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放っておくと怖い直腸性便秘:その1「直腸瘤」

OurAge世代の女性なら知っておきたい

放っておくと、こんなに怖い直腸性便秘とは?

 

直腸性便秘が悪化すると、骨盤臓器脱(骨盤底疾患)を招く危険性も! 直腸性便秘と関連するトラブルについて聞きました。

 

 

教えてくれたのは…

山名哲郎さん Tetsuo Yamana

山名哲郎さん

秋田大学医学部卒業。JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター部長。日本大腸肛門病学会専門医、指導医。便秘などの排便障害、痔疾患、骨盤底疾患(直腸瘤・直腸脱)、大腸がんなどの診断・治療に取り組み、直腸瘤には後腟壁形成術、直腸脱には腹腔鏡下直腸固定術を行う。おもな著書に『スーパー便秘に克つ!』(文藝春秋)など

 

 

 

松峯寿美さん Hisami Matsumine

松峯寿美さん

東京女子医科大学卒業。東峯婦人クリニック名誉院長。日本産婦人科学会専門医。女性専門外来の先駆けとして、妊娠・出産、更年期、老年期まで、婦人科系QOLを保つ医療を実践。骨盤底筋トラブルの治療や子宮脱を改善する経腟手術を行う。おもな著書に『50歳からの婦人科 こころとからだのセルフケア』 (高橋書店)など

 

 

怖い理由 その1 直腸瘤 RECTOCELE

直腸が変形するって本当? 直腸瘤って知っていますか?

〝直腸瘤〟は直腸にできたポケット。「排便時にいきんだときに、便が肛門のほうに下りていかず、緩んだ腟壁に向かってせり出していき、腸の一部にポッコリとしたふくらみが作られてしまうのです」(山名先生)

 

 

直腸瘤ができてしまう理由は、女性の骨盤内が男性よりも広いこと、直腸と隣り合わせにある腟壁が、加齢とともに衰えていくことにあります。

 

「女性の骨盤底筋には肛門、腟、尿道口という3つの穴があり、その中でいちばん緩みやすいのが腟。特に出産経験がある人は腟が緩みやすいのですが、出産経験がなくても、女性ホルモンの減少とともに腟が緩むのは避けられません」(松峯先生)。加えて、子宮や直腸を支える支持組織も衰えるため、子宮、膀胱、直腸が本来あるべき位置から下垂していきます。すると、直腸の一部が子宮側に傾いて、腟壁に瘤のように突き出る直腸瘤を引き起こしてしまうのです。その際、子宮が腟内に落下する〝子宮下垂〟、腟の外に飛び出す〝子宮脱〟を合併するケースもあり、場合によっては、直腸瘤が腟の外に出てきてしまうケースも。これらは骨盤臓器脱と呼ばれ、60歳以降の女性の約2割が経験するとされています。

 

 

【直腸瘤を横から見ると…】

「直腸にできたポケットの中に便がたまり、ふくらんだ状態です。これは排便時に腹圧をかけた際、便が肛門へと下りていかず、緩んだ腟壁に向かってせり出していくために起こります」(山名先生)

「大きめの直腸瘤がある場合、内診時に直腸側の腟壁がもっこりとふくらんでいるのがわかります。これは直腸瘤が緩んだ腟壁を圧迫しているせいで起こる現象。一方、直腸瘤のない腟壁は直腸側が平らな状態です」(松峯先生)

 

 

次のページでは、治療法について紹介します。

もしも直腸瘤になったら? 治療法は?

 

直腸瘤がある人の場合、「便意はあるのにスムーズに排便できない」「残便感がある」というのがおもな訴えで す。一度できた腸のポケットは治りませんが、便秘薬で排便コントロールができるのであれば、直腸瘤があっても問題ありません。便秘薬の内服と生活指導が治療の基本となります。

 

ただし、薬が効かずに排便できない場合、不快症状が強くてQOLに影響する場合は外科的手術が検討されます。

 

婦人科では「通常、子宮下垂や子宮脱と合併しているケースに腟を縫い縮める腟形成術を行います」(松峯先生)。

 

一方、大腸肛門科では「便秘薬が効かずにQOLが向上しない場合、本人から希望があれば、直腸と隣接する腟壁を補強する〝後腟壁形成術〟を行います」(山名先生)。

 

 

【最終的には手術するケースも】

大腸肛門科の場合

直腸診や排便造影検査でチェック。便秘薬を処方しても排便のQOLが改善されない場合は手術の適用に。直腸と子宮を支える筋肉や、腟壁の緩みを補強する後腟壁形成術を行います。

 

婦人科の場合

内診や超音波検査でチェック。子宮下垂や子宮脱とともに直腸瘤が見られたら、子宮をつり上げ、緩んだ腟を縫い縮める経腟手術によって、直腸瘤を改善。腟壁にコラーゲンを注射して補強する方法も。

 

 

イラスト/内藤しなこ 取材・原文/大石久恵

 

 

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