経験による「解決策を提供する」という思考が、自分が思っている以上に強く残っていたのかもしれません。

 

それで、これではまずいと思って、マンツーマンで特訓する講座を何回か受けて、その結果、無事合格することができました。

「適材適所」を見つけ、多くの人が希望の職場で働けるように支援

 

Q:現在は、定年後の再雇用で会社に勤務中とのことですが、すでにキャリアコンサルタントとしての活動としては、どのような業務をされていますか?

秋間さん_コンサルティング中

↑現在は副業にて、大学生をはじめ中高年の転職希望者など、幅広い年代のキャリア相談を受けている

 

秋間:資格を取得後、会社に副業の申請をしまして、現在は会社員を続けながら、キャリアコンサルタントの仕事もしています。不定期ですがおもに週末、学生のキャリアコンサルタントをしていまして、もう3年目になります。

 

大学生の場合は、「夢はある。でも、社会を知らない段階なので、それを実現するにはどういう方法があるのかわからない」という状況だと思います。ですから、そういう学生には具体的にどんな場所で、どんなキャリアを積んでいったらその夢に近づけるのか、という話をしていきます。また、そもそも夢が見つからないとか、どんな仕事をしたらいいのかが見えていないという学生も多いです。そういう学生には、まず「その人の強みは何なのか」「それをどうやって生かすか」といったことを話しながら探っていくことになります。

 

一方、セカンドキャリアについての相談を受けることもあります。こういう場合はまず『キャリアの棚卸し』をすることから始まります。今までどんな業務をしてきて、何が得意で本当は何が好きなのか。それを整理する作業を一緒に行いながら自己理解を深めていきます。つまりキャリアコンサルタントの仕事というのは、働きたいと思っている人の知識や経験を活かして、適材適所を一緒に探す仕事なのだと思います。

 

傾聴力を高め、より信頼されるコンサルタントに

Q:今後はどのようなお仕事をしていこうと考えていらっしゃいますか?

 

秋間:再雇用終了後はフリーランスとして活動していきます。これまで会社の人事部内で人材育成にかかわる仕事もしてきましたので、「求職者のキャリアコンサルティング」と併行して、「経営者側の人事面でのビジネスコンサルティング」も手がけたいと思っています。具体的には、人材開発、マネージャー育成などの支援を考えていまして、そのために現在は傾聴力を磨くためにコーチングの勉強もしています。

 

キャリアコンサルタントにとって最も重要な能力は「傾聴力」といわれています。「聴く」とは目と耳と心で聴くのだそうです。そのスキルもいっそうブラッシュアップしていきたいと思っています。

 

また、コンサルティングにおいては、「相談者の心理的安全性を担保し、信頼関係を築いたうえでしっかり話を聞いていく」ということが重要です。相談者が何を、どう話すかは、対応したキャリアコンサルタントによって、全然違ってくるんです。まずは「どのように問いかけるか」、そして「相談者が返した言葉をどう受けて、それに対してどういう方向に話を持っていくのか」はコンサルタントによって異なります。

 

プライベートでもありますよね? 聞き上手といわれる人が相手だと、普段話さないようなことまでついつい気持ちよく話してしまって「あれ、なんだか、いろいろ話しちゃったなぁ」というようなこと。そんなふうに「気持ちよく話してもらえるかどうか」というのは、相談者がコンサルタントのことを「この人なら信頼できる」と思ってくれるかどうかにかかっています。話を始めた時点でそう思ってもらえないと、相談者の心をパッと開くことはできません。こうした、気持ちよく話してもらえる、コンサルタントとしての研鑽を積んでいきたいです。

 

私は人事部でずっと働いてきましたが、キャリアコンサルタントの養成講座には、人事部の経験を持つ人はクラスの2~3割程度だったと思います。それ以外の人は、ほかのさまざまな部署で働いた経験を持つ人たちでした。年齢も30代から50代くらいまで幅広かったと思います。「人が好き」「対人支援の仕事がしたい」いう人にとってやりがいのある仕事だと思います。

秋間さん_山登りB
↑常に学びや遊びに意欲的にチャレンジする秋間さん。会社勤務を続けながら、50代で京都芸術大学通信教育部、美術科写真コースを卒業。勉強は主に平日の通勤時に電車内でしたそう。現在の趣味は登山とピアノ

 

 

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【資格PickUp!】
キャリアコンサルタント

厚生労働省が2002年に開始した「キャリアコンサルタントを5万人にする」という計画によって注目されるようになりました。この計画の実現を目指し、キャリアコンサルタントの育成講習や、資格認定のシステム作りが行われ、2016年4月より国家資格になりました。キャリアコンサルタントは、保育士や栄養士と同様、その資格を持っている人だけが肩書きとして名のれる「名称独占資格」。有資格者以外はキャリアコンサルタントと名乗ることはできません。また、5年ごとの更新が必要な資格です。

 

キャリアコンサルタントとして活動するには。
(1)登録試験機関が行う、「キャリアコンサルタント試験」に合格する
→受験要件としては、厚生労働大臣認定の養成講習を受講するか、キャリアコンサルティングに関する3年以上の実務経験が必要。
(2)指定登録機関による登録
→キャリアコンサルタントの有資格者であることを「キャリアコンサルタント名簿」に登録して初めて上記の「キャリアコンサルティング」を行えるようになる。
→5年ごとの更新が必要で、更新の際には、厚生労働大臣指定の更新講習を受講することになる。

 

【参考リンク】
厚生労働省Webサイト「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」

キャリアコンサルティング協議会

 

取材・文/瀬戸由美子

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